売る立場にある「現場」と価値を生み出す立場にある「経営者」。ミーティングでは時として意見が異なり、すれ違うこともありますよね。実は彼らには、明確な理由がありました。それは、脳の使い方、つまり、全く異なった物事の考え方をしていることです。
今回ご紹介する『マーケティング脳VSマネジメント脳』は、現場(マーケティング)と経営者(マネジメント)の脳の使い方の違いを明らかにした上で、互いに理解を深めるためにはどうしたら良いのかを分析したものです。
本のハイライト
経営者は左脳型が多く、現場は右脳型が多い
左脳は論理的思考を処理する時、右脳は感覚的な思考を処理をする時に機能していると言われています。そして、著者によると経営者(マネジメント)は左脳型の人が多く、現場(マーケティング)は右脳型が多いそうです。どういった違いが起きるのか具体的に見ていきましょう。
マネジメントは商品自体を重視
著者は、ダイムラー社のメルセデスを例に次のような分析をしています。メルセデスといえば、一般的には世界的な高級車というブランドイメージを大切にしているようにみえます。
しかし、ダイムラー社の経営陣によると(高級な)価格ではなく、品質や技術を一番大切にしているのだとか。つまり、価格や広告といった直感的に感じるブランド価値よりも、商品自体がなぜ良い物なのかという論理を大切にしているということ。
その根拠としてダイムラー社の経営陣は、ブランド価値よりも商品自体が良ければ売上が伸びると考え、性能は保証した上で安価なメルセデスを販売しました。
経営者は長期的な利益を生むために感覚で判断するのではなく、品質や技術といった面から論理的な戦略を重視していました。直感だけでは長期的に経営を行うことが困難になるため、左脳的思考に偏るのは必然なのでしょう。
マーケティングはブランドの表現の仕方を重視
一方で、現場でマーケティングを行う立場の人はブランド価値を大切にします。メルセデスは既に高級車のイメージがあるため、顧客はメルセデスを選ぶ基準として細かい性能よりも、「メルセデスという高級車を所有する」というステータスを意識します。
そういった顧客に対して売上を向上させるためには、価格を下げる(=「高級」というブランド価値を下げる)ようなことはせず、ブランドの価値を大切にするべきだと考えます。現場では、購買欲を高めるために直感的な要素を基に右脳的思考を重視していることがわかりました。
ダイムラー社の例から、経営者(マネジメント)と現場(マーケティング)といった立場で大きく思考の仕方が異なっているのが明らかになりました。そして、脳の使い方を理解することで、自分はどう考えるべきなのかを改めて見直すこともできるそうです。
もちろん、全ての会社がそのようにはっきりと異なっているわけではありません。Apple社の元CEOスティーブ・ジョブズ氏のように経営者でありながら右脳的な考え方を持ち、革新的な商品を生み出し続けたという例もあります。
本書は、マーケティングとマネジメントの視点を常に比較しながら考察しており、どちらが優れているという内容ではなく左脳型・右脳型では、視点や価値の捉え方の違いを明らかにしたものになっています。
それぞれの視点を知ることで、現場と経営者は「なぜ意見が異なって、すれ違う場合があるのか?」を学ぶことができます。具体例も豊富なので、気になった方はぜひ読んでみてください。
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