1. “世界の王者”トヨタの強者の経営戦略:強者が強者であるための術を知れ

“世界の王者”トヨタの強者の経営戦略:強者が強者であるための術を知れ

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 自動車といえば、誰もがトヨタの名を思いつく。トヨタは日本最大、そして世界最大手“世界王者”ともいえる自動車企業だ。トヨタの2014年度の自動車販売台数は約1023万台にのぼる。その自動車販売台数は世界1位である。

 そんな“世界の王者”トヨタの経営戦略は、強者の経営戦略である。本記事ではトヨタの経営戦略である強者の経営戦略について紹介する。強者は強者ゆえに、その陰でどのような努力が行われているか目にみえにくい。トヨタの実行する強者の経営戦略を知ることで、強者が強者たるゆえんが少しでも伝わればと思う。

 あなたが挑戦者であるならば、まず強者の強者たる強さを知ることが重要だ。あなたがすでにトップに近づいているのであれば、強者となっても慢心してはならない。強者が強者であるためにどのような心構えでいなければならないか知っていてほしい。

強者の経営戦略とは 

 強者の経営戦略とはイギリスにおいて、フレドリック・ランチェスターが第1次世界大戦時に導き出した戦略、ランチェスター戦略を日本の田岡信夫が経営戦略として体系化した戦略の1つである。

 強者の経営戦略は、市場占拠率1位の強者がとるべき経営戦略とされている。強者の経営戦略の基本は、ミート作戦だ。ミート(追随)作戦とは、弱者が取ってくる差別化戦略に対し、その差別化のポイントに追随して、弱者の競争優位性をなくすという経営戦略になる。

強者の経営戦略におけるミート作戦とは

 では、そのミート作戦とは具体的にどのような経営戦略をとることなのかを説明しよう。例えば、製品の差別化にミート(追随)するという方法がある。弱者が製品を差別化してきたときに同等の製品や類似品を発売し、差別化を打ち消そうとするのがミート作戦だ

 サービスや広告、販売チャンネルなどあらゆる場面で弱者が差別化をはかってきたときに強者がその差別化を打ち消そうとするのがミート作戦なのである。

 “世界の王者”トヨタが実際にこの強者の経営戦略を実行した例を紹介しよう。

“世界の王者”トヨタ:強者の経営戦略実行

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 トヨタが強者の経営戦略を実行した例として、ホンダのハイブリッド車、インサイトとトヨタのハイブリッド車、プリウスの争いを見ていこう。

“世界の王者”トヨタの強者の経営戦略実行:価格におけるミート

 2009年2月にホンダのインサイトが発売される。ハイブリッド車はそれまでの間、高級車のイメージが強かったが、それを覆す189万円という大衆車並みの価格でインサイトは発売からすぐに販売台数を伸ばした。

 これに対して、トヨタは徹底的にミートする。5月に販売予定の新型プリウスの発売前に現行のプリウスの最低価格を43万円もの大幅な値下げで約190万円とした。さらに5月の新モデルでは性能を向上させたにも関わらず、205万円という驚きの価格設定をしたのである。

“世界の王者”トヨタの強者の経営戦略実行:広告におけるミート

 さらにである。トヨタはその徹底的な価格におけるミートで終わらない。プロモーションにおいても、徹底的なミートを実行するのである。トヨタは新型プリウスのプロモーションで、寸劇やイラストを活用しながらインサイトとの違いを消費者に印象付けていった

 プリウスのハイブリッド車としての性能の高さを強調し、同じくらいの価格ならばインサイトよりプリウスを選んだ方が得だという印象を消費者に与えていった。そしてこのプロモーションにおける強者の経営戦略が功を奏し、5月の月間販売台数においてプリウスはトップに、インサイトは3位にランクダウンという結果になったのである。

“世界の王者”トヨタの強者の経営戦略実行:豊富な経営資源が武器

  以上に見てきたようにトヨタが強者の戦略を実行するには、そもそもにトヨタが強者である必要がある。トヨタが経営資源を豊富に持っているからこそ、強者の経営戦略を実行できるのだ。

  トヨタは研究開発、販売チャネル、顧客サービス、広告など経営のあらゆる局面で他社よりも優位に展開している。だからこそ、下位企業が魅力的な自動車を開発したときに、こうした豊富な経営資源を投入し、強者の経営戦略を実行できたのである。

 “世界の王者”トヨタ:強者の経営戦略実行は強者であり続けるため

 トヨタのこの強者の経営戦略の実行から見えてくるのは、小型車から高級車までフルラインを扱うトップを走る企業として、全ての車種において常にトップでなくてはならないという強者の思想である。

 特にこれから販売台数を伸ばしていく分野であるハイブリッド車というカテゴリーにおいて“世界の王者”トヨタが負けるわけにはいかない。ハイブリッド車はホンダが先行しているというイメージすら消費者に与えないようにしたのである

 さらにハイブリッド車市場における優位性を絶対的なものにするため、トヨタはプリウスを大幅に値下げすることで、弱者の参入を阻むことにもつなげる。ハイブリッド車の開発は難しく、莫大なコストをかけても必ずしも成功できるかどうか分からない市場となっている。

 必ず成功し十分な利益が上がることが約束されるのであれば参入する企業も増えるだろうが、市場価格の比較対象がプリウスになることで、莫大な開発コストの割に収益が見込みにくくなっているのである。


 ここで紹介したトヨタが実行した経営戦略は、強者のみがとれる経営戦略であり、トヨタが強者であり続けるためにとった経営戦略である。“世界の王者”トヨタという強者の強者たるゆえんが少しでも伝わればと思う。

 挑戦者であるあなたは、あなたの向かう強者が慢心してるだけの相手でないことを考えてみよう。強者に近づきつつあるあなたは、向かってくる挑戦者たちを徹底的に迎え撃つ心構えをもってトヨタのような高みを目指してほしい。

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