長引くコロナ禍により、多くの企業や人々が厳しい状況にある中、新しいマネタイズの仕組みを作って彼らを支援しようと取り組んでいる企業がある。
株式会社ザイグー(zaigoo.inc)は11月5日(木)、さまざまなネーミングライツを誰でも手軽に販売・購入できるネーミングマッチングサービス「namee(ネイミー)」を開始した。名前を通じた新しいコミュニケーションの形を創出することで、出品者・購入者双方を支援していく。
これまで企業の利用が中心だったネーミングライツを、誰でも手軽に販売・購入できるよう進化させたサービスをどのように生み出したのか?名取秀起代表取締役に発案のきっかけや仕事への向き合い方を取材した。
ネーミングマッチングサービス「namee」
「namee(ネイミー)」は、ネーミングを販売したいオーナーと、ネーマー(ネーミング希望者)をマッチングするためのプラットフォーム。
施設名や駅名から、スポーツ大会などのイベント名・サービス名・ミドルネームまで、形のあるモノはもちろん、形のないこコトでも、アイデア次第で販売することができる。
ネーミングライツを手軽に売買できるようにすることで、オーナー(販売する側)は新たな収入源を確保。ネーマー(購入する側)は購入したネーミングをプロモーションや記念利用に活用できるのはもちろん、ネーミングライツを購入することでオーナーを応援することもできる。
第1弾として、銚子電鉄の「銚子駅」の駅名や社長のミドルネーム、お笑い芸人コンビ「Bang Bang」の藤岡真信さんのミドルネームなど、多数のネーミングライツが出品されている。
企画プランニング「ザイグー」が開発
名取代表は、株式会社読売広告社を経て、2013年に同社を設立。
モーターショーを始めとする展示会、クリエイティブからプロモーション企画まで幅広く経験を積み、コンテンツを生かした広告プランニングからメディアとのタイアップ、企業のブランディングまで、立体的なプランニング・プロデュースを得意とする。
近年は自主興業イベントやブランド展開など、独自の展開に力を入れているそうだ。
-----貴社について教えてください。
名取代表:簡単にいうと企画プランニングを行う会社です。
クライアントの課題に対して、広告やプロモーションの企画提案を行なったり、自主で企画したイベントを制作運営したりしています。
僕は元々広告代理店に勤めていたので、広告企画を提案するのがメインの仕事なのですが、「焚火と音楽のイベント」を自主運営したり、ローションまみれで運動会をする、といったイベントの企画・運営もやっています。
コロナ禍で苦しむ動物園の報道を見て考案
-----「namee」を発案した経緯を教えてください。何か、きっかけになるような出来事があったのですか?
名取代表:実は、最初はクライアントに提出するプロモーション企画のアイデア会議からスタートしました。
あるクライアントから「顧客にコンテストを仕掛けたいのですが、何か面白いアイデアはありませんか?」というオーダーがあり、“様々なネーミングライツを集めて、優秀者は名前を残すことができる”というアイデアを提案させていただき、好評を得ることができました。
その時、世の中はコロナ禍で自粛の真っ最中でした。「弊社もこれからどうなっていくのだろうか?」「今の事業形態を続けていけるのであろうか?」と、色々と悩んでいました。
同時に、「何か新しい事にチャレンジしないと!」という切迫感もありました。
そんな時、ニュースで、ある動物園が自粛のためオープンできず、動物の餌代もままならない状況にあるという報道を見ました。
名取代表は、地方や海外に出張などがあると、その地域にある動物園に行ったりするほどの、大の動物園好きなのだという。
厳しい状況にある動物園のニュースを見て、「クラウドファンディングでどうにかならないだろうか?」「しかし、クラウドファンディングも返送品の制作や設計などが大変なんだろうなぁ」と、頭の中で考えを巡らせたそうだ。
名取代表:何か無形な物で、購入してくれた人も購入された側も喜ぶような仕組みができないか、と思い、考えたのが、“ネーミングライツを販売すること”でした。
人それぞれ、誕生日・結婚記念日など特別な日は違うので、“○○ちゃんお誕生日おめでとう記念DAY”などは365日できます。
それが困っている事業体の収入になるのではないかと思い、プラットフォームを作ることにしました。
一つひとつ組み上げ、サービスを形に
-----“ネーミングライツのマッチングサービス”というアイデアを形にし、サービス化するにあたって、どのように動きましたか?
