HOMEビジネス 生理ナプキンディスペンサー「OiTr(オイテル)」の商品企画をした飯﨑俊彦さんに聞く 女性の心理的負担に寄り添い「あるのが当たり前」を目指すまで【インタビュー前編】

生理ナプキンディスペンサー「OiTr(オイテル)」の商品企画をした飯﨑俊彦さんに聞く 女性の心理的負担に寄り添い「あるのが当たり前」を目指すまで【インタビュー前編】

大槻由実子

2024/10/21(最終更新日:2024/10/21)


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生理用ナプキンが無料で提供されるディスペンサー「OiTr(オイテル)」。女性のなかには商業施設などで見かけたり、利用したりしたことがあるという人もいるのではないでしょうか。シンプルながらも生理のある女性なら誰もが必要とするこのサービスを商品開発したのは、実は男性なのです。

今回、U-NOTEでは、生理用ナプキンディスペンサー「OiTr」を提供する株式会社オイテルの取締役である飯﨑俊彦さんに、OiTrが誕生したきっかけや、開発時の思いなどについてお聞きしました。

「なぜ生理用品はトイレに常備されていないのか」から生まれた

―――OiTrが誕生したきっかけについて教えていただけますでしょうか。

飯﨑さん:起業にあたって、社会課題を解決するビジネスをやりたいと思ったとき、ジェンダーギャップ指数で日本の順位が非常に低いことが気になりました。

ジェンダーギャップ(男女格差)が生まれた背景には、男性は仕事をして家族を養い、女性は結婚後に家庭に入るといった固定観念が定着し、これが男女格差や性差による差別・偏見を生んでいると考えられています。

少子高齢化や人口減少が進むなか、女性の社会進出はますます重要になります。しかし、ライフスタイルの大きな変化に伴い、女性特有の健康問題が顕在化しています。特に「生理」は、心身の負担にとどまらず、経済的負担や機会損失といった深刻な影響を及ぼしていることを知りました。生理は平均で12歳頃から始まり、約40年間続きます。その間、心や体のストレスだけでなく、職場におけるパフォーマンスの低下や機会損失も発生しています。

また、生理に係る費用は約40年間で約70万円、さらに医薬品費や通院費などを含めると多い方で約200万円に達します。日本では男女の賃金格差も存在し、経済的に女性の負担は非常に大きいのです。これまでの男性中心社会によって生まれたジェンダーギャップは、健康分野にも深刻な影響を及ぼしています。

これらの現状を受け、生理を女性だけの問題ではなく、社会全体の課題として捉えるべきだと考えました。そして、私たち男性がジェンダーギャップといった不均衡の是正に寄与することで、女性がより生きやすい社会の実現に貢献できないかと思ったのです。

―――生理用ナプキンがトイレにいつもあるというのは、非常にシンプルですが、生理のあるすべての方が望んでいることだと思います。

飯﨑さん:ポイントは「トイレットペーパー同様に(生理用ナプキンをトイレに置く)」というキーワードでした。
これまでもトイレの一角に有料のナプキン自動販売機が設置されている施設はありますが、急に生理になったとき、そういった販売機がなければトイレットペーパーをあてがって、コンビニに駆け込むこともあるそうです。これは大変なことだと思います。

しかし、コンビニに行きさえすればナプキンを買えるかというと、実はレジに男性がいると買えないという女性がいます。

男性側が気にしていなくても、女性側が気になる以上は、気にならない環境を作るしかありません。だから、OiTrはトイレットペーパー同様に個室で使える仕組みにしました。

―――確かに、トイレの個室にあるというのが大きなポイントですね。同じ女性同士であっても、他の人にナプキンを買っているところを見られたくないという気持ちはありますね。

飯﨑さん:私たちも驚きましたが、実証テストを行った際のアンケートで「女性同士でも、トイレでナプキンを使っていると知られたくない」という声が結構ありました。

アンケートでは「ナプキンが出てくるときに音がしなくてよかった」という声も上がりました。つまり、ディスペンサーからナプキンが出てくる音ですら気にしているのです。特に若い女性ほどこの傾向が強かったです。

アンケートや実証テストを経て、私たち男性にはわからない負担を、生理のある方たちが抱えて生きているのだと改めて感じました。

OiTrの必要性「なかなか理解してもらえなかった」

―――今では多くの施設のトイレでOiTrを見かけますが、そこに至るまでの経緯を教えてください。

飯﨑さん:最初は、実証テストをさせてくれる施設を探すところから始めました。しかし、設置先の施設担当者は男性が多く「これは本当に必要なんですか?」という反応が多く、生理用ナプキンディスペンサーの必要性が伝わりにくかったのです。

通常のビジネスモデルでは、ディスペンサーのレンタル費用とナプキンの消耗品費を施設にお支払いいただくものですが、まだ施設側に個室トイレに生理用品を常備する必要性を理解してもらえなかったため、私たちはナプキンのコストを賄える収益源を考える必要がありました。それが、液晶画面で広告を流すデジタルサイネージのアイデアでした。

これは、タクシー広告の仕組みを参考にしました。トイレはプライベートな空間で、数分間座っている間にユーザーに広告を訴求することができます。この広告配信による広告協賛などにより生理用ナプキンのコストを賄い、無料で生理用ナプキンを提供できるような仕組みを考えました。

まずは、より多くの施設に設置して認知度を高めたいと考え、当初はディスペンサーの設置費用も施設側に負担していただかない形で進めました。その結果、設置台数が少しずつ増え、ご利用者のSNS投稿により反響も出てきました。

今では、利用施設にOiTrがあって助かったという声が多く寄せられています。特に企業では、何度もトイレに行くたびに周囲の目を気にする負担や、会議中やデスクに置いた生理用品を取りに行くストレスが軽減されていると好評です。

さらなる認知度向上のため、不特定多数をターゲットに

―――今後、OiTrを設置していきたい施設や場所はありますか?

飯﨑さん:不特定多数の方が利用する施設、例えば大型ショッピングモールやドームなどの球技場、駅ビル・空港・サービスエリアなどに設置していきたいと思っています。

特定の人向けの施設は、属性がはっきりしているため、ターゲットを絞った広告を打てるというメリットがあります。現在は企業や学校などの施設に設置いただいていますが、OiTrをより多くの方にご利用いただくために、認知度をさらに広げていきたいという観点から、不特定多数の多くの方が利用する施設を強化していきたいです。

「OiTr(オイテル)」公式サイト
https://www.oitr.jp/

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