松田医薬品株式会社はこのたび、コロナ禍の影響等により需要が減少し、廃棄されようとする自然素材を活用した入浴剤OEMの開発・製造受託事業を開始した。
廃棄の危機にある自然素材に、同社が長年培ってきた製造技術を組み合わせて入浴剤を開発することで、フードロス課題の解決を目指す挑戦だ。
時代のニーズを掴み、その課題を解決する企画をどのように生み出しているのか?製品事業部の二宮翔さんに、企画を出し、それを実行するにあたって大切にしていることについて取材した。
廃棄の危機にあった作物を“入浴剤”に
同社は、創業70年を超える高知県の企業。創業以来「すべては健康をねがう、社会のために」という理念のもと健康産業に携わり、40年以上にわたって自然植物を活用した入浴剤の製造・開発を続けている。
フードロスを解消する入浴剤の開発に着手したのは、県内の事業者より寄せられた、やむなく廃棄されようとしている自然素材との出会いがきっかけだったという。
同社が拠点を置く高知県では、生姜や柚子など、ミネラルやビタミンを豊富に含む作物が盛んに栽培されているが、主に食用として利用されているため、コロナ禍の影響で需要が減少し、やむなく廃棄されようとしていた。
この状況を受けて、医薬品製造で培った自社の強みを活かしたものづくりに、廃棄されようとする自然素材を組み合わせて有効活用することで、フードロス課題の軽減に挑戦することにしたという。
試作を重ね、素材そのものの良さを引き出す
製品事業部の二宮さんは現在33歳。以前は関西で働いていたが、同社の入浴剤に惚れ込み、同社に入社するために高知県に移住したそうだ。
フードロスを解決する入浴剤について、二宮さんに話を聞いた。
-----実際に開発した事例や、開発に向けて挑戦した素材を教えてください。
二宮さん:まだ発売に至っている商品はないのですが、現在、高知県産の有機栽培柚子や紫蘇を使った入浴剤の開発に着手しています。
弊社では元来、柚子や生姜を配合した入浴剤の開発を行ってきましたので、弊社の長年の入浴剤開発の知見を活かした、温浴効果に優れた入浴剤を開発することに注力しています。
-----主に食用として利用されている自然素材を使って入浴剤を開発するにあたって、どのような困難がありましたか?
二宮さん:紫蘇ははじめて使う素材だったのですが、素材の香りがとても良かったので、素材そのものの良さを引き出せるように何回も試作を重ねて開発を進行している段階です。
未来をつくる“入浴剤の無償提供”に大反響
同社による、時代のニーズを掴んだ柔軟な企画はこれだけではない。
今年3月には、コロナ禍により同県への旅行を取りやめたり、自宅待機を余儀なくされた日本全国の人に向けて、同社の入浴剤を無償提供するプロジェクト「いつか、高知に、またおいで。」を実施した。
高知に来ることを楽しみにしていた人々に、せめてもの“くつろぎ”を提供し、「また改めて高知に行きたい」と思ってもらうきっかけにしてもらう、コロナ終息後の未来をつくるための取り組みだ。
-----入浴剤無料配布への反響は?また、どのような効果がありましたか?
二宮さん:1000名の定員募集だったところにおよそ8500名の応募があり、たくさんの方から心温まるメッセージやお手紙をいただきました。
ただの入浴剤製造メーカーではなく、たくさんの方に弊社の製品や高知のこと、ひいては弊社が啓蒙する入浴習慣に共感いただけたことがなによりの財産でした。
同社商品と出会い、関西から移住
-----フードロス入浴剤や入浴剤無料配布などの企画は、誰がどのように出しているのですか?
二宮さん:基本的にはすべて私が発案し、社内で実行しております。
私は元々、関西出身なのですが、冷え症に悩んでいたところ、今の会社の製品に出会い、体質が改善しました。そんな製品の素晴らしさを今度は自分で開発・発信したいと思い、約5年前に高知県に移住することを決めました。
二宮さんは同社に入社する前は、京都でECやテレビ通販などのディレクターとして働いていたそうだ。
二宮さん:地元・京都でディレクター業をしていた際に、現在の会社の製品開発長とお話する機会があり、私が筋金入りの冷え症だと伝えたところ、ある入浴剤を渡されました。
その入浴剤を使ってお風呂に入ると代謝が劇的によくなることを実感し、すっかりハマってしまいました。その後も、同社の入浴剤を使っての入浴を習慣化したところ、冷え症や、しもやけなどの長年の身体の悩みから解放されました。
「この入浴剤を販売したい」と、当時の会社(京都)でも仕入れ販売をしていたのですが、「どうせなら自分でも製品を開発し、より良い販売方法を設計して、たくさんの方にこの入浴剤の素晴らしさを伝えることができれば」と思い、気づくと高知移住を決心していました。
そうして、なんと結婚式を挙げた翌月に高知に移住したという。
「嘘のない企画」を大切に、情熱を発信
-----時代のニーズを掴んだ企画を出し、またその企画を実行するにあたって大切にしていることを教えてください。
二宮さん:企画を出すために大切にしていることは、「嘘がないこと」と「企画のためのアリバイ作りを行わないこと」です。
企画を実行するために大切にしていることは、「まずは担当者の熱を社内に波及させること」、ひいては「世の中に広く発信すること」でしょうか。
-----これらのプロジェクトを通して、貴社が実現したいことは何ですか?ビジョンを聞かせてください。
二宮さん:お風呂好きで、温泉など独自の文化がある日本。
我々は自然生薬を配合した温浴効果の高い入浴剤で、みなさんの健康な暮らしに寄与したいと考えております。
情熱を注げる商材・会社に出会い、移住・転職して、積極的にそして柔軟に素早く仕事に取り組んでいる二宮さん。
40年以上にわたって入浴剤の製造・開発を続けてきた同社の“ものづくり”と、二宮さんの情熱、そして時代のニーズが混ざり合い、今後どのような企画や商品が生まれ、高知から広がっていくのか、楽しみだ。
出典元:松田医薬品
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