起業や会社での新規プロジェクトなど、ビジネスで何かしらの挑戦をしたいと考えているけれど「失敗するのが怖い」「モチベーションを維持できる自信がない」といった不安を抱え、行動に移せずにいる人もいるのではないでしょうか。
倉岡篤志さん(24歳)が代表取締役を務めるRuten株式会社は2021年2月、同社が展開するデジタル名刺アプリ「handshake」の月間アクセス数(ユニークユーザー数)がβ版のリリースから約11カ月で10万人を突破したと発表しました。
なぜ起業し、起業後はどのようにして事業を成長させているのか。どのような考え方のもと、目標に向けて進み続けているのか。倉岡さんに取材しました。
WITHコロナ時代のデジタル名刺アプリ
「handshake」は、自身のデジタル情報を1ページにまとめて、簡単に交換できるデジタル名刺アプリ。
見てほしいSNSやWebサイトなどをまとめたオリジナルデザインのデジタル名刺を作成することで、自分自身を短時間で視覚的に伝えることができます。
QRコードやリンクを共有することで簡単にシェアが可能。ビデオ会議でQRコードをバーチャル背景に貼り付けたり、SNSのプロフィール欄にリンクを貼り付けてシェアしたりと、多様な場面で簡単に情報を共有することができます。
海外インターンをきっかけに、22歳で起業
倉岡さんは1996年10月生まれの、現在24歳。大学4年生の時に22歳でRuten株式会社を設立しました。
現在は、ボランティアとして協力してくれている学生5人と共に事業を展開しているそう。今年4月には、学生メンバーのうちの1人が同社に入社する予定だそうです。
-----いつ頃から起業を考えていましたか?
倉岡さん:大学3年生の夏頃です。
-----起業を考えるようになったきっかけは?
倉岡さん:僕は大学で土木系の学科に在籍していました。
大学3年生の夏に就職活動を意識し始め、成長を求めてアメリカで3週間海外インターンシップを経験したのですが、インターンシップ先のアメリカで、「NPOをつくりたい」「起業したい」といった高い志を持っている現地の学生たちに出会ってカルチャーショックを受け、帰国後、自分も起業を意識するようになりました。
行動することで、自分や社会の現実を知る
-----起業を決断してから、どのような行動をしましたか?
倉岡さん:ビジネス書を読んだり、スタートアップ関連イベントに参加したりしました。
その中で、社長や役員として活躍している大学のOBや、自分より若いのに起業等に向けて動き始めている優秀な学生たちに出会い、自分が小さな世界にいることを思い知り、これまで以上にハングリーに情報を求めるようになりました。
その行動の一つとして、大学4年時に1年間休学して、若くして成功した人や世界でも時価総額の高い企業が集まるシリコンバレーに行きました。現地では語学学校に通ったのですが、所持金が3万円という状態で現地に行ったので、途中からは泊まる場所を探すのも大変な状況になり、シリコンバレーの社会の現実を身に染みて体験することができました。
-----起業に向けての知識やノウハウはどのようにして学びましたか?
倉岡さん:挑戦してみて駄目だったら、その原因を考えたり調べたりするというトライアンドエラーを繰り返しました。
人脈という観点で言うと、Facebookや知り合いからの紹介などで、さまざまな人々に出会いました。
今、事業に協力してくれている学生ボランティアの方たちとは、アメリカ留学時に僕がnoteで発信した記事がきっかけで繋がりました。
まずは現実的にできることからスタート
-----起業を考えた時に、どんなビジネスを展開したいと考えていましたか?
倉岡さん:もともと、多拠点型シェアサテライトオフィスを地方に作っていきたいと考え、会社を設立しました。理由は、分散型の社会を実現したいと思ったからです。
シリコンバレーを訪れた際に、この街は外から見るとキラキラしたイノベーティブな街だけど、実際は資本主義を突き詰めた先にあるさまざまな課題を抱えていることを身をもって体験しました。
地価の高騰により、もともと住んでいた人たちがホームレス生活を余儀なくされたり、引っ越さざるを得なくなったりしているのを目の当たりにし、「これは東京の一極集中にも近いのではないか」と感じました。そこで、多拠点型シェアオフィスやどこにいてもできるビジネスをつくり、分散型の社会を実現したいと考えました。
-----デジタル名刺アプリ「handshake」は、どのように誕生したのですか?
