HOMEビジネス 「左ききの手帳」で「選べる楽しさ」を感じてほしかった 「左ききの道具店」加藤礼さん【インタビュー前編】

「左ききの手帳」で「選べる楽しさ」を感じてほしかった 「左ききの道具店」加藤礼さん【インタビュー前編】

大槻由実子

2024/10/17(最終更新日:2024/10/17)


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普段、利き手を意識することはありますか?人口の10人に1人は左利きと言われています。左利きの人のなかには、箸は左、文字を書くときは右といったように、行動によって利き手を変える「クロスドミナンス」の人も多くいます。

今回、U-NOTEでは、左利きの人のためのオンラインショップ「左ききの道具店」を運営する加藤礼(かとう・あや)さん。ご自身も左利きという加藤さんに、「左ききの道具店」をオープンしたいきさつやロングセラー商品のこだわりなどについてお聞きしました。

「左ききの道具店」をオープンするまで

―――「左ききの道具店」をオープンするまでのいきさつについて教えていただけますか。

加藤さん:学生の頃から文房具やキッチン用品などの道具類が好きでした。私自身が左利きなのですが、いろいろな商品を試しているとやはり使いにくいと感じるものや、自分に合わないものもあり、試行錯誤しながら楽しんでいました。

2018年8月13日の「左利きの日」に「左ききの道具店」をオープンした1番のきっかけは、道具好きな左利きの1一個人として、心から楽しくお買い物ができて、「こういうのがほしかった」と思えるものがそろっているお店がなかなか見つからなかったことです。ないなら自分でやってみようと思い、オープンに至りました。

―――「こういうのがほしかった」という具体的なアイテムの例はありますか?

加藤さん:左利き用品というカテゴリーって、おもしろグッズやアイデアグッズのようにめずらしさにフォーカスされてしまうことが多く、デザインや品質が二の次になってしまっているものを見かける機会が多かったんです。それを少し残念だなと感じていました。

そうではなく「左利き用」という以前に、買って家に置きたいと思えるような素敵なデザインや品質の道具が、左利きの人でも使いやすければ最高だなと思いました。

―――「左ききの道具店」のキャラクターは、なぜシロクマなのでしょうか?

加藤さん:このキャラクターはホッキョクグマなのですが、「ホッキョクグマはみんな左利き」というイヌイットの言い伝えにちなんでいます。科学的根拠のほどはわかりませんが、その言い伝えにちなんでキャラクターにしています。このキャラクターを描いていただいたアーティストの伊藤佳美さんも左利きなんです。

「選べる楽しさ」を感じてほしい

―――「左ききの道具店」で扱っている商品のデザインでこだわっている点があれば教えてください。

加藤さん:私たちのお店では、自社のオリジナルブランド商品と、既存のメーカーさんから仕入れをさせていただいている商品の2種類を取り扱っています。

左利き用の道具は、「あればラッキー」というパターンが多く、あっても色が1色しかないなど、種類を選べないことがよくあるんです。「選べる楽しみが少ないな」と個人的に思っていたので、お店で扱う商品では左利き用であったとしても、選べる楽しみを味わっていただけたらと思っています。

そのため、できるだけ色のバリエーションをたくさんそろえるようにしています。実際、私たちの取り組みに対して共感してくださるメーカーさんもいらっしゃって、最初は1色しかなかった商品が2色、3色と色を増やしてくださったりすることもありました。

―――とくに文房具や日用品は、色選びが楽しかったりしますよね。

加藤さん:何色にしようかと迷うのも、買い物の楽しみの1つだと思います。
当店の看板商品である「左ききの手帳」も、毎年5色展開しています。皆さんがSNSで「何色にしよう」と迷ってくださっているのを見るのが私は楽しくて、バリエーションを作ってよかったなと思います。

「左利きあるある」でよく聞くのは……?

―――実際に利用者の方とお話ができるポップアップショップを各地で開催されていますが、そこではどういった声を聞くことが多いのでしょうか。

加藤さん:普段、オンラインやSNSでコミュニケーションを取ってくださっているお客様が実際に会いに来てくださって「いつも見ているよ、応援しているよ」とエールを寄せてくださることがあります。

あとは、お子さまが左利きで親御さんは右利きという場合、これからどうすればいいのか、どういうものが必要になるか、といった相談を受けたりすることもあります。あとは、「左利きあるある」の話で盛り上がることもあります。

―――「左利きあるある」でよく出る話はありますか。

加藤さん:そうですね、左利きさんが使いにくい道具として出るのは、横口のスープレードルです。

なので、私たちのお店では、左利き専用の横口スープレードルと、両方に注ぎ口がついたものの2種類を取り扱っています。実際に手に取られて、「右利き用のスープレードルを使うのが本当に苦手」という話をされる方が多いですね。

スープレードルは当店のオリジナル商品ではないのですが、私たちが1番おすすめしている、両方に注ぎ口があるレードルは左利きのシェフが監修されたそうです。そのため、余計に思い入れの強いアイテムになっています。

―――右利きの人間からすると、それは教えてもらわないとわからないことでした……。

加藤さん:お連れ様の右利きのお友達や、ご夫婦でどちらかが右利きの場合は、商品棚の前で「こんなところが本当に不便なんだ」と盛り上がっているのをよく見かけます。

―――実際の商品を見ながら、一緒にいる右利きの人に左ききの人の感覚を知ってもらえるのも、ポップアップショップの効果なのかもしれませんね。

加藤さん:右利きの方は利き手を意識する機会自体が少ないと思いますので、右利きの方から「初めて左利きさんの感覚に気づくことができて、すごく発見があって楽しかった」と言ってくださる方もいらっしゃいます。


左ききの道具店
https://hidari-kiki.jp/


インタビュー後編では、加藤さんにロングセラー商品や最近人気のある商品、これまでの左利き人生で感じていたことなどについてお聞きしました。

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