これからのキャリアや人生を考えるにあたって、「自分の可能性に挑戦したい」「新しいことを始めたい」と思ってはいるものの、肝心の“やりたいこと”が見つからないという若者も多いのでは?
夢や目標、ビジョンを持って、それに向かって力強く行動している若手ビジネスパーソンは、“やりたいこと”をどのようにして見つけたのでしょうか。
株式会社wakonart 代表取締役の白江勝行さん(22歳)は、「世界レベルで戦える経営者になり、継承の文化が詰まった伝統工芸を未来と世界へ伝える」という想いのもと、culture-techスタートアップにて事業を展開している学生起業家。
「伝統工芸を未来と世界へ伝える」というミッションにどのように出会ったのか。また、その実現にむけてどのように行動してきたのか?白江さんに話を聞きました。
身近にあった関心・想いから活動をスタート
白江さんは1999年4月生まれ、現在22歳。大阪府立大学経済データサイエンス専攻の3年生(現在休学中)です。
大学に入学後の2年間で、開発途上国の教育支援を行う一般社団法人STUDY FOR TWOでの活動や、大学近くにある起業家シェアハウスのスタッフとして、飲食店の経営サポートやスタートアップの立ち上げ等を経験。
2020年からは、大手旅行企業&大手決済企業資本下の新規事業立ち上げに即戦力として携わる外部起業家として、中国向けの伝統工芸品越境EC事業の立ち上げに着手。
そして、2020年8月に、現代書道アーティスト兼書デザイナーの泉夏深さんと共同で同社を設立。今年2月には、「Z世代×伝統工芸」という新たな視点から伝統工芸の魅力を発信するアンバサダー事業「とらくら」をリリースしました。
-----大学入学後すぐに、途上国支援や飲食店の経営サポートなどの活動を始めた理由は?
白江さん:父親が昔、建築会社の社長をしていて、その関係でいろいろな地域に連れていってもらっていました。その体験から、経営やビジネス、地方創生に関心を持つようになりました。
海外支援を始めたのは、自分が受けた恩を社会に還元するためです。
僕は左耳が聞こえないのですが、そのため、コミュニケーションの面などで周りの人からたくさんの気遣いをしてもらいました。「その恩を少しでも社会に還元したい」と思ったのが、国際協力の活動を始めたきっかけです。
伝統工芸をビジネスとして未来・世界へ伝える
-----「伝統工芸をビジネスとして未来・世界へ伝える」という想いを抱いた経緯は?
白江さん:祖母が丹後ちりめんという京都府北部丹後の伝統工芸の職人、叔母も丹後ちりめんの糸繰り職人という、伝統工芸が身近な環境で育ちました。
伝統工芸に関心があり、陶器市や展覧会に足を運んだり、職人と話したりしているうちに芽生えたのが「伝統工芸の可能性は無限大だ、伝えたい」という想いです。
また、「歴史的価値や希少性を持つ伝統工芸のストーリーをちゃんと伝えて売り出せば、もっと日本の文化が評価されるのではないか」と考え、ビジネスとして伝統工芸に専念することを決断しました。
-----伝統工芸品のストーリーとは?
白江さん:例えば、今一番はまっている工芸品は備前焼です。
備前焼は釉薬を一切使わずに、岡山県備前市の土をそのまま固めて一気に高温で焼き上げて作ります。そのため、人工的装飾が最低限で、自然の豊かさが凝縮された色合いになります。
また、長く使うことができ、生活に馴染んでいくという点においても最高だと感じています。
特に、岡山県備前市伊部にある、3人の備前焼作家による共同ギャラリー gallery kaiの大ファンです。
wakonart=和魂+アート
wakonart(ワコンアート)という会社名は、和魂+芸術から名付けたといいます。
和魂には、調和や日本らしさを大事にしたいという想いを。アートには、芸術のように老若男女問わず世界で愛される会社にしていきたい、文化・工芸をそのレベルまで引き上げたいという想いを込めているそうです。
-----学生起業を決意した経緯を教えてください。
白江さん:「学生だから起業する」という意識は一切ありませんでした。
当時、大学の近くにある学生向け起業家シェアハウスのスタッフとして活動していたのですが、起業志望者が集まる起業家マインドに溢れる環境にいたため、自然と「自分も起業に挑戦しよう」と思うようになりました。
-----起業するにあたって、不安や恐れなどの心理的ハードルはありませんでしたか?
白江さん:一切ありませんでした。
過去に、親が破産するという経験をしたので、「もし失敗したとしても、あの時より辛いことは絶対にない」「それなら、やりたいことをやり切ろう」と思いました。
まず、ビジョンを共有できるパートナーを探した
-----起業にあたってどう動きましたか?何が必要と考え、それをどう獲得しましたか?
白江さん:まず必要だと考えたのは、ビジョンの合うパートナーを見つけることです。
共同創業者である泉さんとは、デザインやブランディングに強いデザイナーを探しているなかで、twitter経由で出会いました。
-----どのようにして、パートナーになってもらったのですか?
