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「不動産バブル」が最も膨らんだ国・地域は台湾に:五輪バブルが来るであろう日本の順位は?

Taketo Watanabe

2016/02/29(最終更新日:2016/02/29)


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by wkc.1
 80年代後半から90年代前半に日本国中が色めきだった、空前絶後の不動産バブル景気が終焉してから、すでに20数年。バブルが跡形もなく弾け飛んだその後の日本は、バブルの後遺症を引きずった焼け野原のような“失われた20年“を経験した。

 そんな状況下の中、2020年夏の東京オリンピック需要の期待からか、東京の不動産市場だけは活況だ。東京へのオリンピック招致が決まった2014年度の日本の不動産取引市場は、“証券バブル”といわれた2007年度の不動産取引額に匹敵するほどの取引額だったのだ。

 では、日本経済は不動産バブルに突入したのか。世界の国や地域の不動産市場と日本の不動産市場を比較してみた時、日本のリアルな現状が見えてきた。以下は、不動産投資情報サイト『Leeways online』が算出した2015年度のデータを参考にさせてもらった。

不動産の投資利回りで各国のバブル景気を比較

 一概に“不動産バブル”といっても、それが何をもって判断するのかは難しいのだが、今回はわりと我々でも肌に感じやすい「不動産の投資利回り」で各国の不動産バブルを検証。不動産の賃料を購入価格で割り戻した表面利回りを用いて、各国をランキング形式で比較していく。すなわち不動産利回りが低ければ、それだけ不動産がバブル景気ということだ。

「不動産バブル」ランキング第10位 : イギリス

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by Miradortigre
不動産投資利回り : 3.21%

 イギリスのロンドンは世界でも有数の大都市。そのためロンドン市内の不動産の価格や賃料は常に高額で有名だ。またそれに拍車をかけるように、現在、ロンドン市内は新築物件の開発に制限をかけたグリーンベルト法が施行されていることもあり、さらに不動産価格が高騰。まさに不動産バブルといっても過言ではない。

2015年度「不動産バブル」ランキング第9位 : フランス

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by Julie70 Joyoflife
不動産投資利回り : 2.89%

 フランスのパリは、ロンドンと同じく世界有数の大都市であり、また、世界最大の観光都市でもある。そのため旅行客用の民泊アパートが乱立し、それらが不動産利回りに大いに関係している。さらに、フランスでは賃貸の上昇に法律の制限があるため、不動産価格上昇期には利回りが急激に下がりやすい傾向がある。

2015年度「不動産バブル」ランキング第8位 : ヴァージン諸島

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by Traveller-Reini
不動産投資利回り : 2.85%

 あまり聞きなれない地域のヴァージン諸島。カリブ海に浮かぶイギリス領のバージン諸島は、不動産投資先としてはそれほど魅力がないにもかかわらず、利回りは驚くほど低い。それはなぜかといえば、おそらくタックスヘブンの影響と考えられる。タックスヘブンとは日本語では「租税回避地」のことで、外国資本や外貨獲得のために、意図的に税金を優遇し、企業や裕福層の資産を誘致する地域のことをいう。

 ヴァージン諸島では、国内の規制が厳しい中国人実業家の進出が相次いでおり、それによって不動産を実態経済からかけ離れた価格で購入。それこそがヴァージン諸島の不動産バブルの実状といわれている。

2015年度「不動産バブル」ランキング第7位 : シンガポール

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by Mac Qin
不動産投資利回り : 2.83%

 金利も不動産取引価格も低いシンガポールは、昔から各国の投資家が投資用で不動産を購入するケースが多かった。近年は中国人投資家に加え、ロシアやインドネシアなどの投資家もシンガポールの高級物件の投資に集中。それにより一時期は右肩上がりで不動産バブルが膨れ上がったシンガポールだったが、現在はそれも落ち着き横ばいが続いている。

2015年度「不動産バブル」ランキング第6位 : 香港

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by Steve Webel
不動産投資利回り : 2.82%

