日本の感染症法では4類感染症に分類されているエムポックス。アフリカ東部・南部での感染拡大が深刻化しているといいます。
公益財団法人日本ユニセフ協会(以下、ユニセフ)が、感染拡大を受けてその発生状況を伝えています。どのような感染症なのでしょうか。
エムポックスとは?
エムポックスは、サル痘ウイルスによる急性発疹性疾患で、ヒトと動物が感染します。潜伏期間は通常7~14日だといい、発疹・発熱・倦怠感・リンパ節の腫れなどの症状が現れます。多くは2~4週間ほど症状が続いた後自然に回復。重症化するケースもあるようです。
2022年7月には、WHO(世界保健機関)が国際的な公衆衛生上の緊急事態を宣言した後、感染者は減少。2023年5月に「緊急事態に該当しない」と伝えられましたが、8月14日には2度目の緊急事態を宣言しました。
誰にでも感染するリスクのある感染症であり、国立感染症研究所によると、日本国内においては240例が報告されているそうです(2024年2月25日現在)。また、2022年38週以降は海外渡航との関連がない症例が主だといいます。
WHO|エムポックス (サル痘 : Mpox) を国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態と宣言 (WHO)
厚生労働省|エムポックスに関するQ&A
国立感染症研究所|エムポックスとは
アフリカ東部・南部での感染状況
ユニセフによると、アフリカの東部・南部ではその発生状況は深刻化しているようです。
コンゴ民主共和国では、WHOによると15,000人以上に感染の疑いがあり、そのうち537人が亡くなっているといいます。
「クレードIb」と名付けられた変異株が登場し、あらゆる年齢層で感染の危険性があるとされ、幼い子どもの間での集団感染のリスクが懸念されているようです。
ブルンジ共和国・ルワンダ共和国・ウガンダ共和国・ケニア共和国・南アフリカ共和国の5カ国で200件以上の症例を確認されたとユニセフが報じています。
感染者の6割が子ども・若年層だというブルンジ
地域全体でもっとも多くの感染が報告されたというブルンジでは、8月20日時点で49地域のうち26地域で170例の感染を確認。その罹患者は20歳未満の子どもと若者が60%近くを占め、5歳未満の子どもは21%に及ぶそうです。
また、はしかの集団感染も同時に発生しているといい、子どもたちへの危険が高まっている状況だと伝えられています。
検査キットや医薬品の不足、地域住民の認識の低さ、高額な運営コスト、必須保健医療サービスの中断リスクなど、複数の課題に直面し、早急な対応が行えていない状況だといいます。
複合的な危機に見舞われるアフリカ諸国
疾病の直接的な影響だけでなく、エムポックスの集団感染による「偏見」「差別」「学校教育・学習の中断」といった二次的な影響をユニセフは危惧しています。
また、ケニア・ブルンジ・ウガンダでは、干ばつや洪水などの非常事態が発生しているようです。
ユニセフの東部・南部アフリカ地域事務所代表のエトレバ・カディリ氏は「子どもたちの保護とウェルビーイングを担保するために、全力を尽くしリソースを集中させることが求められています」と述べています。
人道団体や保健機関が支援を
ユニセフは、WHOらと協力して地元コミュニティの支援など、エムポックスの集団感染の対応に尽力しているといい、1,650万米ドルの資金協力を国際社会に呼びかけています。
また、移民や避難民、国境付近で暮らすコミュニティを支援する国際移住機関(IOM)や、国際NGOワールド・ビジョンなども支援の手を差し伸べているようです。
<参照>
アフリカ東部・南部でエムポックス集団発生-脆弱な子どもへの深刻な脅威【プレスリリース】
東部・南部アフリカにおけるエムポックス(サル痘)感染拡大の緊急対応に協力を 国連IOMが1,850万ドルを要請
エムポックスは子どもたちにとって命に関わる深刻なリスク。国際NGOワールド・ビジョンが警鐘
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