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「プロダクトアウト」の考え方が本質的に抱えている3つの課題

Shingo Hirono

2014/04/12(最終更新日:2014/04/12)


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by Mark Fischer
 プロダクトアウトを導入した企業経営が成功した場合、企業は市場をリードする存在になり高い利益を確保することができます。しかし、プロダクトアウトという概念には課題も存在します。導入時に課題をクリアすることができなければ企業経営は上手くいかず、業績に大きなダメージを与えてしまうでしょう。今回は、プロダクトアウトが抱える課題について解説します。

1. 要求される水準が高い

 提供者本位で商品開発や生産、販売を実行するのがプロダクトアウトの基本的な考え方です。顧客のニーズをくみ取るのではなく、提供者側からの提案で商品を生み出すため、商品が市場で顧客に認められるためには、高い完成度と性能が必要になります。

 プロダクトアウトで提供される製品は、顧客の要望を大きく超える、または想像もつかないような商品でなければ、市場で成功を収めることはできません。プロダクトアウトで開発された商品が競争優位性を持つためには、潜在的なニーズに応えるのではなく、顧客自身が気づいていなかったようなニーズに応えるだけの高い品質が必要です。

 プロダクトアウトはマーケティング戦略ではなく、まったく新しい価値を提供するイノベーションに近い概念です。提供側からのアプローチで商品を企画するのですから、顧客の要求する水準以上の商品を提供できなければ成功は不可能です。そのためプロダクトアウトを実行できるのは、高い技術力や開発力を持った一握りの企業に限られます。斬新なアイデアでプロダクトアウトを実行することも可能ですが、同様に高い企画力が必要になるのです。

 資本の限られた中小企業ではプロダクトアウトを、成功させるだけの水準を確保できないため、必然的にプロダクトアウトを実行に移せる企業は限られてしまいます。

2. 調査・分析の軽視

 商品が市場で売れるためには、顧客の嗜好や欲求を知る必要があります。しかし、プロダクトアウトはそのような調査や分析ではなく、あくまでも提供者の側の都合で商品開発が行われます。調査や分析でも、汲み取れないようなニーズを満たすことができるのであればプロダクトアウトは有効な方法なのですが、そうでない場合は単に調査や分析を無視した商品企画ということになってしまうのです。

 プロダクトアウトといっても調査や分析を全く必要としないわけではありません。製品本位で企画を進める場合でも、顧客にどのように製品を提案するのか、という点は重要な問題です。調査・分析を無視することがプロダクトアウトではありません。調査・分析を超える成果を出すことで企業側が商品企画をリード出来ればよいのですが、企業の力が無ければプロダクトアウトはうまく機能せず、誰からも望まれない商品が生まれてしまうでしょう。

3. 傲慢な態度

 プロダクトアウトは時として企業が傲慢な態度をとる原因になってしまいます。提供者の側から商品を提案するということは、顧客の気持ちを無視した経営に陥る可能性を持っているのです。プロダクトアウトの本質は企業側からの提案ですが、それは単にアプローチの方向が変わっただけのことであり、企業側が顧客の上に位置しているわけではありません。

 プロダクトアウトが失敗してしまうと、提供側が望まれない商品を顧客に押し付ける構図が出来上がってしまいます。ですから、常に謙虚な気持ちで顧客に配慮する姿勢が重要です。


 プロダクトアウトは実現すれば大きなメリットが期待できますが、成功までにクリアしなければならない課題も多く、失敗してしまうことも十分に考えられます。

 提供者本位と顧客の軽視を混同してしまうと、単に誰の気持ちも考えないわがままな経営になってしまいます。譲れる部分と譲れない部分をはっきりさせ、時には毅然、時には柔軟な態度をとることがプロダクトアウトを成功へと導くのではないでしょうか。

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