弁護士ドットコム株式会社は、弁護士ドットコムの登録弁護士294人を対象に、「2023年に注目した裁判」に関する調査を、1人3票の複数回答で行いました。
第1位は、性別変更における手術要件に関する判決
もっとも多くの66.7%の弁護士が注目したのが、10月25日(水)に最高裁判所大法廷にて判決がくだった「性同一性障害・性別変更の手術要件に関する違憲決定」でした(※1)。
性同一性障害の人の戸籍上の性別について定めた特例法においては、戸籍上の性別を変えるためには、生殖機能がなく、変更後の性別に似た性器の外観を備えていることといった要件を満たした場合、性別の変更を認めています。そのため、性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更するためには、生殖能力をなくす手術を受ける必要があるとされています。
この規定について、最高裁判所は裁判官15人全員で構成する大法廷にて「手術を受けるか、戸籍の性別変更を断念するかという過酷な二者択一を迫る」として、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を保障した憲法13条に違反していると判断しました。
この判決について注目したと回答した弁護士からは、「時代の流れを反映した決定」と高く評価するコメントが多く寄せられたそうです。
(※1)令和2年(ク)第993号 性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件|裁判所
第2位は、トランスジェンダー職員のトイレ使用制限に関する判決
同調査で63.6%の弁護士から注目を集め、第2位にランクインしたのは、7月11日(火)の最高裁判所第3小法廷における、トランスジェンダーの経産省職員に対するトイレ使用制限を違法とした判決です(※2)。
女性として社会生活を送っている経済産業省の職員は、戸籍上は男性であることを理由に、勤務するフロアから2階以上離れたフロアのトイレを使用するよう言われるなどの制限を受けていたそうです。
職員は人事院に処遇の改善を求めましたが退けられたため、国の対応は不当だと訴えていました。
判決では、「自認する性別と異なる男性用のトイレを使用するか、本件執務階から離れた階の女性トイレ等を使用せざるを得ないのであり、日常的に相応の不利益を受けているということができる」と指摘。
そのうえで、「人事院の判断は、本件における具体的な事情を踏まえることなく他の職員に対する配慮を過度に重視し、上告人の不利益を不当に軽視するものであって、関係者の公平並びに上告人を含む職員の能率の発揮及び増進の見地から判断しなかったものとして、著しく妥当性を欠いたものといわざるを得ない」として、トイレの使用制限を認めた人事院の対応は違法と判断しました。
この判決に投票した弁護士からは「時代の流れ」との評価が多く見られたほか、労働問題として捉え、弁護士業務との関係性が深い裁判例として注目する弁護士も多かったようです。
(※2)令和3年(行ヒ)第285号 行政措置要求判定取消、国家賠償請求事件 令和5年7月11日 第三小法廷判決|裁判所
調査概要
調査機関:自社調査(弁護士ドットコムの登録弁護士を対象)
調査方法:弁護士ドットコムの登録弁護士を対象にWebアンケートを実施
調査対象:弁護士ドットコムの登録弁護士で回答が得られた294人
調査期間:2023年12月19日(火)〜12月25日(月)
<参考>
“2023年に注目した裁判”に関する弁護士への調査~2023年はLGBTに関する判決に注目が集まる~
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