1. 地方から世界へ! BEAMSのクリエイティブディレクターが語る“地方のものづくり”のすごさとは

地方から世界へ! BEAMSのクリエイティブディレクターが語る“地方のものづくり”のすごさとは

 若者だけでなく、幅広い世代にとっても、ライフスタイルの重要な部分を担うファッション。そんなファッション業界で独自の路線をいく企業“BEAMS”。そのBEAMS内で、アパレルにとらわれず様々なモノを創造している、ビームス創造研究所。そのシニアクリエイティブディレクターである南馬越一義さんに、今までやってきた仕事について取材を試みた。

南馬越 一義 プロフィール

みなみまごえ・かずよし/株式会社ビームス ビームス創造研究所 シニアクリエイティブディレクター
1962 年生まれ。1984 年入社。メンズカジュアルのショップスタッフを経て、ウィメンズ店舗「レイ ビームス 渋谷」の店長としてウィメンズ分野でのキャリアをスタートする。1989 年より「レイ ビームス」レーベルのバイヤーとして数々の功績を挙げ、2004 年、ウィメンズ全体のクリエイティブディレクターに就任。世界中を飛び回り、旬のデザイナーやブランドを次々と発掘した。ビームス創造研究所の立ち上げに伴い2010年3月より新規事業の開発に着手。佐賀県、熊本県、東北地域の伝統的なものづくりに現代的な要素を掛け合わせるコラボレーション企画や、「ビーミング ライフストア」「カロリナグレイサー」等ブランドのプロデュースも手がける。東京、パリ、NYのコレクション会場からTwitterで発信する速報コメントが国内メディアに掲載されることも多く、様々なバラエティ番組やコンテストでコメンテーターや審査員を務めるなど、活動は多岐にわたる。

地方のものづくりってスゴイ!

———南馬越さんが働く部署では、どんな事をしてらっしゃるんですか?

実はその質問に対する答え方が一番難しかったりするんですよね(笑)! ざっくり言うと、BEAMSの「モノ」ではなく「ソフト」を活かし、企業や自治体などと協業するビジネスを目指して発足した部署です。我々はそのプレイヤーという感じですかね。

———最近はどんなものを創造されましたか?

最近では、佐賀県と組んだ企画ですね。例えば、佐賀県の伝統工芸品の有田焼の魅力を伝える為に、器を使うところまでプレゼンテーションしようと、佐賀の食材を使った“朝食”を器に盛って食べるカフェを企画しました。

他にも佐賀県のPRを行う“FACTORY SAGA”と組んで、『STAND SAGA』というスタンド型セレクトショップも企画しました。佐賀県のオシャレなモノや可愛いモノなどをディレクションして、有楽町と銀座にスタンドを作って、期間限定で販売しました。それらの仕事は好評をいただいています。

———なぜ地方自治体とコラボするような仕事を始めたのですか?

東北の復興支援を通じて仕事がくるようになったのがきっかけです。ヤフー復興支援室さまと組んで、東北のものづくりをサポートする企画を立ち上げました。『KENDAMA  TOHOKU』というもので、山形の工房で作られている“けん玉”にクリエイターによるデザインを落とし込んで、その関連グッズを東日本大震災の被災地で作ったりしていましたね。石巻ではけん玉用のポーチを、会津ではの会津木綿を使ったTシャツやショーツなども製作しました。

———地方のものづくりや工芸品とのコラボで、苦労はありましたか?

確かにありましたね。BEAMSとコラボしましょうという話が自治体であがっても、伝統工芸の職人の方々にはなかなか理解しがたい事があったり、僕たちは売り場に直結する部署ではないのですが、「これをBEAMSで売ってくれるの?」と誤解されてしまったりしました。ただ、最近は職人さんの間でも世代交代が起こっていて、二代目三代目の若い方々が活躍し始めているので、そういった方々の柔軟な姿勢には非常に助けられました。話が進みやすいんですね。

ローカルから都会へ、そして海外へ!

———最近では、地方のものづくりはとても注目されていますね!

