<イベントレポート>プロジェクト創出ワークショップ「ignite! 2022」がスタート!

2022/05/10(最終更新日:2022/05/10)


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4月15日、八ヶ岳の麓にあるコワーキングスペース「富士見 森のオフィス」(長野県・富士見町)にて、「プロジェクト創出ワークショップ ignite!」がスタートしました。



「ignite!(イグナイト)」は、月一開催の年間ワークショップ2018年に初回、2019年に第二回が開催され、これまで60名以上の参加者が参加。ハードウェア製品の開発から子ども向けの教育的取り組み、アート・創作活動など、参加者の中からこれまで13のプロジェクトが生まれ、中には継続中のものもされています。新型コロナ禍の影響により2年間ワークショップ開催を休止していましたが、満を持しての再開となりました。


今回で3期目となる「ignite!2022」には34名の方が参加。近年移住者に人気の高いエリアとして注目されている富士見町をはじめ、遠くは関東圏や名古屋圏からも参加され、参加者の期待の広がりを感じさせます。ワークショップの運営・ファシリテーションは、Route Design代表でコワーキングスペース「富士見 森のオフィス」を運営する津田賀央、Route Designの松井彩香。メンターとして吉田将英(電通)、中島恵理(NPO法人子どもの未来を考える会 代表)。そして過去の「ignite!」で活躍した参加者8名のサポートスタッフより推進されます。


「ignite!2022」第一回目は、全体のガイダンス、ゲストメンターによる講演、そして全体ワークショップという内容。長野日報の取材も入り、地元での関心の高さもうかがわれます。以下、各セッションについて簡単にご紹介します。


ファシリテーター・津田賀央によるガイダンス:

過去2年間、やむなく「ignite!」を休止していました。しかし、過去の「ignite!」の取り組みや、森オフィスにおける人々の活動やコミュニケーションを通じて、「生きがい」をもって何か取り組むことの大切さを再認識し、そうした場の提供として「ignite!」を再開しようという思いに至りました。コロナ禍という異常状況下にありますので、細心の注意を払って運営していきたいと思います。


「Why -なぜやりたいのか?-」を重視

「ignite!」では、生まれるプロジェクトの内容や事業性以上に「Why-なぜやりたいのか?-」を重視しています。

新しく、ビジネスや社会活動といった取り組みを進めていきたいという場合に、「なぜ、それをやりたいのか?」という参加者の皆さんがモチベートされる根幹が重要だと思っています。そして、そのモチベーションを周りの人たちと共有することで、周りをも動かし、周辺や社会との良い関係性が形成されていくのだと思います。

自身の「Why」を地域や社会と関係づけるために

アイデアの創出には企画のマインドが必要です。そしてアイデアを自身の周りや地域社会とつなげるためには、地域社会の現状についても情報をえることも必要でしょう。そこで今回はその二つの観点で適切なアドバイスをしていただける2名の方にメンター役を務めていただくこととしました。

「企画メンター」として電通でプランナーを務める吉田将英さん。「地域メンター」として元長野県副知事で、富士見町でも様々な活動へ主体的に関わっておられる中島恵理さんです。

今日は吉田さんに企画者の立場から、企画の肝である「インサイト」についてレクチャーを行っていただき、その後、ワークショップとして「10年後、世界は、地域社会、あなたの生活はどのように変化していると思うか?」を皆さんで想像していただきたいと思います。

電通・吉田将英さんによる、「インサイトとメタ認知」:

企画とは複雑かつ抽象的な行為です。よくある間違いは、企画者が「自分が主体だ」という意識に陥りやすいこと、すなわち世の人(お客)は自分と同じことに関心があるはず・・。またHML病(顧客はだいたいHeavy/Middle/Light userに分けられるはず)に陥りやすい。大きなくくりで顧客をまとめてしまうことは危ういということです。



お客をとりまく情報の変化についても注意が必要です。特に、情報量の莫大な増加(ここ10年で人類史上、垂直的に増加し、現在の情報量は約44ZetaByte(Zettaは10の21乗)が起こり、お客の嗜好も極めて複雑化しています。

企画する際、「お客様に(何が欲しいか聞いてみる)という考え方がありますが、実際はお客に訊いても答えを得られることは稀です。特に「まだ無い商品・企画」について答えは得られません。自動車を開発したヘンリー・フォードには、「生活者に聞いても『より早い馬がほしい』と言われ、『車がほしい』とは答えなかっただろう」という逸話があります。

「企画」とは?「インサイト」とは?

