株式会社Integral Geometry Science(以下、IGS)は、電池の発火を防ぐ「蓄電池非破壊画像診断システム」を開発しました。
同社は、神戸大学数理データサイエンスセンターの木村建次郎教授が創業し、散乱したマイクロ波などの波動から、これまで外部からは見えなかった世界を撮影するテクノロジーを研究開発・事業化している企業です。
世界初の計算理論を用いたという「蓄電池非破壊画像診断システム」。いったい、どのような特徴があるのでしょうか。
増発する電池の発火事故を防ぐ
近年、国内ではモバイルバッテリーなどからの出火による火災が相次いでいます。
東京消防庁によると、2023年に同庁管内でのリチウム電池搭載製品からの出火は過去最多の167件。さらに、2024年6月末時点では107件発生しており、これは前年同期比の35.4%増になるそうです。
また世界でも、EVやスマートフォンなどに利用されるリチウム電池の爆発事故が多発し、社会問題となっています。
これらの発火事故は、電池の製造工程において潜在的な不良品を検出できず、そのまま市場に出回ってしまうことが原因だといいます。
電池メーカーでは、不良品検出のために検査装置を用いたエージング試験を行っていますが、これだけでは見抜けない場合もあるとのこと。
こうした問題解消を目的に、IGSは「蓄電池非破壊画像診断システム」を開発。同社が創出した世界初の計算理論により、これまでは検出不可能だった蓄電池の不良部分を見抜き、市場に不良品が出回ることを防ぐことが可能となったそうです。
「蓄電池非破壊画像診断システム」の特徴
蓄電池の不良部分可視化を実現した「蓄電池非破壊画像診断システム」の具体的な仕組み・特徴について見てみましょう。
1つ目は、「電池内部の電流密度分布可視化」。これは、電池の動作と寿命に直接的に影響を及ぼすという、電流密度分布を可視化することで故障の原因を正確に特定できるようになるというもの。
2つ目は「非破壊検査が可能」ということです。内部の電流状態を破壊せず確認できるので、検査前後で同品質が保てるようです。
3つ目の特徴となる「良品電池内部の電流ムラを非破壊で映像化」する技術により、良品電池内部に存在する電流ムラや、出荷基準をクリアできる電池に存在する極微小短絡を評価することが可能に。
ちなみに、リチウム電池などの発火原因のひとつだといわれているのが電池内部で生じる短絡(ショート)。従来は、安全性向上のためにはこの微小な内部短絡を早期発見することが重要だといいますが、そのための検査にも電池の破壊が必要だったとのこと。
しかし、今回のシステムにより電気が集中する部分が異なる色で表示され、一見して異常が判別できるようになったそうです。
同社は、「蓄電池非破壊画像診断システム」の導入は、従来の蓄電池検査における課題を解決し、高精度での全数検査も可能になることを伝えています。
<参照>
電池の発火を未然に防ぐ世界初「蓄電池非破壊画像診断システム」を「BATTERY JAPAN 二次電池展」に出展
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