そうですね。アメリカでもそうですが、ブルックリンやポートランドなどの地方では、新しいものづくりが生まれたり、地方が脚光を浴びているケースが多々あって、日本でも同じような流れが生まれれば良いなと思っています。

———確かにそうなってくると、地方全体も活性化しますね

地方で新しいものづくりができれば、わざわざ都会に出ていく必要もなくなります。今は3Dプリンターのような”作る技術”も徐々に発達してきていますしね。アメリカの例で言うと、カードケースを手作りしているところがあるんですが、そこは、クラウドファンディングで資金調達しています。そんな風にローカルの人たちがローカルの物を使って面白いモノを作っていると、世界の注目を集めるようになります。非常に面白いなと感じています。

———ビジネス誌などでも「地方に注目する」などと書かれたりしていますね

『クールジャパン』のコンテンツの一つとしても、地方のものづくりというものは強いですもんね。注目している人は多いと思います。そういう意味で言うと東北の“けん玉”は良い例だと思います。元々日本の工房で作っていたけん玉が、海外の若者の中で人気が出て、エクストリームけん玉などと呼ばれる代物に進化したりしていますからね。山形だけではなく広島でも作っているんですけど、そこでもけん玉作りだけでなく大会をひらいて町おこしをしています。

無から有よりも「ここに有るものを別の場所で活かす」のが得意!

———けん玉のような、『コレに注目!』といったコンテンツを見つける、その慧眼はどのようにお持ちになったのですか?

僕の場合は、元々バイヤーだったというのが一因としてあると思います。世界中に買い付けに行って、コレクションやファッションショーとかも見てまわる。そんな中で、世界から日本を見てみて、海外の例と相対し、何かを見つけ出すということは多いですね。

例えば“アメリカのポートランド”と“日本の佐賀”を照らし合わせて、アメリカのこのやり方を、日本の佐賀でこういう風に応用すれば面白くなるんじゃないか、と思ったりして企画を立てます。たぶん我々セレクトショップならではの視点だと思います。

———応用する見つけ方が長けてらっしゃるんですね! 

何も無いところから新しいものを生み出すのは、とても難しいことです。しかし、あるところで芽生えているものを別の場所で応用したり、あてはめてディレクションする事は、我々の得意とする分野ですね。

———ちなみに、先ほどお話した“けん玉”とコラボするきっかけは何だったんですか?

実はたまたまだったんです。東北のものづくりを活かした企画を模索していた時、僕たちはアパレル企業なので“服”で何かできないかと東北の工場を周っていました。しかし、工場には“MADE IN東北”感がなくて、困ってしまった。そんな時に、一緒に東北を周っていた方がけん玉を持っていて、話を聞いたら「実は、海外ではブームで…」と聞いて。「けん玉面白いね!」という話から始まりました。

アクティブな気質が仕事に繋がる!?

———そういう面白そうなものに触れようと、ご自身も活動的なんですね!

自分ではそのつもりがなくても、気付いたら色々な所を転々としてるな、と後から気付いたりしますね(笑)。海外にもよく行きますし、福島に日帰りで行ったり。こないだは京都まで日帰りで行きました。まぁそんな中で、プライベートでは1年間で50本以上映画館で映画を観ましたけどね(笑)

———色々と出て動くのは、お好きなのですね?

出掛けるのは好きですね。「兼高かおる」さんという、世界の何十か国も回ってレポートする女性ジャーナリストがいらっしゃるんですが、その方の出演するテレビ番組「兼高かおる世界の旅」を見ては、「ファッション業界の兼高かおるになりたいな」と昔から思っていました。色々な所に行って、「こんな面白いものがあるよ!」とか「こんなカッコイイものがあるよ!」と人々に紹介する仕事ができたらいいなとは常々思っていましたね。


 南馬越一義さんの話を聞くと、”ファッション=服”という固定観念を大きく覆される人も多いだろう。単なるモノの販売にとどまらず、企画や、ソフトをディレクションして販売する。そうして、地方の伝統的なものづくりは、最先端のファッション等と組み合わされることで、新しい文化に変化する。今後、南馬越さんの手によって注目される地方の文化が、世界中で脚光を浴びる日も遠くないだろう。

Interview/Text: 内田雄介
Photo: 神藤剛

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