HOMEキャリア開発リリース正社員不足を感じている企業は51.7%、高止まりが続く 非正社員の人手不足、「103万の壁」見直しで解消なるか

正社員不足を感じている企業は51.7%、高止まりが続く 非正社員の人手不足、「103万の壁」見直しで解消なるか

2024/11/14


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人手不足に対する企業の動向調査(2024年10月)




「仕事はあるが、人手不足で受けきれない」といった苦悩の声が、業種を問わず多くの企業からあがっている。業績拡大の大きな足かせとなる人手不足は、今や日本全体の社会問題だ。2025年は「団塊の世代」のほとんどが75歳以上の後期高齢者に到達し、「団塊ジュニア」の多くが50歳以上となるなど、更なる労働力不足が予測される。こうしたなか、業務効率化に向けた生産性の向上は企業経営を左右する大きな要素であり、DXを含めた省人化への早期着手がカギを握る。

帝国データバンクは、企業の「人手不足」動向について調査・分析を行った。



<調査結果(要旨)>
- 正社員が不足している企業の割合は51.7%で、引き続き5割を上回った。業種別では、ITエンジニア不足が目立つ「情報サービス」が70.2%でトップとなり、技術者不足や就業者の高齢化が指摘されている「メンテナンス・警備・検査」(69.7%)も高水準で続いた
- 非正社員における人手不足割合は29.5%となり、前年同月比1.4pt低下した。これまで顕著だった「飲食店」「旅館・ホテル」を中心に、非正社員の人手不足感は緩和傾向に転じる兆しが見られた


■調査期間は2024年10月18日~10月31日。調査対象は全国2万7,008社、有効回答企業数は1万1,133社(回答率41.2%)
なお、雇用の過不足状況に関する調査は2006年5月より毎月実施しており、今回は2024年10月の結果をもとに取りまとめた
■本調査の詳細データは、帝国データバンクホームページ(https://www.tdb.co.jp)のレポートカテゴリにある協力先専用コンテンツに掲載
人手不足の割合は正社員で51.7%と5割超 非正社員は高水準ながらも「やや緩和傾向」に

2024年10月時点における全業種の従業員の過不足状況について、正社員が「不足」と感じている企業の割合は51.7%だった。前年同月比では2カ月連続で低下したものの下げ幅は小さく、依然として5割を上回るなど、高止まりが続いている。



非正社員では29.5%だった。前年同月から1.4pt低下し、同13カ月連続で前の月を下回る結果となり、人手不足は緩和傾向へ転じている。

正社員・業種別:ITエンジニア不足の「情報サービス」が70.2%でトップ、唯一の7割超
正社員の人手不足に関して業種別でみると、SE不足が深刻な「情報サービス」が70.2%でトップだった。前年同月比2.7pt低下となったものの、依然として業種別で唯一の7割超だった。「開発案件が多いなかで人手不足が顕著」(ソフト受託開発、東京都)との声があり、堅調な需要を背景に人手不足が慢性化している。

「メンテナンス・警備・検査」は69.7%で、7割に迫る高水準。需要は底堅いなかで、技術者不足や就業者の高齢化が指摘されている。また、時間外労働時間の上限規制が適用された「2024年問題」に直面している「建設」(69.6%)や「運輸・倉庫」(65.8%)、デジタル人材へのリスキリングなどに注目が集まっている「金融」(67.1%)など5業種が6割台となり人手不足が目立っている。





非正社員・業種別:最も高い「飲食店」を中心に、上位10業種中9業種で前年同月から低下
非正社員の人手不足割合を業種別にみると、「飲食店」は64.3%となった。次いで「旅館・ホテル」が続き、60.9%と高水準となった。

以下、社会全体の人手不足によって引き合いが堅調であることに加えて、派遣人材の不足が聞かれる「人材派遣・紹介」(55.2%)や、正社員でも高い人手不足割合がみられた「メンテナンス・警備・検査」(54.1%)が5割台で続いた。スーパーマーケットや百貨店が含まれる「各種商品小売」(48.9%)なども高水準ではあったものの、上位10業種中9業種で前年同月から低下する結果となった。


飲食店と旅館・ホテルにおいては、「アフターコロナ」が到来してから深刻な人手不足が続いた。飲食店では特に非正社員部門において長く業種別トップが続き、旅館・ホテルでは2022年12月には正社員と非正社員それぞれ8割を超えるなど、コロナ禍以前を上回る高水準で推移した。

こうしたなか、2024年に入って以降は引き続き業種別では上位ではあるものの、緩やかな改善傾向が見られている。インバウンド需要がさらに高まっているなかではあるが、業務効率化に向けたツールやスポットワークなど多様な働き方の普及が、人手不足の解消に寄与している背景の一つとして考えられる。





今後の見通し:深刻な人手不足倒産、「103万円の壁」見直しが人手不足解消の糸口となるか
人手不足割合は正社員では51.7%、非正社員では29.5%となった。正社員では引き続き5割を上回るなど「高止まり」の局面が続いている一方、非正社員では前年同月比で低下が続き、飲食店や旅館・ホテルを中心に上位10業種では9業種が同様に低下しており「やや緩和傾向」といえよう。




こうしたなか、人手不足が企業に与える影響は一段と深刻化している。2024年の「人手不足倒産」は10月時点で287件にのぼり、過去最多だった2023年の通年(260件)を既に上回り、2年連続の過去最多を記録した。特に「2024年問題」に直面する建設・物流業の割合が大きく、全体の4割以上を占めた。また、従業員数10人未満のケースが8割近くにのぼるなか、今後も主に大企業の賃上げペースに追いつけないことで小規模事業者を中心に人材の確保・定着は難しくなることが予想され、人手不足倒産は高水準で発生するものと見込まれる。

政府は、2023年の段階から「2030年代半ばまでに最低賃金の全国加重平均1500円を目指す」と表明していた。物価高対策の側面が強いものの、人件費の増加に耐え切れない企業にとっては大きな痛手となるケースも想定される。その場合には人手不足にさらなる拍車がかかる懸念も考えられるため、今後の人手不足動向を左右する大きな観点といえよう。

また、最低賃金引き上げにもかかわらず、いわゆる「103万円の壁」に代表される所得税の基礎控除合計が変わらなければ労働時間の減少に繋がることも考えられ、見直しに向けた議論も活発化してきた。控除合計の上限が見直されれば労働時間の拡大が期待できることから、特に非正社員においては人手不足の解消にも貢献できる可能性がある。一方で、最低賃金の上昇に比例した控除上限の見直しにとどまれば、労働時間の増加に至らないだろう。そのため、労働時間の増加による人手不足の解消という側面において、最低賃金の上昇を上回る形で控除合計の上限を引き上げることが求められる。