1. 裁判員裁判の「死刑判決」を最高裁が棄却 問われる裁判員裁判の意義

裁判員裁判の「死刑判決」を最高裁が棄却 問われる裁判員裁判の意義

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 成立から約5年が経過する裁判員制度。これは対象となる刑事裁判の第一審において選出された一般の有権者らが裁判に参加、量刑を決定する制度であり、市民の感覚や常識を反映させることを目的としている。

 これまでに裁判員裁判で下された量刑がそのまま採用されることは幾度となくあった。しかし先日、「死刑判決」を下した裁判員裁判の判決が初めて否決され、「無期懲役」に。裁判員裁判の意義が問われている。

最高裁、裁判員裁判の「死刑判決」2件とも破棄

 今回問題となったのは、2009年に起きた松戸女子大生殺害放火事件と同年に発生した東京南青山強殺事件の2件。両事件で殺害された被害者は一名であるが、その残虐性を加味し「無期懲役判決」を下すか「死刑判決」を下すかで意見が分かれた。

裁判員の判決には具体的な根拠がなく「無期懲役」に

 日本ではこれまで、四名以上を殺害した場合や特定の罪(現住建造物等放火罪・強盗殺人罪など)に当てはまる場合に死刑判決が下されてきた。しかし近年の傾向として、犯行の同期や残虐性など複数の要素を考慮した結果、被害者が一名であっても死刑判決が下されることがある。

 松戸女子大生殺害放火事件は被告が女子大生を強盗目的で脅迫、殺害した後に証拠隠滅のために現場のマンションを放火、被害者のキャッシュカードで現金2万円を引き出した事件。裁判員裁判が採用された第一審では、被告に前科はないものの、当事件発見以後に起した強盗強姦事件が11件あることや事件の残虐性を考慮、「死刑判決」を下した。

 2件目の東京南青山強殺事件は、被告が窃盗目的で被害者宅のマンションに侵入、刃物で被害者を殺害した強盗殺人事件。裁判員裁判では、被告に懲役20年判決を受けた前科があることを考慮し、「死刑判決」が下された。

 裁判員裁判で下された死刑判決に対し、最高裁は「具体的な根拠がない」ことや「被告の反社会的性格の過剰強調である」ことなどを理由に棄却を決定。最終的に「無期懲役」判決を下している。

裁判員裁判の意義とは

 この一連の裁判で問題となるのは、裁判員裁判の存在意義である。裁判員裁判は本来、一般市民の感覚や常識を判決に反映させていくのを目的としていることから、判例からも最高裁は「裁判員の判断を尊重するべきだ」という意見が多い。

 それに加えて、裁判員裁判には裁判員たちへの精神的負担がつきものである。最近では、裁判員裁判に参加したことをきっかけに急性ストレス障害を患った女性が国を提訴した事件があった。裁判員裁判は殺人罪などの重大な犯罪を扱い、裁判が行なわれる一定期間、裁判員はその事件について考え続ける。さらに、今回のように死刑判決を下す裁判における精神的負担の大きさは計り知れない。

 それぞれの裁判員裁判に関わった市民たちは「死刑判決を下したこと」と「死刑判決が棄却されたこと」の双方について動揺を隠せないでいる。このことからも、最高裁が下した判決や裁判員制度のあり方について様々な議論が伺えるだろう。


 選挙権を持つ全国民にかかわる裁判員制度。この事件をきっかけに、私たちも裁判制度の存在理由やあるべき姿について考える機会を設けてみてはいかがだろうか。

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