倉岡さん:会社設立後、多拠点型シェアサテライトオフィス事業に向けて1年間ほど活動しましたが上手くいかず、これは自分たちが今すぐにできる事業ではないと思いました。
そこで、まずは現実的に自分たちができることから始めようと考え、ウェブサービスを展開することを発案。新型コロナの影響もあって、リモート前提で使えるサービスを作ろうと考え、handshakeを始めました。
日常生活の中で必要とされるサービスへ
handshakeは、2020年3月のβ版リリースから1年足らずで月間アクセス数10万人を突破しました。
最初は学生団体やサークルの間で広がり、そこから派生してミスコン界隈に広がり、現在はミニマリスト系ブロガーの間でも多く使われているそうです。
-----handshakeで特にこだわった点は?
倉岡さん:ユーザーが直感的に操作できるようなデザインです。黄金比や既存SNSのUIなどに近づけ、考えずに操作できるように工夫しました。
-----β版リリースから1年足らずで月間アクセス10万人を突破するために、どんな工夫をしましたか?
倉岡さん:まだまだこれからだと思っていますが、サービスをより良いものにするために、ユーザーからフィードバックをもらって改善サイクルを繰り返すことで、ユーザーが本当に使いやすい形に近づけていっています。
-----同サービスを、今後どのように成長させていきたいですか?
倉岡さん:もっとユーティリティなサービスにしていきたいと思っています。
オンライン会議の背景にhandshakeのQRコードが表示されていて、スマホカメラをかざすと相手の全てのSNS情報を得られるような、日常生活の中で必要なものとして使われるサービスにしていきたいです。
目指すのは、分散型社会の実現
-----これから、どのようなことに挑戦したいと考えていますか?
倉岡さん:当初の目標である、多拠点型シェアサテライトオフィス事業による、分散型社会の実現です。
現在展開しているhandshakeのノウハウをもとに、新たなWebサービスなどを展開して仕事を作っていき、それを多拠点型シェアサテライトオフィスの利用者にアウトソーシングする仕組みをつくる。
そうして、アウトソーシングした仕事で働く人たちが、各地の多拠点シェアハウスをまわりながら働いていく、という形をつくりたいと考えています。
目標に到達するまでは全て通過点
-----学生時代からこれまでを振り返って、「やっておいて良かった」「ためになった」と思う経験・学びは?
倉岡さん:ビジネス書に限らず、本を読むことは大事だと思います。
Rutenに協力してくれているメンバーには哲学好きが多いのですが、自分も哲学書を読んでいたおかげで、彼らと共通認識を持って会話でき、同じ方向を向いて進むことができています。
また、できるだけたくさんの人と会って、いろいろな考え方や分野、経験に触れたことも良かったです。
失敗したことも沢山ありましたが、それも含めて勉強になりました。できるだけ人の誘いを断らず、乗り気じゃなくても1回は飛び込んでみる意識を持つことで、出会いのきっかけを作ることができると思います。
-----これまでに、くじけたり、立ち止まりたくなったことはありましたか?また、それをどう乗り越えましたか?
倉岡さん:瞬間的に悔しかったことや悲しいことはたくさんありましたが、立ち止まることはありませんでした。
人生における目標に到達するまでは全て通過点だと思っているので、何か辛いことがあったとしても、それをカバーして進むためには何をしたらいいのか次のアクションを考えます。
例えば、スポーツで90分の試合をしている時、1点取られたからといって立ち止まるのではなく、点を取り返すことを考えるのではないでしょうか。それと同じです。
時間は有限、「自分が楽しいこと」が一番
-----倉岡さんにとって“働く”とは?仕事やキャリアへの向き合い方・考え方を聞かせてください。
倉岡さん:自分が楽しむことが一番だと思っています。
自分がやりたくて展開している事業に対してユーザーから反響を貰えたり、社会に対して価値あるものをつくれている実感を得られたり、大きな目標に少しずつ近づけていたりする感覚が楽しく、そういった楽しさをもっと大きくしていきたいという想いを原動力に進んでいます。
-----これからキャリアを切り拓いていく若手ビジネスパーソンに伝えたいことはありますか?
倉岡さん:若くて、いくらでも動くことがができる時間はとても貴重です。そんな貴重な時間を楽しめず、ため息をつきながら過ごすのはもったいないと思います。
仕事においても「仕事をいかに楽しくできるのか」を自分でルール化できるかどうかが、大事なのではないでしょうか。
また、就職活動をするにあたっては、社会に出てみないと分からないことも沢山あると思うので、“就職は1つの過程”と捉え、「人生において何に多くの時間を使えば、それが持続可能な形で、かつ自分も楽しめるか」を考えてみるといいのではないかと思います。
挑戦することで経験するさまざまな出来事に一喜一憂して動きを止めるのではなく、最終的な目標達成を目指して前進しつづけている倉岡さん。
留学先での失敗や事業での挫折にも挫けずに前に進み続けるその姿は、私たちに勇気を与えてくれます。
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