HOMEビジネス 「この資格を作ったの、私です」 老舗企業の若手社員が前向きに働き続ける理由とは【前編】

「この資格を作ったの、私です」 老舗企業の若手社員が前向きに働き続ける理由とは【前編】

川上良樹

2024/10/09(最終更新日:2024/10/09)


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「気付けば、仕事に行かなくて良い理由ばかりを探す自分がいる」

仕事にやりがいが見出せず、消費していくような毎日。会社へ向かう足取りが重くなっている自分にも、なんだか嫌気が差してしまいます。

そんな“明日の仕事が憂うつすぎる”人を作らないため、独自制度を開発し社員のモチベーションを高め続けているのが、菊川工業株式会社です。とくに、社内でオリジナルの資格を作成・取得ができる「社内資格制度」が人気を博しているといいます。

今回は、総務部の広報チームに所属する渡邉 瑞貴さんに、菊川工業が実践している取り組みをお聞きしました。

また、社内資格を26保有している、制度開始以来のトップクラスの記録を持つ渡邉さんが培った“明日の仕事を好きになる”方法についてもインタビューしています。

      インタビュイープロフィール

      渡邉 瑞貴さん
      入社5年目
      菊川工業株式会社 総務部 広報チーム

資格がないなら作ってしまおう

ーーー初めに、社内でも人気といわれている「社内資格制度」が、どのような制度なのかについて教えてください。

渡邉 瑞貴さん(以下、渡邉 ):「社内資格制度」は、業務に必要な知識・スキルの習熟度を認定する目的で作られた菊川工業オリジナルの制度です。社内限定で用意された200以上の資格のなかから、自分にプラスになるものを自由に取得できるのが魅力です。

たとえば、設計技術のような現場で活躍する社員向けのものや、事務職が取得しやすい経理知識などの資格も認定されています。現在、社内資格の取得率は90%を超え、取得件数は1,500にも及ぶほどの盛況ぶりです。

そして、社内資格制度が人気の理由には、“資格を社員みずから作れる”ことが挙げられます。

ーーー社員が資格を作れることについて、詳しく教えてください。

渡邉:社内資格制度は、会社が用意した資格をなぞるだけの制度ではありません。社員みずから資格を作り、それが社内審査で認められれば、正式な資格として登録される仕組みが用意されているのです。

さらに、社内資格を取得した社員には、難易度に応じて月々の資格手当が支給されるのも嬉しいポイントです。資格が自己啓発やキャリアアップの指標としても機能していることから、社員のモチベーション向上につながっています。

ーーー社員が資格をゼロから作っていくことなどできるのでしょうか?

渡邉:はい。私は入社2年目のときに、所属する広報チームに関連した資格を作った経験があります。

資格の作成は、本当にゼロから作っていきました。試験内容はもちろん、制限時間の設定や解答用紙の作成など、細かいところまですべて自分で決めていかなければなりません。

初めは、外部の類似資格や関連書籍などを参考にしながら、少しずつ形を作っていきます。その後、先輩や上司に方向性が間違っていないかアドバイスを受けつつ、完成へと近づけていきました。

結果、資格取得に向けて勉強することで、広報のことを体系的に学べる資格を誕生させることができました。

資格を軸にチャレンジへの扉が開く

ーーーなぜ入社2年目にして、みずから資格を作ろうと思ったのでしょうか?

渡邉:入社当時の広報チームは、私含めて3人しかいない比較的新しい部署でした。社内資格制度は当時から存在していたものの、まだ広報に特化した資格がほとんど整備されていない状態だったんですよね。

広報の専門知識やスキルを得るために日々奮闘するなかで、自分が学んだことを教えるような形で反映させれば「まだまだ新人の私でも資格が作れてしまうのでは?」と思ったのがきっかけです。

むしろ、前例がなかったことはラッキーだったかもしれません。とにかく自由な気持ちであれこれ考えられたので、資格を作っているあいだは楽しくて刺激的な時間を送れていたと思います。

ーーーそんな渡邉さんは、社内資格を現在26個取得されているとか。

渡邉:はい、私も積極的に社内資格の取得に挑戦しています。例えば、画像編集ツールの使い方や、情報セキュリティの知識を問われるものなど、広報の知見を高められる資格を取得してきました。

菊川工業には、「社内資格をどんどん活用していこう!」という前向きな空気が流れているように感じます。誰かのチャレンジをお互いに称賛し合う風土のなか、とにかく私も前向きに行動を続けた結果、社内トップクラスの資格数を保有するまでになりました。

社内のルールは変えていくためにある

ーーー社内資格制度のほかに、会社の独自の取り組みで面白いものはありますか?

渡邉:社員が感じる「もっとこうした方が良いのに……」をそのままにしたくない菊川工業では、社内ルールすら自分たちで作れてしまいます。会社にとってプラスになると認められれば、社員の考えたルールが社内共通の認識として機能するようになるんです。

現在社員が積極的におこなっているのは、手順書をいまの時代に合ったものに変えていくこと。みずからルールを変えていける認識が全員にあるおかげで、効率が悪い方法のままなんとなくやっている仕事も、社員の手でどんどんブラッシュアップされていっています。

「STUDIO K+(スタジオケープラス)」と呼ばれるショールーム。社員が自主的に運営をしており、金属素材を使ったアート作品やサンプルなどの展示をしています。 引用:菊川工業株式会社

「STUDIO K+」に飾られたブロンズ材の将棋セット

10月10日(木)午前7時掲載の後編では、大変な状況のなかでもチャレンジを続けた結果、いまは前向きに働き続けられていると話す渡邉さんに、明日の仕事が楽しみになる秘訣をお聞きしています。  

菊川工業株式会社

菊川工業株式会社は、金属工事をはじめとする装飾建材の設計・製造・施工を手掛ける企業。東京都墨田区菊川へ本社を置く。

東京スカイツリー展望回廊や、ブルームバーグ欧州新本社ビル、お台場にあるフジテレビの球体展望台など、多数の先進的な建築物の金属製内外装工事を手掛けた実績がある。

難易度の高い形状・加工を実現する技術力は、国内外から高い評価を得ているという。老舗企業でありながら「社内資格制度」などのオリジナル制度を多数打ち出し、社員のモチベーションアップにつなげている。

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