駐車場のシェアリングサービス「アキッパ」を提供するakippa株式会社は、累計会員登録者数400万人を誇る同サービスを運営する企業です。
この企業の創業者で兼代表取締役社長CEOを務める金谷元気氏は、高校卒業後、22歳までJリーガーを目指していたといいます。
そんな彼が24歳で起業し、サービスや会社を成長させるまでの物語はどのようなものだったのでしょうか。
今回U-NOTE編集部では、金谷氏にインタビューを行いました。
前編に続いて後編では、上場企業で1年半でマネージャーになり、退職。その後、起業からさまざまな事業に挑戦して得た「アキッパ」での成功までの道筋と、金谷氏の夢についてもお聞きしています。
自分の目標から逆算した思考で目標設定をする
金谷氏は、起業をすると決めてサッカーを辞めたあとは、フルコミッションで成果が出ていた同業種の営業代行系の上場企業に就職しました。
「しっかりとした会社とはどのような形なのかを学びたいとの思いもあり、同じ年の新卒の人と同じタイミングで入社しました。
数値の目標を達成すれば昇進するという決まりがある会社だったので、営業で成果をあげ、当初の予定通り1年半でマネージャーにまで昇進し、退職しました。
1年半でのマネージャー昇進は早いと思われるかもしれませんが、意識が周りとは違いました。
個人事業主として営業を経験し、起業を決意した上で企業に入っていたので、他の社員とは考え方から違いましたね。
その会社でどう昇進するかという視点ではなかったので、目標設定にも自分なりの考え方を持っていて、上司が設定した目標を驚かせる形で達成することを常に考え、1カ月のノルマをどうやって3日で達成するかというムーンショット的な思考で取り組んでいました。
1カ月で売上100万円を目指すという人に対して、3日でやろうと思った人は行動が変わるじゃないですか。
※「ムーンショット」とは、前人未踏で非常に困難だが、達成できれば大きなインパクトをもたらし、イノベーションを生む壮大な計画や挑戦のこと。
昇進がそもそものゴールではなく、その先の起業にゴールがあるからこそ、上司から与えられた目標はもう当たり前に超えて、上司をどう驚かせるかを意識してそれを常にやっていました。
上司は起業家じゃないから、自分の目標から逆算した思考で目標設定しないといけないなと」
起業からさまざまな事業に取り組む
その後、起業するために法務局に相談しに行くと、株式会社の設立には20万円ほどかかると判明したため、手元にあった5万円ほどで起業できる合同会社を1人で立ち上げたそうです。
当時、1円起業(資本金1円で起業すること)が流行っていたといいます。
それが2009年、金谷氏が24歳のときでした。金谷氏が設立した合同会社ギャラクシーエージェンシーは、個人事業主として行っていた営業代理を祖業としました。
当初は、ソフトバンクの3次請けとして、法人向けの携帯電話の営業代行をしていたそうです。法人の休日となる土日休みなどは、個人向けのインターネット回線販売代理も行っていたんだとか。
「営業代行の強みも生かし、『これ儲かりそうやな』『これ面白いな』という事業を立ち上げていましたね。
なので、求人サイトもそうですし、サッカーニュースサイトや規模の大きなフェスをやったりとかしました。
求人だと1,000件以上を売ってましたし、サッカーニュースサイトもいいときは100万PVぐらいありました。
営業は得意だったので、どの事業もある程度かたちになったものの、共通しているのはどれもたいして儲かってはないということです。
ビジネスの構造として、そんなに優れていたわけではなかったですね。
そうしたなかで、会社の成長速度を線形状から非線形に変えたいとの思いやあこがれから、テクノロジーを使ったビジネスを始めました」
2012年にはベンチャーキャピタルから6,500万円の資金調達を行い、成果型アルバイト求人サイト「リバイト」やオンデマンド出版サービス「GalaxyBooks」を開始しました。
「まだ出資で6,500万を調達したころには、会社のお金に余裕がなくてぼくは必要な分だけを会社からもらってギリギリの生活を続けていました。お金もギリギリで、忙しくて仕事に集中する生活をしていると、自宅のポストもなかなか開けないんですよ。
ある日の夜遅くに出張から帰宅すると、電気を止められてしまったことに気づいて、そのときに電気は必要不可欠だとシンプルに思ったんです。
まさに電灯とか電気ってすごいなと思って、そこで「“なくてはならぬ”をつくる」を(会社の経営理念として)掲げて、そういうサービスを作ろうと思いました」
その後、金谷氏はなくてはならぬサービスを、生活の困りごとを解決するサービスと定義し、社員みんなで生活の困りごとを200個挙げたそうです。
そのなかの困りごとのひとつとして、「駐車場は現地に行ってから満車だと知るので困る」というものがあったといい、この課題をなくすために「アキッパ」が誕生しました。
「アキッパ」は、契約されていない月極駐車場や個人宅の車庫・空き地・商業施設などの空きスペースにネット予約して駐車でき、誰でも簡単に駐車場をシェアできるサービスです。
これまでの事業と比べても、「アキッパ」が成功した理由として、
「ミッションを策定してそこから逆算して見つけた事業だったというところと、DeNAから出資を得たっていうのが大きいですね。
そこで、どうやってプロダクトを作るのかとか、どうやってユーザーを集客すればいいかとかを教えてもらって学んだことも大きかったですね」
と語りました。
2040年に「世界最大のモビリティプラットフォーム」の実現
累計会員数が400万人を誇るサービスとなった「アキッパ」。このサービスの今後としてどのようなものを展望しているのか、金谷氏にお聞きしました。
「まずは、akippaのミッション『“なくてはならぬ”サービスをつくり、世の中の困りごとを解決する』、ビジョンである『リアルの“あいたい”を世界中でつなぐ』の達成に向けてやるべきことをやるということですね。
2040年までに『世界最大のモビリティプラットフォーム』になるという目標に向けて、コミットしたいなと思っています。自動運転のプラットフォームとしての構想もあります」
稼いだお金を投資して貧困をなくしたい
「アキッパ」事業以外のところで、金谷氏が成し遂げたいことについては、
「これはakippa株式会社としてというより、個人的な人生のミッションです。
そのために、アキッパを大成功させる必要があります。akippaのミッション・ビジョンは世の中をより良くするので、まずはここに集中して、将来的に個人的なプロジェクトをやりたいです」
と前置きしたうえで、
ビル・ゲイツが実践する『与えるために稼ぐ』という考えにめちゃくちゃ共感しています。『効果的な利他主義』で、本当に必要な人に寄付しているんです。
寄付の多いアメリカでも、寄付額のうち数%しか貧困層に届いてないという現実があるんですが、本当に困っている貧困層にちゃんと分配できるプラットフォームを作って、いつか貧困をなくしたいんですよ。
ぼくは、あまり欲がないんです。例えば1億円稼ぐのと10億円稼ぐのはぼくからしたら一緒です。
休日も、音楽フェスやライブ・サッカーの試合を見に行ったら、満足です。だから、お金だけではモチベーションは沸かないです。
一方で、自分が生まれてきた意味やこれからの自分にできることを考えたとき、『 スティーブ・ジョブズよりも、歴史に名を刻む人になりたい』と思って、それを実現するにはこれしかないと思っています。
自分がずっと生活に困っていたという原体験もありますしね。
歴史に名を刻みたいことと、自分の原体験から実現したいという思いから貧困をなくすプラットフォームは本当にやりたいですね」
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