株式会社Offisis(オフィシス)は8月、オフィス弁当のソーシャルデリバリーサービス「JOY弁」を開始した。
お弁当の注文とその受け取りを誰かにお願いする「ついで受取」「お使い型配送」を実装することで、配送料や飲食店手数料を大幅に減らすことができる、同僚・友人・家族など信頼関係を構築できているコミュニティ向けの新しいアプリサービスだ。
第1弾として、東京ミッドタウン日比谷内店舗のお弁当が購入可能となっている。
画期的なサービスをどのように生み出したのか?田野宏一代表取締役に、同サービスを実現するまでの道のりや、新しいサービスを創り出すために大切な考え方について取材した。
「お使い型配送」でそれぞれの負担を軽減
「JOY弁」は、アプリ上でコミュニティ内のメンバーが注文したお弁当を、代表者が自分の分を取りに行く“ついで”に仲間の分も“まとめて”受け取りに行くという仕組み。
受け取りに行く代表者には次回の弁当の支払いに充当できるポイント(注文金額合計の10%)が付与され、受け取りを頼む注文者は負担する配送料が従来より安くなり、飲食店は手数料負担が軽くなる、3者それぞれにとって嬉しいサービスとなっている。
正しいと思うこと・やりたいことが選択の軸
同サービスを提供するOffisisは、会社とそこで働く人たちが相乗的に影響し合い、相互に向上していける新しいワークスタイルの提案・提供に取り組んでいる企業。
代表の田野宏一さんは東京大学卒業後、三菱商事株式会社にてスーパー・コンビニエンスストア・外食等の食品小売り事業、および財経・投資審査業務に従事。現場の運営や物流網構築、商品開発や経営管理まで幅広く担当するとともに、企業M&Aや国内外での新規事業開発等様々な案件に携わった。
その後独立し、2016年に株式会社Offisis社を創業した。
-----独立・起業に踏み切った経緯を教えてください。
田野代表:他の起業家の皆さんのように、「昔から起業したいと思っていたんです!」というようなことは全くありませんでした。
ただ、「自分が正しいと思う事・やりたいと思う事は、何があっても実現したい」という思いはあって、人生の選択をする際にはそこが軸になっていました。
起業した時にも、前職(三菱商事)を辞めることを前提に考えていた訳ではなかったという。
当時の三菱商事は今のようにベンチャー企業に投資をして新しい事業を創り出していくという方針ではなく、既にある程度の規模がある企業に大型投資を行って、最初からスケールを狙っていくというスタイルでした。
そのため、自分がやろうと思っているゼロイチのビジネスは会社の間尺に合わないなと判断し、結果として起業という道を選んだ形になります。
三菱商事は自分の社会人としての基礎を作ってくれた会社ですので本当に感謝しており、お世話になった上司や先輩、後輩には今でも定期的に会ったりしています。いつかは一緒に仕事が出来るようになると嬉しいですね。
-----起業し事業を展開していくにあたって、以前のキャリアや人脈をどのように活かしましたか?
田野代表:今我々が展開している事業は、前職で得られた知見をベースに構築したものとなっておりますので、その点が最も大きいポイントかと思っています。
また、吹けば飛んでしまうようなベンチャー企業である弊社が、様々な企業様とお仕事をご一緒させていただけているのは、ひとえに三菱商事という会社への信頼感をベースとして、そこに勤めていた自分を信頼してくれているものだと理解しています。
その意味で、会社を卒業したとはいえまだまだ独り立ちできていないなと思いますし、三菱商事の諸先輩方が築かれた信頼を卒業生となった自分が崩すことがないよう仕事と向き合っています。
消費習慣そのものをアップデート
今回リリースした「JOY弁」は、従来のフードデリバリーのビジネスモデルが抱えていた3重苦(配送員は低報酬・飲食店は手数料大・個人負担大)を解決に導くサービスだ。
-----どのような経緯で発案したのですか?何かきっかけになる出来事があったのでしょうか?
