サイモン・シネック氏はマーケティングコンサルタント、作家、演説家である。TEDで行った彼のスピーチは、日本でも話題に。
以前取り上げたサイモン・シネック氏のインタビュー動画で、彼は「仕事に満足感を得る方法」を語った。今回も"Big Think"にて、彼は「リーダーは従業員を一番に考えるべきだ」とアドバイス。
顧客ファースト=従業員は二の次?
「顧客を第一に考えるべきだ」というアドバイスは、おかしな話に思える。実質、従業員は二の次だということだからね。
顧客は移り変わる。顧客を大切にするべきなのは間違いない。けれども、家庭より職場で時間を過ごしているのは従業員だ。企業のビジョンを発展させるために血と汗と涙を流して働いているのも従業員。
そのため、「従業員ファースト」になるように管理するのはリーダーの義務だ。そうすれば従業員がお互いや顧客の面倒を見れる。
顧客第一に考えるリーダーは「従業員よりも外部の顧客の方が大切だ」と言っているのと同じ。
おかしなことに、高品質の顧客サービスで名高いサウスウエスト航空やCostco(コストコ)のような企業は「お客様は神様」と考えていない。顧客が第一ではないんだ。
皮肉なことに、良質な顧客サービスを提供する企業は従業員第一に考えており、従業員が顧客を大切にしてくれると思っている。
従業員ファーストと顧客ファーストの比較実例
実際に起きた出来事を話そう。数ヶ月前、僕はラスベガスのフォーシーズンズホテルに宿泊した。
あれはすばらしいホテルだよ。高級なベッドがあるからではない。そんなことはどんなホテルでもできる。そのすばらしさは、そこで働く人たち質のおかげだ。
フォーシーズンズホテルのロビーに入って従業員に「こんにちは」と言われた時、彼らは命令されて挨拶しているのではなく、自然にそう発していることが伺える。
バリスタ・ノアの体験談
フォーシーズンズホテルのロビーにはコーヒーバーがあって、そこでノアという名のバリスタに会った。
ノアはすばらしい人だよ。彼はフレンドリーでユーモアがあり、魅力的。僕は100%のチップを彼に渡したっけ。
そこでノアに「ここでの仕事は好き?」と聞いたんだ。ノアは「大好きだよ」と言った。
更に「フォーシーズンズホテルでの仕事が大好きだと思える理由は?」と聞いてみる。
考える間もなく彼は、「一日を通して、マネージャーが通りかかって、調子を尋ねてくれるんだ。彼らは仕事環境の向上のために彼らができることを聞いてくれる。そしてそれは僕のマネージャーだけではなく、どんなマネージャーでも一緒」。
そして彼は不思議な事を言った。
「僕はシーザーズ・パレス(カジノホテル)でも働いているけど、そこではマネージャーが来て調子なんて聞いてくれない。聞いてくるのは、何か問題がないか。何かミスをしたら見つかるんだ。そこではただ1日を終わらせようとしている。目立たないようにして、給与が欲しいだけだよ」
従業員ファーストによる顧客体験の差異
信じられるかい? これは同じ人の発言だよ。
2社を比べて、顧客は違うサービスを味わうだろう。それはノアのせいではない。ノアはいいやつなのだから。
経営者がいかにノア(従業員)を扱っているかで、顧客体験は別物となる。
経営者はノアを第一に考えているか(フォーシーズンズホテルの例)。それとも顧客が第一なのか(シーザーズ・パレスの例)。
繰り返しになるけど、顧客よりもノアのことを大切に扱う企業の方が、ノアはより客をもてなすことができた。それはなんとも皮肉なこと。
そういう仕組みなのに、多くのビジネス界の人々はそれを忘れがちだ。
最終的に顧客に満足して欲しいのは間違いない。当たり前だよ。でも実際の方法論は、従業員の満足を優先することだ。
顧客サービスは何よりも「過程」が大切
顧客についての間違えた考え方は、僕たちが過程よりも結果に目が行きがちなところから来ていると思う。結果を測定する方が簡単だからね。
だから僕たちは利益を第一に考えてしまう。結果の方がわかりやすいから。同じく、僕たちは信用よりもお金を優先する。信用は測りようがないからね。
顧客サービスにしても同じだよ。結果というのは良質な顧客サービス。でもその過程には従業員がお互い気にかけて、最終的に顧客を大切に扱う環境作り、という困難な作業がある。
結果である顧客サービス、顧客単価、事業収入に比べて、過程は抽象的で測りづらい。
目に見えて数えやすい方向に行ってしまうのは人間の性だ。顧客サービスでも同じで、結果が大切であり、過程は違うと思ってしまう。
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