HOMEビジネス 左利きの人に限らず、さまざまな人に使いやすい社会になってほしい 「左ききの道具店」加藤礼さん【インタビュー後編】

左利きの人に限らず、さまざまな人に使いやすい社会になってほしい 「左ききの道具店」加藤礼さん【インタビュー後編】

大槻由実子

2024/10/18(最終更新日:2024/10/18)


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普段、利き手を意識することはありますか?人口の10人に1人は左利きと言われています。左利きの人の中には、箸は左、文字を書くときは右といったように、行動によって利き手を変える「クロスドミナンス」の人も多くいます。

インタビュー後編では、左利きの人のためのオンラインショップ「左ききの道具店」を運営する加藤礼(かとう・あや)さんに、ロングセラー商品や最近人気のある商品、これまでの左利き人生で感じていたことなどについてお聞きしました。

関市の刃物メーカーと共同開発した商品

―――ロングセラーや、最近人気のある商品を教えてください。

加藤さん:定番商品としては、前編でも出ましたが当店のオリジナルアイテムである左手で書きやすい「左ききの手帳」です。日付の位置や、週間ページのレイアウトや開き方向など、左手で書く方のための工夫を詰め込んだ商品です。2020年から毎年発売し続けているのですが「一度使ったら他の手帳に戻れない」と、リピートしてくださる方がたくさんいらっしゃいます。おかげさまで2025年度版も作ることができました。

最近売れている商品では、「分解して洗える左手用キッチンバサミ」が大変好評です。私たちの会社は岐阜県各務原市にあるのですが、隣の関市が刃物の製造で世界的に有名な場所で、これは関市の刃物メーカーさんと共同開発した商品なんです。

左利き用の分解して洗えるキッチンバサミは、一般のメーカーさんだとこれまでほとんどなかったので、ぜひ一緒に作りませんかというお話をいただき、共同開発というかたちで携わらせていただきました。

―――岐阜県に会社があるからこそ実現した商品なんですね。

加藤さん:はさみや包丁など、刃物は利き手に深い関係ある道具なので、そういった刃物メーカーさんと近い場所にいられるのはすごく楽しいですし交流も多くなるので、お店にとってもプラスになっていると思います。

昔は「右手で」、今は「選べる」

―――これまでの左利き人生で感じていた疑問や不満はありますか?

加藤さん:現在、大人の左利きの方は同じような方が多いと思うのですが、子どもの頃に文字を書いたりお箸を持つのを、右手でするように躾けられた方も多いと思います。私も例外ではなく、鉛筆を右手で持ちなさいとか、右手で箸を持って食べなさいと言われ、辛い思いをしたこともありました。

――昔はそれが当たり前のような感じでしたが、今のお子さんたちではどうなっているのでしょうか。

加藤さん:今は利き手を無理に変えさせることが、脳の発達などに影響が大きいということがかなり一般的に知られるようになってきました。なので、保育園や幼稚園、小学校でも、親御さんから(右手に持たせてほしいという)特別に強い要望がない限りはそうしない施設が多いと思います。

私にも小学生の子どもがいますが、学校で使う文房具の(購入)斡旋時でも、必ず左利き用のハサミが選択肢で選べるようになっていたりするのを見ます。そういったところで、左利きを取り巻く環境は昔に比べるとぐっと良くなったなと思っています。

―――以前は右利き用しかなかったのが、左利き用も選択できるようになっているというのは、大きな変化ですね。

機能的で優れたデザインの左利き商品を海外にも

―――今後、左ききの道具店をどのように展開していきたいですか?

加藤さん:すでに開始していることですが、海外のお客様への販売には力を入れていきたいと思っています。私たちの扱う道具には日本製の優れた商品がたくさんありますので、左利きの方に使いやすく、機能的で優れた日本の道具を世界の方にお届けできたらと思っています。海外展開では「HIDARI」という名前を使っています。

―――海外の方からの反響はどうですか?

加藤さん:左利きという特性自体は国が違っても変わるものではないので、特別に日本の方と異なるご意見というのは今のところないんです。ただ、「こういう商品は見たことがなかった」と驚きの声や「とても気に入っている」という喜びの声は、まだ数は少ないですがいただいています。

左利きの人に限らず、さまざまな人に使いやすい社会に

―――サイトの見せ方で、左利きの方向けに工夫しているポイントはありますか?

加藤さん:商品写真については自社で撮影を行っていて、一般のお店さんだと右手で取りやすいように配置してある写真や、右手で持っているスタイルで撮影されていることが多いのですが、そういったものは全て反転しています。ペンの配置もノートの左側にあるとか、持っている写真も常に左手を使っています。

―――左利きの方の声として、今の社会や日常生活でもっと変わってほしいと思う点はありますか?

加藤さん:自分の体感として、昔に比べて左利きの人の存在にだんだんと気づいてもらえるようになってきていると感じます。例えば、メーカーさんの商品開発の方々も、左利きのユーザーの存在を認識した上で開発してくださることが増えてきていると思います。そういったことがもっと進めばいいなと思っています。

例えば、駅の自動改札だったら、今は右側にタッチしていますが、切符を入れなければいけなかった時代に比べたら、ずっと楽になりました。いずれはタッチもしなくて良くなる時代が来ると思うので、そういった進化がもっと進んでいけばいいですね。

左利きの人に限らず、さまざまな状況の方に使いやすい社会になっていくのがいいなと思っています。
 

左ききの道具店
https://hidari-kiki.jp/

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