商品やサービスをただ提供するのではなく、それにより新たな文化を根付かせることを目指して事業を展開している企業がある。
コクハク株式会社は6月8日(月)、親孝行のきっかけサブスクリプションサービス「yuu(ユウ)」の提供を開始した。登録ユーザーの両親に毎月ギフトを届けることで、継続的な親孝行を促すサイクルを作るサービスだ。ギフトが届いた連絡を会話のきっかけとして、親孝行の一歩を踏み出すシチュエーションを演出する。
商品を届けること自体が目的ではなく、それをきっかけに新たなカルチャーを根付かせるためのサービスをどのように生み出したのか?
コクハク株式会社の岸田昇代表取締役とクリエイティブディレクター・コピーライターの武藤宏明さんに、実現まで道のりや苦難を乗り越えた方法について取材した。
きっかけを提供するサブスク
「yuu」は、親子のコミュニケーションを増やす手伝いをするサブスクリプションサービス。
定期的にギフトを贈ることができるので、これまで気恥ずかしさや忙しさなど、様々な理由で親孝行ができていなかった人も、気軽に手軽に、そして継続的に親孝行を行うことが可能となる。
サービスローンチ時に選択できるギフトは、定番の花。両親への思いを、鮮やかな色合いとフレッシュな香りと共に届ける。また、送った花の品種を受け取った両親やユーザーが確認できるよう、同社の公式SNSにて、花の解説も行っていくそうだ。
自身の体験・想いをもとに発案
同サービスは、コクハク株式会社の岸田代表と武藤さんが2人で作り上げたという。
-----同サービスの対象として「親孝行」に目を付けた理由を教えてください。何かきっかけとなった具体的な出来事があったのですか?
岸田代表・武藤さん:もともと離れて暮らす両親のことが好きなのですが、母の日や父の日以外にも親孝行をしたいと漠然と思っていたにも関わらず、何もできていなかった、という自分自身の体験が発案のきっかけです。
具体的な何かがあったわけではありませんが、きっかけがなくぼんやりと過ごす日々を解消したいと思っていました。
ギフトを贈るだけのサービスはすでに世の中にありますが、前述の通り、親孝行こそ母の日や父の日以外にも継続的に行えるサブスクリプション型が合うのではないかと考えました。
「なかなか行動に移せない"親孝行をしたい子"と"子のことを気にかけている親"の思いを紡いでいけるサービスをつくりたい」「親孝行の心理的・時間的なハードルを下げ、もっと気軽に親孝行できる機会を提供したい」という思いから、同サービスを作ったそうだ。
親孝行をクールな文化へと変える
-----ギフトを贈ること自体ではなく、“それによって親孝行のきっかけをつくる・根付かせる”ことを目的とした狙いは?
岸田代表・武藤さん:親孝行について調べるうちに、親世代はギフトをもらうことより「子が元気でいてくれる」ことや「定期的に声を聞かせてくれる」ことが一番の親孝行だと考えている調査結果があることに注目しました。
加えて、高価なギフトの場合はもらった喜びと同時に、子の金銭的負担が心配という意見もあったため、ギフトそのものは手頃な価格帯に設定し、それによって定期的に連絡する理由や言い訳を作れるサービスにしたいと思いました。
会話の糸口さえ見つかれば、それ自体が親孝行になるとともに、その次のアクションにも自然につながっていくという期待も込めています。
母の日や父の日のように親孝行を促す1日もありますが、親孝行を特別な1日にだけ行うのは少し寂しい気がします。いつでも、何度でもやっていいことであり、もっとクールで素敵な文化として再認識されるように変えていきたいという思いがありました。
今年は新型コロナウイルスの影響により、「母の日」を5月の一カ月間継続して「母の月」とする取り組みがあったように、親孝行という文化をもっと日常的に家族を大切に想う文化として広げていきたい、そのためのサービスが「yuu」です。
親孝行のハードルを下げるために工夫
-----同サービスをリリースするにあたって、こだわった点・工夫した点は?
岸田代表・武藤さん:ギフトそのものではなく、ギフトによって親孝行のきっかけを作る、というサービスコンセプトです。
ギフト選びは趣味嗜好が大きく影響するため、親孝行のハードルをいかに下げるかを考えた時に、ギフト選びが親孝行のハードルになってはいけないと考えました。
リリース時のギフトをお花にしたのも、一般的にはお花をもらって嫌な人はいないという点にあります。
-----同サービスのターゲットについて教えてください。
岸田代表・武藤さん:親孝行をきちんとした形でしたいと思っているものの、改まってするのは照れくさかったり、日々の生活に追われて時間が取れないなど、なかなか行動に移せていない30~50代の男女です。
まだ世の中にないサービスをゼロから形に
同社は他にも、日本を代表する農園の果実×チョコレート×ショートエッセイを掛け合わせた「読むチョコレート」や、原材料にこだわりの国産コオロギを使用した「昆虫ドレッシングブランド『TWO THIRDS』」など、画期的な商品・サービスを世に送り出している。
-----これまでなかった新しいサービスを生み出すのは、大変ではないですか?また、それをどのように乗り越えていますか?
岸田代表・武藤さん:もちろん容易ではありません。まだ世の中にないサービスをゼロから考え形にしていくのはとても大変です。
しかし、日本の経済成長率が下がりはじめるとともに、訪日外国人観光客が急増して世界と一層混ざり合い、ビジネスにおいてもパラダイムシフトが次々と起きている今の時代、そしてこれからの時代を考えると、新しいアクションを起こさずにはいられません。
数年先の世の中も見えないなかで、未来を自分たち自身で掴みにいくひたむきな想いと熱量を絶やさないことで、小さな苦労さえも大きな活力に変えています。
-----モノゴトを一過性の流行に留まらず、生活へと浸透させていくために、どのような工夫をしていますか?
岸田代表・武藤さん:固定概念に縛られず、可能な限りフラットな視点で物事を捉えられるよう、現代社会の課題や世の中の空気に常にアンテナを張っています。
弊社はtoBへマーケティング事業を展開している会社でもあるため、最新のマーケティングトレンドや先進のテクノロジーも積極的に取り入れています。
一方、「yuu」のように人と人との本質的な関わり、心の奥底にある普遍的な想いに目を向けることも“生活へと浸透させていく”うえでは欠かせません。「人の中の本質」と「社会全体」をバランスよく行き来して思考することを大切にしています。
秘めた可能性を最大化し、世界へ
親孝行のきっかけサブスクリプションサービス「yuu」は今後、環境問題にも着目し、生花店で約30%ほど廃棄されると言われている廃棄フラワーの活用や、結婚式場で用いられた花の2次利用など、さらにソーシャルグッドなプロダクトへと昇華させていくことを目指しているという。
-----貴社が事業を通して実現したいこと、今後の展望やビジョンなどを教えてください。
岸田代表・武藤さん:会社のビジョンは「多様なカルチャーの波を大きなうねりに変え、世界へ浸透させる。」です。
今後もさまざまなカルチャーに秘めた可能性を最大化し、時にはその潮流さえも創り上げながら世界へと広げていきます。
自身の体験や想いを原動力に、新たな文化の広がりを目指して事業を行うコクハク。同社の事業が今後どのように世界に広がっていくのか、どんな新しい文化を生み出していくのか、楽しみだ。
出典元:yuu(ユウ)
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