家に帰らない日は家賃がかからない新しい住居「unito」が登場し、注目を集めている。
宿泊施設を“暮らす場所”として月単位で貸し出し、部屋を空ける日は専用アプリから事前に外泊申請すれば、その分の料金を家賃から差し引く「Re-rent機能」を採用した住まいだ。住民が外泊する際の部屋をホテルとして貸し出すことで、Re-rentを実現している。
“家賃=毎月同じ額”という、これまでの固定概念を覆す新しいサービスをどのように実現させ、広めているのか?株式会社Unitoの近藤佑太朗代表に、バイタリティ溢れる活動を可能にする決断力・行動力について取材した。
サービス誕生のきっかけは、家賃への違和感
近藤代表は1994年11月生まれの25歳。幼少期の3年間をルーマニアで過ごした。
大学1年次に、国際交流を軸に活動する「学生団体 NEIGHBOR」を設立。また、明治学院大学在学中にクロアチアのビジネススクールZSEMで観光学を学んだ。
帰国後、国内スタートアップ・Airbnb Japanで修行し、起業。創業1年半で、宿泊施設・Co-living「CARAVAN」を、国内5拠点・海外1拠点にて展開。2019年12月にunitoを発表し、社名をUnitoに変更した。
近藤代表:もともと僕自身、友人の家に泊まったり、実家に帰ったり、旅行に行ったりと、月に10日間くらいは、家に帰らない日がありました。周りにも出張や旅行などの理由で家に帰らない日がある友人がいて、「こういう人、実はもっといるんじゃないかな」って思っていたのが、アイディアの元になりました。考えれば考えるほど、「毎日帰っているお隣さんと、月に10日間くらい外泊する僕の家賃が一緒っておかしいな」と思うようになって、次第に、帰らない日の家賃をもったいないと感じるようになりました。そうして、「帰らない日は家賃がかからない」そんな合理的な家があったらと思い、unitoの事業を構想し始めました。
近藤代表:Airbnbにより、日本では民泊の法律ができるほどに世の中が動いて、今では、多くの方に利用されるようになって、テレビに取り上げられたり、ユーザー数のリリースを見るたびに、何度も感動しました。僕も、この世にないものを生み出すことをやりたいと思いました。
もともとは、CARAVANという会社で、複数拠点を持つことで、そこを自由にユーザーが行き来できるような多拠点居住のサービスを進めていましたが、事業を進める中で、スケールする難しさを感じました。かなりの時間がかかるなと。
そこで、今回のアイディア「unito(ユニット)」に事業をピボットすることにしました。
アイディアは、既存知と既存知の組み合わせで生まれると思っています。CARAVANの事業を通して、ホテルやCo-Livngを立ち上げたり、不動産売買の経験もあるのですが、そこで培った、宿泊事業と不動産事業の知見が組み合わさったのが「unitoの原型」なんだと思います。
チームを作り、多動力でスピーディーに動く
近藤代表が「unito」を発案したのは、2019年7月。
その後、8月と9月に物件・チーム集め、10月と11月に資金調達・コーポレートアイデンティティの作成、12月から2020年2月にかけて開発・ローンチの準備など、かなりスピード感を持って進めたという。
2020年4月には、直営2拠点をオープン。「Re-rent」を導入した民泊やホテルなどの宿泊施設も続々とunitoプラットフォームとして参画しており、「unito」は現在合計200室を突破している。
近藤代表:オリンピックに間に合わせたいという思いはもちろん、2月〜4月の転居の多い時期に間に合わせたいと思いました。
“半年かかることをいかに1ヶ月でやるか”を意識していましたね。そのために、チームをつくって、業務を分散させ、多動力で事業を進めました。
よく、「自分がやったほうが早い」などと考えて、なかなかタスクを手放せない人も多いかと思いますし、また自分もそう思ってしまうことがあるのですが、そういう時に、「自分が思っている以上に、差はない。」と思うこと、そのことを理解することはとても大事だなと思っています。
実際に、結果をみてみると、そんな差はなく、むしろ自分では気がつけないことに気がついてもらえたり、全体としてスピードを上げることができたり、いいことの方が多いんですよね。
不安が大きい分、準備を入念に
-----「家賃=月額制」という、これまでの住まいの概念を覆す新しいサービスへの挑戦に、不安はありませんでしたか?
近藤代表:不安は大きいです。でも、その分ワクワク感があります。
不安が大きい分、いつも準備をしっかりするようにしています。
自分で考えられる範囲は全て考え抜いた上でサービスをローンチ、投資家さんなどに壁打ちするので、どんなフィードバックをもらえるのか、いつもワクワクしますね。
-----このサービスを実現させるにあたって大変だった点は?また、それをどう乗り越えましたか?
近藤代表:コロナ禍でのローンチは、やはり難しかったです。外に出るのは良くないという状況で、“外泊すれば家賃が安くなる”という自分たちの持ち味が、そのままではうまくハマりませんでした。
ただ、僕たちの強みが、強く発揮されたとも思っています。
スピード感のあるチームだからこそ、アフターコロナのニューノーマルにあったビジネスモデルにスイッチができました。世の中の人たちの変わりゆく暮らし方、働き方に注目して、打ち出しを再考しました。
今日の課題を見逃さず、自信を持って一歩を
学生時代は学生団体の設立と海外留学、社会に出てからはスタートアップでの修行・起業・スピード感ある事業展開と、バイタリティ溢れる活動を続ける近藤代表。
そのベースには、どのような考え方があるのだろうか。
-----迷ったり悩んだりして、立ち止まってしまうことはありませんか?力強く活動する決断力・行動力の源について教えてください。
近藤代表:デール・カーネギーという人が書いた「道は開ける」という本の中で、心を整える習慣として「人生は今日1日のみということを意識する。」というようなことが書いてあって、僕もそれを意識しています。
悩んでいることって、未来のまだ不確定のことに悩んでいることが多いんですよね。お金がなくなるって不安は、逆にいえば、今はまだお金があるという事実でもあるんですよね。
もちろん、長期的なところは経営者としても意識する必要がありますが、不安などを実感するのは今日だけでよいと思っています。
むしろ、今日の課題を見逃さずに今日解決しようとすることの方が大切です。だから、立ち止まることはないですね。
-----若手ビジネスパーソンに向けて、一歩踏み出すためのアドバイスをいただけますか?
近藤代表:やるなら今しかない。そもそも、「今、自分がどれだけ幸せか」を理解するべきだと思います。
日本人としてある程度教養がある自分って、すごく幸せ者だと思うんですよね。時代的にも、2020年代という自由が広がって、目まぐるしく変化する時代に生まれたことも幸せだと思っています。
そして、「なにかを生み出そう」と思えている自分、めっちゃ幸せですよね。
アイディアを抱いた人は、自分が幸せだということを理解して、自信をもって、一歩踏み出した方がよいと思っています。
一日一日に懸命に向き合って課題や目標を達成し続けていくことで、それが経験や実績、キャリアとして積み重なり、新たなサービスや力に繋がっていく。
出典元:unito
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