 シンガポールの不動産バブルが横ばいになったのとは対照的に、同じアジアの中華圏でもある香港の不動産バブルはいまだ膨張を続ける。その影響は、まさに不動産バブルのど真ん中にあった、本国・中国経済の影響と考えられる。香港の不動産価格は2009年当時と比べて2014年度は、なんと2.5倍にもなっているほどだ。

2015年度「不動産バブル」ランキング第5位 : 中国

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by Stuck in Customs
不動産投資利回り : 2.66%

 事実として世界中の不動産の“爆買い”を続ける中国人だが、最近は中国本国の「不動産バブルが崩壊したのではないか」とささやかれる。それでも不動産投資利回りでは5位にランクインだ。中国の内陸部ではいまだ不動産価格の上昇余地も残っており、広大な国土を持つ中国の底力を感じさせる。

2015年度「不動産バブル」ランキング第4位 : イスラエル

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by Ilirjan Rrumbullaku
不動産投資利回り : 2.28%

 不安定で複雑怪奇な政情が続く中東の中で、イスラエルは最も不動産価格の高い国だ。イスラエルの中央銀行であるイスラエル銀行が、不動産購入を推進していることもあり、それが不動産価格の上昇を後押しするバブル状態となっている。

 また、この不動産バブルのもう一つの要因として、イスラエは通貨であるシェケルが強く、サブプライム危機で行き場を失ったユダヤマネーが本国に回帰しているからではないかともいわれている。しかしイスラエル政府はこの不動産バブルを、なぜか否定をしている。

2015年度「不動産バブル」ランキング第3位 : インド

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by Rohit Rath
不動産投資利回り : 2.22%

 一時期の中国がそうであったように、目覚ましい経済成長を続けるインドは、今まさに不動産バブルの真っ只中に突入している。2000年代半ばから急激に不動産価格が上昇し、不動産投資利回りは2000年代半ば当時の4分の1ほどだ。

 不動産バブルの理由は、不動産開発事業者向けの融資が年率40%の拡大を続けている一方で、逆に、高騰している不動産の過剰在庫も問題視されている。

2015年度「不動産バブル」ランキング第2位 : オーストリア

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by Miroslav Petrasko (hdrshooter.com)
不動産投資利回り : 2.18%

 意外かもしれないがオーストリアは、ヨーロッパでNo.1の不動産バブル国なのだ。奥州中央銀行の低金利政策によって、オーストリアの不動産価格が急騰。不動産価格は過去7年間で約40%上昇し、値上がり率はユーロ圏で最大だ。

 またオーストリアは、2014年度の同調査では不動産投資利回りが3.54%、ランキング16位だったのに対して、2015年度は不動産投資利回り2.18%、ランキング2位まで上がってきた。

2015年度「不動産バブル」ランキング第1位 : 台湾

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by DaveWilsonPhotography
不動産投資利回り : 1.57%

 2015年度、最も不動産バブルに沸いたのは台湾だ。台湾の不動産価格は40㎡あたり約1億円が相場といわれ、それは日本の平均価格の3倍~4倍にもなる。この不動産バブルの要因として、台湾は2002年に中国人向けに不動産投資を解禁。それが一気に不動産投資ブームに火を点けた。

 しかし、近頃の中国経済の先行きの不安や、親中路線を敷いていた国民党政権から、どちらかというと中国と距離を置く民進党への政権交代があったことで、今後の台湾の不動産バブルは先行きが不透明ともいわれている。


 では最後になるが、読者が最も気になっているであろう日本の順位はというと、なんと不動産投資利回り5.02%の42位だ。ちなみにアメリカは、不動産投資利回り3.91%の24位。

  実は日本は、世界34ヶ国が加盟するOECD(EU加盟国21ヶ国、アメリカ、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュー・ジーランド、スイス、ノルウェー、アイスランド、トルコ、韓国、チリ、イスラエル)の中でも、最も不動産が安い国なのだ。不動産バブルの良し悪しはあるが、すなわちオリンピックバブルは、まだ“期待値”の段階から抜け出せていないということなのだろう。

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