1. もう肉や野菜は必要ない? 食事に時間をかけない“完全食”の世界

もう肉や野菜は必要ない? 食事に時間をかけない“完全食”の世界

by hawaii
 営業や会議で忙しく動き回る日に、「食事の時間すら惜しい」と考えたことがある人も多いだろう。さっと数分で必要な栄養を補い、空腹感をしのげる食べ物があればどれだけよいか……。実はそんな夢の食品が、シリコンバレーから生み出されていたのをご存知だろうか。

全ての栄養を補える「完全食」

by rbbaird
 完全食はかつて「栄養を豊富に含んだ食品や食事」を指す言葉で、「これだけで健康を維持できる食品」という意味合いはなかった。しかしシリコンバレーを中心として「人類が必要とする全ての栄養を含む完全栄養食品」のブームが巻き起こり、日本における完全食はそのような食品を指す言葉としても用いられるようになった。

 完全食は、食事に必要な時間・労力などのコストを最低限に抑え、その分を他の活動に回すことを目的としている。開発途上の段階にあるため、全ての食事を完全食に置き換えることは現在推奨されていない。しかし忙しい日の食事を完全食に置き換えながら「健康的な食生活を送る」動きは、アメリカを中心に現在広まりつつある。

シリコンバレーで生まれた完全食“Soylent(ソイレント)”

by sameerhalai
 完全食ブームに火を付けたのは、シリコンバレーのRosa Labs, LLCが販売している「Soylent(ソイレント)」。粉末を容器に入れ、水とシェイクするだけで完成する液状の食品だ。味はほんのり甘く、水の代わりに好みのジュースやコーヒーなどを使用することもできる。

エンジニアの青年が生み出した「食事をとらないライフスタイル」

 ソイレントの誕生は、Rosa Labs, LLCを立ち上げたロブ・ラインハート氏の「食事をとらずに生きられればいいのに」という発想がきっかけとなっている。ラインハート氏は当時スタートアップのエンジニアとして活動していたが、ベンチャー・キャピタルからの資金提供を受けられず、多忙を極めながらも出費を切り詰める生活を送っていた。

 その際、彼は何気なく浮かんだ「食事をしない生活」へのイメージを膨らませ、「必要な栄養素だけを摂取すれば生命を維持できるのではないか」という仮説を立てた。それを実証するため、生物学や栄養学を学んだラインハート氏が生み出したのがソイレントだ。

食品業界では異例のオープンソース手法

 ソイレントはレシピを完全公開しており、レシピを参考にしながらオリジナルのソイレントを作成できる。実際に作った人や栄養学者からのフィードバックを受け、製品を改善していくオープンソースの手法を取っているのだ。食品メーカーにとって財産となるレシピをあえて公開し多くのフィードバックを得ることで、ソイレントは完全食として進化し続けている。

「未来の食事」は未だ発展途上

 完全食のパイオニアとして名を馳せるソイレントだが、食の安全面ではまだ課題が残っているようだ。今年8月に発売されたスティックタイプのソイレント・バーが嘔吐や腹痛を引き起こすとして、Rosa Labs, LLCは10月から商品回収と返金を行っている。

 同社は全商品のうちクレーム率は0.03%であるとし、「アレルギーや不耐症、過敏症」の症状である可能性を述べているが、これらの症状への対応が完全食普及への課題となっている。

日本でも生まれた完全食“COMP(コンプ)”

出典:www.comp.jp
 日本でも完全食を生み出す動きが生まれている。今年3月に株式会社コンプから発売された完全食「COMP(コンプ)」は、クラウドファンディングから生まれた日本人向けの完全食だ。ソイレントと同様に粉末と液体をシェイクするだけで作ることができ、味はプレーンな豆乳風味となっている。

 開発者である薬学博士の鈴木優太氏は、研究に集中する際に食事の時間を短縮したいと考え、アメリカのソイレントに興味を持った。しかし日本国内ではソイレントは発売されておらず、輸入では高額になってしまうため、自ら完全食を作ることを思い立ったという。
 
 COMPは完全食として必要な栄養を全て備えているだけでなく、腹持ちや飲みやすさの点にもこだわって作られている。発売後も製品の改良を重ねており、今年10月にもバージョンアップが行われた。成分の調整だけでなく味の改善も行われているため、飲みごたえに対する評価も高く、好みの飲料や材料とCOMPを混ぜ合わせて味を楽しむ愛好家も増えている。
 

 手間も時間も必要とせず、必要な栄養を全て摂取することができる完全食。これらを日常生活の一部に取り入れれば“忙しい日は完全食で簡単に食事を済ませ、オフの日に美味しい食事をゆっくりとる”というスタイルを健康的に実現できるだろう。現代人の食生活を支える救世主として更に広まっていくのか、今後も注目していきたい。 

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