HOMEビジネス 「“色”の力で、世界の常識を塗り替えろ」 福井県の塗装会社へ顧客が増え続けるワケとは【後編】

「“色”の力で、世界の常識を塗り替えろ」 福井県の塗装会社へ顧客が増え続けるワケとは【後編】

川上良樹

2024/11/15(最終更新日:2024/11/15)


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“きつい・汚い・危険”の頭文字を取った言葉として有名な「3K」。就活の軸を決めていくなかで、「3Kだけは避けたい……!」と心に誓う人は決して珍しくないでしょう。

「ポジティブ3Kを社員みんなで目指せば、誰もが前向きに働ける会社を作れます!」

そう語るのは、高級メガネで有名な福井県鯖江市にある『株式会社ワカヤマ』代表取締役社長の若山健太郎さん。

ワカヤマは、“色”の力で製品のあらたな価値を提供する「メッキ・塗装」の会社です。ポジティブ3Kを掲げてから約5年、入社を希望する若手人材がどんどん増え、売上も2倍以上を記録しているそうです。

インタビュー記事の前編では、一見すると若手からの人気が集まりづらそうな「メッキ・塗装」という業種の会社に、なぜ人材が集まるようになったのか、というお話を聞きました。

後編となる本記事では、倍増した売上に関する「なぜお客様が増えるのか?」について詳しくお話していただきました。

前編「ポジティブ3Kが、会社の色を塗り替える」・福井県の塗装会社に人材が集まるワケとは

独自技術と“色”へのこだわりがお客様を呼び寄せる

ーーーなぜワカヤマには、全国から「メッキ・塗装」の依頼が絶えないのでしょうか?

若山:いままでは”眼鏡専用”だった特殊なメッキ・塗装技術を、”色彩”を使っていなかった業界に活用しているからです。

例えば、高級ホテルのシャンプー台には、ステンレスやチタンなどのハイグレードな材質が使われています。

しかし、ステンレスやチタンは塗った部分が剥がれやすいため、一般的な塗り方では製品として成り立ちません。そうしたケースに、チタン製眼鏡に色付けする鯖江独自の技術が役立つのです。

お客様のお悩みに対応し続けているうちに、「ほかでは実現不可能と言われたものでも、ワカヤマであればできるのでは?」と、気付けば全国から多くの相談が寄せられるようになりました。

ーーーほかにも、ワカヤマならではの魅力があれば教えてください。

若山:世界中のトップデザイナーに鍛えられた色彩を作り出す技術と感性が、私たち鯖江の表面処理メーカーの強みだと思っています。

「ブランドイメージを一新したい」「とにかく売上をアップしたい」そのようなお客様の幅広い悩みを、色の力を使って解決しています。

ある日、顧客から寄せられた悩みは「製品をインスタ映えさせたい」でした。本来だと、メッキの会社に来るような相談内容ではありませんよね。

でも、我々が綿密なヒアリングと試行錯誤を行った結果、いままで黒色が当たり前だったとある製品は「明るいピンク」をまとったものへと変化を遂げました。

すると、常識破りの“色”にエンターテインメント性を感じた層からの支持が集まり、製品の売上が何倍にも膨れ上がったそうです。これはまさに、“色”で物の価値が変わった瞬間ですね。

「長い歴史のなかで洗練された物の価値」を一新するには、“色”を変えるのも一手と語る若山さん

数万通りもある調色パターンからニーズに合わせた色を生み出し、色による付加価値を生み出すことが可能

“色”がもつ可能性を広げる旅へ

ーーーワカヤマでは、常に「塗装・メッキ」に関する最新の研究をおこなっていると聞きました。

若山:はい。多様な要望に効率的、かつ幅広く応えられるようにするため、ロボットなどを積極的に活用しています。

【BEFORE】リノベーションをする前のデザインセンター

【AFTER】デザインセンターでは、日々塗装に関する最新機器の研究がおこなわれています

ワカヤマは「この製品は人の手でしかできない」と言われているものでも「本当にそうかな?」と疑問を持ち、世界に目を向けながら解決できる手段を探し続けています。

実際に、海外・日本製の部品を組み合わせて、これまでにない微細な挙動ができるロボットの実現にも成功しました。

とはいえ、まだまだ塗装職人にしかできない洗練された作業は多く存在します。そのような業務に職人さんたちが集中するためにも、ロボットがもつ可能性をどんどん広げていくつもりです。
 

AIを駆使して、不良検品をおこなう機械の研究も進んでいるそうです

【BEFORE】デザインセンター エントランス

【AFTER】デザインセンター エントランス

【BEFORE】デザインセンター工場部    

【AFTER】デザインセンター工場部 塗装ロボットの活用で熟練の職人3人が1日かけて仕上げていた作業が、入社2年目の社員1名で対応可能に

部分的に製品の硬さを調節できる特殊な3Dプリンター。図面さえあれば、すぐに塗装が可能かどうかを実際に色を塗って判断できるようになったといいます

小中学生向けのレジンを使ったアクセサリー作りのワークショップを開催。ただ作るだけでなく、それぞれが自由に色の調合まで楽しめるのがワカヤマならでは

ワカヤマがこじ開ける「世界的企業へのトビラ」

ーーー色にこだわり続けたワカヤマは、若山さんの就任後に売上が2倍以上を記録したと聞きました。これまでの道のりには、どのような苦労があったのでしょうか。

若山:大変だったことといえば、毎日かもしれません……(笑)。ワカヤマには、どこに相談しても解決できなかった悩みが多く寄せられるため、こうしているいまも常に悩み続けているのが本音です。

とはいえ、鯖江市ならではの伝統工芸や、ワカヤマが蓄積してきた“色”の知見・技術で顧客の売上やイメージアップに貢献できる喜びは、何者にも代えがたい経験です。おかげで、刺激的で楽しい日々を送れていると思っています。 

デザイナーと一緒に作ったデザインセンターのカフェスペース。カウンターは越前和紙で装飾されている

ーーー最後に、若山さんが思い描くワカヤマの未来の姿を教えてください。

若山:「世界中のどこの技術でも実現できなかった夢が、ワカヤマでなら叶えられる」。そんな企業になることが、いま私が思い描いているワカヤマの未来の姿です。

現在も、ワカヤマの可能性を最大限に広げ、新しいことにどんどんチャレンジできる部署である「ものつくり戦略室」を立ち上げるなど、常に前を向いて走り続けています。

なによりも、一緒に挑戦を続けていく社員が気持ちよく働いていける会社を作りたい。そんな思いのもと、これからも「きれい・かんたん・きもちいい」の精神で日々を楽しんでいきたいと感じています。

インタビュイープロフィール

株式会社ワカヤマ
代表取締役 若山 健太郎

1982年に、高級メガネのまちである福井県鯖江市に生まれる。
2005年にオレゴン大学卒業後、眼鏡フレームメーカーにて、一連の加工業務を経験。
2016年には、父親より株式会社ワカヤマを受け継ぐ。
「きれい・かんたん・きもちいい」を掲げたワカヤマ独自のポジティブ3Kは、社員から高い評価を得ているという。
当たり前に存在する物に“色彩”を加えて、あらたな価値を生み出すことに専念した結果、代表就任後の売上を2倍以上にアップさせた実績をもつ。

株式会社ワカヤマ

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