15歳の高校生、ピーター・パーカーことスパイダーマンが、「スパイダーマン:ホームカミング」でアイアンマンなどが所属する“マーベル・シネマティック・ユニバース”に本格参戦する。
公開前からファンの期待値が高かった待望のシリーズ最新作だが、蓋を開けたら作品の完成度は期待以上。新鮮さではもしかしてこの夏一番かも知れない。
最新作はリブートのリブート?
とりあえず、「スパイダーマン」シリーズの歴史をお復習いしておこう。まず、原作コミックの大ファンだったという監督のサム・ライミが、トビー・マグワイア主演で「スパイダーマン」(02)、「スパイダーマン2」(04)、「スパイダーマン3」(07)と連続で3本を製作。
3作トータルで世界興収25億ドルを稼ぎ出し、同じメンツで4作目が稼働し始めていた矢先、配給元のソニー・ピクチャーズとライミの間に生じた意見の相違が決別に発展。結果、ソニーはリブート(刷新)を決断し、マーク・ウェブ監督、アンドリュー・ガーフィールド主演で「アメイジング・スパイダーマン」(12)と続く「アメイジング・スパイダーマン2」(14)が作られた。
しかし、映画ビジネスはシビアだ。「アメイジング~2」の北米興収が製作費を下回り、ソニーは起死回生策として再リブートを発表。2015年にソニーとマーベルスタジオがパートナーシップを締結したこともあり、スパイダーマンは単独シリーズを続行しつつ、前記、MCUの新メンバーとして「アベンジャーズ」シリーズにも参加し、さらなるヒットを目指すことになったわけだ。
21歳のトム・ホランドが瑞々しい!!
さて、新生スパイダーマンの何が新鮮かと言えば、まず、15歳のピーターを演じるトム・ホランドの瑞々しさ、これに尽きる。実年齢の21歳(契約時は19歳)はスパイダーマン史上最年少だし(マグワイアが27歳、ガーフィールドが29歳、共に第1作当時)、そのルックスといいハイトーンのハスキーボイスといい、ヒーローと呼ぶにはあまりに幼く、そして、可愛い。
実はホランドのスパイダーマンは「アベンジャーズ」シリーズの前作「シビル・ウォー╱キャプテン・アメリカ」(16)の軍団集結シーンに登場済みなので、その際、マスクの下から聞こえてくる印象的な呟きを覚えている人も多いはずだ。
青春学園ものへホームカミング
今回マスクを取ったピーター╱ホランドは、全米学力コンテストを目指すメンバーの1人としてクラスに参加する傍らで、スパイダーマンとして慈善活動(と言ってもチンピラを撃退する程度なのだが)に精を出し、何とかトニー・スタークことアイアンマン(ロバート・ダウニーJr.)に認められようとする姿を、文字通り等身大で熱演。
秘かに想いを寄せる女子高生、リズとの初恋の顛末も含めて、ファンはそもそもこのシリーズが青春学園ものであったことに改めて気づくだろう。
ミュージカルで鍛えた体幹とセンス
ロンドンでロングラン・ミュージカル「ビリー・エリオット」に出演し、後にドラァグクィーンになるビリーの親友マイケルを演じて、見事ショーストッパー(拍手喝采で劇の進行を止めてしまうこと)となったホランドは、舞台で培ったダンステクニックに、今回、ボクシングやバルクールの特訓によって高レベルな体幹をプラス。
かつて何度も見てきた、スパイダーマンが掌から蜘蛛の糸を発射してビルの壁に次々と付着させ、空中をスウィングしながら移動して行く浮遊シーンは、ホランドによってより日常レベルに落ちた気さえするほどだ。
最新作にはシリーズ屈指のカタストロフが!
監督のジョン・ワッツ以下、製作スタッフは、最大の見せ場であるニューヨーク、スタテン島フェリー破壊シーンで極力CGIの導入の拒否。
実物に忠実なレプリカのフェリーを建造した上で、15万トンの水を注ぎ入れたプールにそれを浮かべ、トニー・スタークへの怨念から復讐鬼と化した鋼鉄の翼を持つヴィラン、バルチャー(マイケル・キートン)VSスパイダーマンの死闘を映像化することに成功している。
バルチャーが放った特殊ビームを浴びて真っ二つになって沈没していく船体を、スパイダーマンが糸を張り巡らせて繋ぎ止めようとする場面は、本作のみならず、シリーズ屈指のカタストロフ。是非劇場でそれを体感して欲しい。
そして、シリーズは続いていく
すでに新シリーズの成功を確信したソニーは、トム・ホランドとの間で今後4本の契約を結んだと、昨秋業界紙The Hollywood Reporterがリークした。
それが事実だとすると、4本の内訳は「アベンジャーズ」シリーズ第3弾「アベンジャーズ:インフィニティー・ウォー」(18)と続く第4弾、そして、2019年に公開がフィックスされている「スパイダーマン:ホームカミング」の第2弾と、続く第3弾ということになりそうだ。
そうなる可能性は充分にあると思う。因みに、ホランドの公式インスタグラムには独特の方法で肉体美を作るプロセスやアクロバティックな画像が数多くアップされている。もしも細マッチョを目指すなら(ホランドの身長は173センチ、体重は64キロ)、一度覗いてみる価値はありそうだ。
【作品情報】
「スパイダーマン:ホームカミング」
8月11日(祝・金) 全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
©Marvel Studios 2017.
©2017 CTMG. All Rights Reserved.
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