名取代表:こういうインターネットのサービスを作ったことがなかったので、とても苦労しました。
詳しい人に相談して、作れる方を紹介してもらって、近いサービスがどうやって運営しているのかを研究して、ひとつひとつ組み上げていきました。
「この経験が、絶対にいつか役に立つから、筋トレだと思ってやろう!」なんて社員には声をかけていました。
とにかくスピードが命だと思っていたのですが、慣れない作業が多いので、発案からリリースまで結局5カ月もかかってしまいました。
まだ、「こういう機能があったら楽しいのになぁ」なんて思うことはたくさんあります。
例えば、ネーミングを売る側(オーナー)が、ネーミングコンペするような機能などもあったら盛り上がるかな、なんて思っています。こういう機能も追加でアップグレードしていきたいと思っています。
利用者のサービス理解を助ける工夫も
「namee」には、第1弾としてサービス開始時から、銚子電鉄やお笑い芸人のネーミングなど、さまざまなネーミングライツが出品されている。
-----これらのオーナーの方々はどのように見つけたのですか?
名取代表:ネーミングライツを提供する側が、「こういうことなのか!」とすぐにピンとくるように、最初から何個かは揃えておきたいなと思い、様々なツテを辿って交渉をしました。
そんな中で、銚子電鉄さん等と交渉させていただき、色々な商品を出品していただいております。
ただ、きっと世の中には僕たちが想像もつかない使い方をする人が出てくるんだろうなあ。なんて思っています。
「これは面白いなあ」「やられた!」みたいに、僕たちが思いもよらなかった面白い使い方をしていただけたらすごく幸せだな、なんて思っています。
どんな形でも出品できるようこだわり
-----同サービスをつくるにあたってこだわった点は?また、それをどのように実現しましたか?
名取代表:
“動物園の1日1日のネーミングライツ”
“草野球大会のネーミングライツ”
“少年サッカーのユニフォーム”
“飲食店のメニュー”
なんなら、“会社の名前”とか“社長の名前”とか。「こんなのも売れたら楽しいよね?」なんて会議を社内で開きながら、どんなネーミングが想定されるか?どんな形でも出品ができるようにと、整理していくのが大変でした。
まだ、こだわりは体現できていなくて、ネーミングコンペ機能の他にも、「入札できたらドキドキするなあ」とか、「オークションみたいにできたら盛り上がるよね」とか、アイデアは色々とあります。
少しづつですが、アップグレードしていきたいと思っています。
ちなみに、同記事のアイキャッチ画像にも使用しているこちらの写真に写っている人物は、実は名取代表ではなく、スタッフの古賀さんだという。
ザイグー広報担当者:社長の名取が肖像写真を出すのを嫌がっていたのを見て、スタッフの古賀くんが、自分の写真を「namee」に出品することを発案。
“一回だけ自分の写真を名取秀起の写真として活用して良い“という条件のネーミングライツを実施し、それを社長が購入しました。
なお、古賀くんによると、今回のネーミングライツの販売金額は、カバンを欲しがっていた奥さんへのプレゼントに活用したそうです。
経験のない挑戦も、失敗を恐れずに
同社は、常に前向きに、失敗を恐れずチャレンジをし続ける会社。
「それ、いいじゃん!~that is good~」と、前向きな言葉が溢れる世の中を作っていきたい!そんな夢に向かって、情熱を持って挑戦しているという。
-----そのために、大切にしている考え方・仕事への向き合い方を教えてください。
名取代表:まずは、思いついたことはすぐ行動に移す。経験したことのないチャレンジも失敗を恐れずにやる。
あと、最近思っているのは何事も基本はDIY。
効率を考えてアウトソーシングはもちろんしますが、まずは「自分たちでどうできるか?」を考えてみる。そんな姿勢が血となり肉となり、また次のアイデアに繋がるのかな、なんて思っています。
10月には、僕が大好きな日本の風景と日本人アーティストのかっこいい音楽を世界中に届けたいという思いから、会社名の由来となった言葉から名付けた、世界へ日本の文化を伝えるメディアと音楽チャンネル「THAT IS GOOD」を始めました。
このようなチャレンジを、これからも思いついたらすぐに行動に移していこうと思っています。
これまでは企業の利用が主だったネーミングライツを誰でも気軽・簡単に売買できるサービスをつくり、コロナ禍の中でがんばる企業や人々を支援するザイグー。
新たなマネタイズの仕組みを提供するだけでなく、企業と個人・個人と個人の新しい関係や交流もつくり出すサービスにより、世の中がどのように変わっていくのか、楽しみだ。
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