「企画」とは、お客本人も自覚していないもの(欲求)を構造化し実現すること。そのためには、お客に、こういうものが欲しかったという気づきを与えることが重要ですし、「自分(企画者)の想い」と「生活者(お客)の想い」の両者を理想的に合わせていき、「生活者が自分のお客になる」ようなプロセスを経て、企画を決めていくことがポイントとなります。

その企画する際に、重要なのが「インサイト」という言葉です。「インサイト」とは、お客が気付いていない普遍的な欲求(人がそうする本当の訳)のことです。



たとえばイソップの「北風と太陽」が良い例。強い風で吹き飛ばして服を脱がせようと北風と、燦々と照りつける太陽光によって服を脱がせたくなるように仕向けた太陽の話は有名ですが、服を脱がせるのではなく、人が「自分で服を脱ぐ」ように動かしていくのが、対象となる人のインサイトを捉えた企画です。


インサイトを探るということは、人(お客)の行動に対して、「なぜそうするのか?」の本当の訳(インサイト)を探ること。対象に対する人の持つイメージを知ったうえで、背景にあるその人の行動心理を考えながら、新しくかつ普遍的なインサイトを見つけることで、良い企画やビジネスチャンスが生まれます。


インサイトを企画につなげるためには、企画者が自分の思い込み(バイアス)を外して、自分以外の思い込みを深く観察し、掘り起こすことが重要です。これを「メタ認知」と呼びます。人間観察のポイントは:


  1. ネガティブな気持ち
  2. 大きな世の中の気持ち(「おひとり様」の例)
  3. 自分とは別の行動習慣に着目(自分でもやってみる)


の3点です。インサイトを発見し、メタ認知を獲得し、企画につなげていくという流れになります。


次に、これから行うワークショップの考え方について。まず社会の大きな変化を想像してみます。そしてさらに限定した社会・地域社会の変化と、自分の生活の変化について仮説を考えます。そして、そうした変化で起こる価値観と、そこでのインサイトについて想像してみてください。

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最後にQ&Aセッションとなり、2件の質問がありました。


Q:インサイトについて、「誰の」の、「誰」について粒度の取り方は?粒度の取り方時点で思い込みが入りそうな気がするので教えてください。

A:ケースバイケースで粒度を考えましょう。メタファーとしてはカメラのピント合わせ。ピント合わせのように、ピントを変えながら焦点(粒度)を探り当てていく。大きなレイヤーから入るのがいいと思います。例えば「人類」から入るとか。


Q:普遍性と関係性でのインサイトについて(馬とT型フォードのケース)説明してほしいのですが。

A:T型フォードはインサイトではなく「答え」(企画そのもの)です。車がない時代、馬についての問題は「扱いが面倒」―>面倒くさい移動手段。その面倒を解決したいという普遍的な欲求(インサイト)があったわけです。それを答えとして解決したのがT型フォードだったと思います。


ワーキングタイム:


吉田さんのレクチャーのあとでワーキングタイムとなりました。レクチャー最後の、未来における社会や生活の変化について仮説を考えシートに記載し、会場周囲の壁に貼りだしました。


そして、そのシートをメンバー全員が見て、自分の共感や意見をコメントにしてポストイットで付け加えました。シートは全部で39枚となり、メンバーのいろいろなコメントがカラフルにシート周辺を彩りました。家族や社会の在り方、コミュニケーション、モノと心・・といった共通キーワードがありそうです。


各々の参加者が書いたワークシートを見ながら、お互いの興味関心などを知ることができ、初回にもかかわらず参加者の間にさまざまな会話が生まれていきました。



シート周辺に意見交換の固まりができ盛り上ったところで閉会を迎えました。次回は5/13(金)19時から、森のオフィスにて地域メンター・中島さんのレクチャーと、今回のワークショップの続きとなります。そしてお開きとなった後も、白熱の議論は続く・・・





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