白江さん:Twitterのダイレクトメールで声をかけ、まずはZoomで話をしました。その後、実際に会って、描いている未来ややりたいことなどについてすり合わせを行いました。
パートナーになってもらうために工夫したのは、自分がやりたいことをきちんと言語化して伝えることです。
「なぜ自分がwakonartを創るべきなのか」「これからどういう戦略で日本の伝統工芸を最高級のレベルに上げて次世代に繋ぐか」「どうやって若い人に伝えるか」等について泉さんと話し合いを重ねました。
泉さんと僕の間には、ターゲットやミッションなどを記した40枚以上のブランディング資料があります。その全てをすり合わせることで、目線を合わせてブレずに活動することができる共同創業者になりました。
伝えるために大切なのは、想いの言語化
白江さんは今年3月、NPO法人学生ネットワークWANが主催する、デジタル技術を駆使して学びながら主体的に活動し“伝える力”を発揮している学生たちを表彰する「学生エバンジェリストアワード 2021 Spring」で準グランプリを受賞。
新しいツールと伝統という対極にあるものをうまく結びつけ、さらにそれを事業として継続していこうとしている姿が評価されたといいます。
-----「伝える力」という点において、白江さんが工夫していることはありますか?
白江さん:自分の想い・ビジョンをきちんと言語化することです。
「自分がなぜやっているのか」「なにをやりたいか」「それにより、どのような未来が実現するか」といったストーリーを語れるようにしています。
-----ビジネスの協力者を得るために、どのようなことを大切にしていますか?
白江さん:ビジョンと熱意、そして「自分はここでずっと仕事をやり続ける」「自分は絶対に逃げない」という覚悟を伝えることです。
目先にある“一番大事なこと”を常に考える
-----「夢・やりたいことが見つからない」という人もいますが、夢や目標、ビジョンを見つけるためには何が大切だと思いますか?
白江さん:ビジョンを無理して作ろうとせず、「今、本能で何がしたいか」を大切に動けばいいのではなでしょうか。
目先にある一番大事なことは何かを常に考え、それに取り組むことで、その先の目標やビジョンが見えてくるのではないかと思います。
-----夢や目標、ビジョンを行動に移すためにはパワーが必要だと思いますが、白江さんのバイタリティの源は?
白江さん:現在は「若さ」が全ての源泉になっています。
若いので失敗したとしても、それもすべて経験やキャリアになりますし、いくらでも修正できるので、「今だからこそ攻め続けることができる」と考えています。
白江さんが実践している3つの行動
白江さんは今後、Z世代×伝統工芸「とらくら」のアンバサダーを全都道府県に設置し、自分たちでお金を生んで経済を回していく仕組みをつくり、次の世代に引き継いでいきたいと考えているそうです。
また、「最高級の文化生活を提供する」というビジョンに向けて、wakonartにて最高級のブランドをつくるためにDtoCの展開を計画。
将来的には、伝統工芸の未来のために、他社とも連携しながら日本版LVMH(ラグジュアリービジネスの世界的グループ)を創りたいと考えているといいます。
-----白江さんにとって“働く”とは?キャリアや仕事への向き合い方を聞かせてください。
白江さん:今、僕は“働いている”という意識はなく、息を吸うように仕事をしています。
「ずっと夢中になれるものを見つけて、それを楽しくやっていくこと=働く」だと、思っています。
-----これまでを振り返って、「これは役に立った」「やって良かった」「オススメ」と思う経験や学び、行動などはありますか?
白江さん:本を読むこと、ノートを毎日書くこと、お金と時間に対する価値観の3つです。
1つ目の読書ですが、僕は興味がある・詳しくなりたいと思った業界の本は、目に届く範囲で購入して、徹底的に読んでいます。
本で得られる知識は全てインプットしたいと考えて徹底的に本を読み、その内容をノートにまとめて言語化し、事業の計画書やnoteに組み込むなど活用しています。
白江さん:2つ目の、「ノートを毎日書く」については、僕は2019年から、自分が考えていることやアイデア、その日に言われたことで大切だと思ったことなどをメモするようにしています。
想いや気づきなどを自分の中で言語化し、掘り下げるためにオススメです。
白江さん:3つ目「時間とお金に対する価値観」においては、僕は、目先の数万円を失うことを怖がらず、どんどん使って、フットワーク軽く行動するように心がけています。
例えば、僕は今大阪に住んでいるのですが、東京で先輩起業家に呼ばれたらすぐに行く。「いつでも・どこでも、すぐに行けます」というスタンスで、いろいろな人に会ったり、経験できることに時間を投資するようにしています。
“やりたいこと”を無理して探すのではなく、自分の身近にあった地方貢献・社会への恩返し・伝統工芸などに向き合い、行動し続けてきたことで、現在、自分ならではの道を力強く進んでいる白江さん。
まずは、「これは仕事」「これはプライベート」と分けずに、目の前にある“今したいこと”に取り組む。
そして、それに関連する知識を学び、気づきや思いをノートなどに記して言語化し、訪れたチャンスにはすぐに飛びつくという白江さんの生き方は、「やりたいことを見つけたい」「何かに挑戦したい」と思っている若手ビジネスパーソンの参考になるのではないでしょうか。
出典元:wakonart
出典元:NPO法人学生ネットワークWAN
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