1. “生涯収入は幼児教育で決まる” 経済学視点から見直すべき日本教育とは?:『「学力」の経済学』

“生涯収入は幼児教育で決まる” 経済学視点から見直すべき日本教育とは?:『「学力」の経済学』

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 社会に出れば様々な人がいる。「他人に厳しい人」「妥協を許さない努力家」「絶対的リーダー」など、多様な個性が集団となってビジネスを展開している。当然、好意を持てる個性を持つ人もいれば、そうでない人もいる。多くの人の価値観は、幼少期から受ける教育に左右される。その教育の方針・考え方はその教育者の価値観から形成されるものであり、実は科学的なものではない。

 「教育に正解はない」と考える人もいるだろう。しかし、経済学の視点から教育を考察すると、ある程度の規則性が浮かび上がってきたのだ。教育には多額の費用がかかる。子供の教育費は、いわば人的資本への投資とも言えるだろう。それでは、どのような教育が統計的に有効な教育であり、教育費という投資を成功へ近づけることができるのだろうか。

 そこで今回は、中室牧子氏の『「学力」の経済学』から、従来の教育と比較しつつ、経済学的視点から考察した教育を見ていくとしよう。将来的な子供の教育に関する予備知識をつけるとともに、自身の価値観を刺激する機会になるだろう。

“ポテンシャル褒めは逆効果” 子供の褒め方とは

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 「褒めて育てる」という教育方針は、親だけでなく学校や塾にまで浸透する主流の教育方針となっている。本書の結論から言えば、褒めること自体に誤りはない。しかし、現代の「褒め教育」は使いどころを分かっていない。特に、「あなたはやればできる」といったポテンシャルを褒めることは逆効果なのだ。

 そもそも「褒め教育」が主流となった背景には、子供を褒めることで自尊心を高めることが学力を高めることに繋がるという考えがあった。しかし、実際の研究結果によると、学力が高いという事実に伴い自尊心が高くなるのであって、自尊心が学力と相関しているわけではないことが判明した。そのため、ポテンシャルを褒める教育は、根拠のないナルシストを生んでしまう危険性が潜んでいるのだ。

 それでは、正しい褒め方とは一体何なのだろうか。本書によると、具体的に達成した内容を褒めるということが正しい褒め方だ。子供の努力を褒めることで、子供はまた努力を続けるのである。本書では、他にも褒美を用いた有効な褒め方なども紹介している。是非、参考にしてほしい。

“勉強しなさいは禁句” 日本教育の誤った固定概念3選

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誤り①:「勉強しなさい」という促し方

 勉強をしない子供によく母親が口うるさく発する言葉が、「勉強しなさい」だ。誰もが子供の頃、母親のこの一言に耳を痛めていたのではないだろうか。

 この一言が、かえって子供の勉強意欲を削いでしまうことが多々ある。ただ言うのではなく、共に勉強をする時間をとることが、最も有効なのだ。さらに、同性の親が子供の勉強に付き合うことで、苦手科目の克服に繋がるという研究結果も出ている。

誤り②:ゲームが子供に与える悪影響について

 近年、ゲームが子供の脳に与える悪影響に対して、敏感な親が多い。「犯罪者を生み出す」とまで、考えている人も実は少なくないようだ。しかし、実際は1日1時間程度であれば、子供に与える悪影響はさほど大きいものではない。ただし、2時間を超えると悪影響は飛躍的に増大するため、要注意であることは変わらない。

誤り③:優秀な友達と仲良くなれば、自然と勉強に身が入る

 時々、子供に対して、「付き合う友人を選べ」と教育する親を見る。しかし、必ずしも勉強のできる友達と仲良くすれば、勉強に身が入るとは限らないのだ。

 その優秀な友達との学力差が大きければ大きいほど、逆に勉強する意欲は削がれてしまう。しかし、平均的に学力の高い集団に所属することで、子供の学力が向上する傾向にある。

「幼児教育」が最も収益率の高い人的資本

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 本書では、幼児教育が将来の学歴や年収などに大きく影響するとされている。幼児教育が子供の教育の中で重要だと言われると、学力が他の子供と比べて優れたものになると思いがちだが、実際は違う。学力面では、幼児教育で生まれた学力差は8才になる頃には消滅してしまうようだ。それでは、なぜ幼児教育が学歴・年収に関わると言えるのだろうか。

 幼児教育の効果が最も表れるのは、非認知能力である。非認知能力とは、意欲・自制心・忍耐力など目には見えないが、社会で必要とされる能力である。そもそも学力のような認知能力を鍛えるためには、意欲などの非認知能力が不可欠なのだ。つまり、長い目で見れば、非認知能力に長けた子供の方が他の子供よりも向上心が強く、自ら豊かな道へと進む力を持つのだ。

 幼稚園から大学まで公立であれば、教育費は1,000万円。また、私立であれば2,300万円の教育費がかかると言われている。生々しい話だが、教育費という投資費用以上のプラスを生む子供を育てるためには、初期段階である幼児教育に力を入れることが賢い選択と言えるのだ。


 私たちの価値観は、教育だけでなく実際に体験した経験や知識なども要素として形成されている。複合的な要素から成り立つ価値観から生まれた思想は、万人の型にはまるものではない。

 経済学的に教育をひも解いてみると、私たちの思い込みであると考えられる点がいくつも浮かび上がった。教育に限らず、何事も客観的に考えてみる機会を作ってはいかがだろうか。そうすれば、昨日とは一味違うあなたになるはずだ。

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