田野代表:三菱商事にて店舗ビジネスに従事する中、店舗のモノやサービスを消費者へとつなぐラストワンマイル(最終拠点からエンドユーザーへの最後の物流)を研究し、最適な提供方法を模索してきました。
ところが、既存の消費習慣の中でラストワンマイルを考えてしまうと、提供効率の向上に限界が生まれ、モノやサービスの提供方法が非合理的・非効率的なものとなってしまいます。
そうして色々考える中、あるべきラストワンマイルの形を実現するためには、消費者の消費習慣そのものをアップデートする必要があると考えるようになりました。
そして、ラストワンマイル問題解決へ向け、理想的な消費習慣およびモノやサービスのあるべき提供法を検討し、消費者が参加するコミュニティを活用してモノやサービスを消費者に届ける“Community Based Approach”による提供モデルが最適であるとの結論に至りました。
創業後、まずはサービス提供の効率化にチャレンジし、人が集まり、ニーズが集積するコミュニティに向けてサービスを効率的・効果的に届ける事業に取り組んだという。
サービス提供効率化に道筋をつけた現在、モノ提供の効率化を実現する新たなプロジェクトとして「JOY弁」というソーシャルデリバリーサービスを考案し、現在展開を拡大しています。
「正しいと思えることを見つける」を大切に
-----これまでになかった新しいサービスを創り出すためには、どのような考え方や行動が大切だと考えていますか?また、田野代表の行動力の源について教えてください。
田野代表:世の中、お仕事をされるモチベーションは皆さん様々だと思いますので、正直一概には言えないのですが…僕としては、「自分が心から正しいと思えることを見つける」ことを一番大切にしています。
正しいと思うというのは、論理的にそう思えることはもちろんですし、感情的にもそう思えることが重要ではないないかなと思っています。
逆に、心から正しいと思えることが見つかれば、自然と行動はついてくるのではないかなと(笑)。絶対正しい!と芯から思っているわけですし、ちょっとやそっとのことではブレずに行動していけるのではないでしょうか。
-----「JOY弁」を発案~サービス開始までには、どのような苦労がありましたか?また、それをどのように乗り越えましたか?
田野代表:恐らく色々と大変なことはあったと思うのですが(笑)、先ほどお話した通りで、僕自身自分が正しいと思ったことでないとなかなか手につかないタイプな一方、そうと思えることはあまり色々なことを気にせずやっていける性格なので、これまで「苦労したな~」と思うことはなかった気がします。
ラストワンマイルのニューノーマルを創造へ
-----「JOY弁」をはじめとする貴社サービスを通して、実現したいことは何ですか?ビジョンをお聞かせください。
田野代表:我々は未来のあるべき社会の形の一つとして、「ラストワンマイルのニューノーマル」の創造を目指しています。
既存のパラダイムでは、どうやっても上手くいかなかったラストワンマイルの最適化については、これまでのように配送方法の効率化に解決を求めるようでは、絶対に解決しないと思っています。そうではなく、もっと根幹の部分、ライフスタイルや社会システムにフォーカスしたイノベーションを起こさなければ、この問題は解決できないと考えています。
「JOY弁」では、“Community Based Approach”の考えを取り入れたサービスを通じて、日本に「ソーシャルデリバリープラットフォーム」を構築し、デリバリー業界が抱える3重苦の解決に挑んでいます。
これによりあるべきラストワンマイルの形を世の中に提供し、本当にサステイナブルなラストワンマイル物流を実現いたいと思っております。
まずは日本のビジネスの中心地であり、多種多様なオフィスワーカーが従事する日比谷エリアから「JOY弁」を展開し、新型コロナに苦しむ飲食店を支援するエリアマネジメントの新たな形として、ソーシャルデリバリーのモデルを全国に発信へ。
さらに、2020年内に、5つのエリアや自治体での展開を予定しているという。
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