人材紹介・人材派遣などのサービスを提供するアデコ株式会社(以下、アデコ)は、8月22日に「AI時代の経営層のリスキリング」をテーマとしたメディア関係者向けイベントを開催。
アデコ代表取締役社長・平野健二氏が、人工知能技術の研究開発などを行う東京大学松尾研究所出身の研究者・今井翔太氏とともに、AI時代における経営者のAIに対する向き合い方やリスキリングの重要性などについて解説しました。
60の国と地域で事業を展開する人財サービスのグローバルリーダー「The Adecco Group」であるアデコは、企業の多岐にわたる業務を最適化するソリューションを提供しています。
経営層におけるAI導入や活用の現状
平野氏は、生成AIの普及が進んでビジネスの多くでAIが活用されている一方で、まだAIの導入が進んでいない企業も存在すると指摘。
その要因の1つとなっているのが「経営層のAI格差」だといいます。
同社は2023年10~12月にかけて、経営層のAI導入・活用に対する意識調査「AIによるディスラプションを乗り切るには」を実施。世界9カ国の経営幹部レベル2,000人に対して調査が行われ、61%のビジネスリーダーはAIが業界を大きく変えると期待しているという結果になったそうです。
しかし、現状は、COO(最高執行責任者)やCHRO(最高人事責任者)などの実際に業務執行に携わるリーダーと比べて、CFO(最高財務責任者)・CEO(最高経営責任者)はAIがもたらすビジネスチャンスに慎重だといい、世界の経営層の約6割が自社の経営チームのAIスキルや知識に自信を持てていないそうです。
なぜリスキリングが重要なのか?
さらに、経営層におけるAIへの理解の欠如は、従業員のリスキリングの遅れにもつながるとのこと。
今井氏は、どの時代でも適応や変化が必要とされてきたことを踏まえながら、生成AIの登場により本格的にリスキリングが必要な時代になったといい、「かなりシリアスなものだと捉えておくべき」と述べました。
この背景として、従来は人間がこなしてきていた金融アナリスト・イラストレーター・研究職・事務職など「ホワイトカラー」と言われている職種などの幅広い分野において、AIに代替されてしまう可能性を指摘。どうしても「自分のやっていることを変化させなければいけない」事態が起きてしまうとのことです。
研究者である今井氏本人も、自身の業務はどこかで変わってしまう可能性もあると考えているとのこと。実際に、「AIサイエンティスト」というAI手法の登場によって、論文を読み、提案を考えて発表する過程の8割程をAIができるようになったそうです。
AIを学ぶには、何から始めるべき?
スキルギャップを埋める最善策は、平野氏によると「組織の内発的動機付け」とのこと。従業員を促す外発的な動機ではなく、“なぜリスキリングの必要性があるのか”を当事者たちが理解し、より主体的に取り組む必要があるといいます。
同社では、管理者向けに適用のトレーニング、社員・リスキリング対象者向けにはチェンジマインドセットのワークショップを実施し、より主体的に取り組める状態を目指し、内発的動機を持てるような取り組みをおこなっているそうです。
今井氏は、生成AIが事実とは違う情報を生成する「ハルシネーション」を起こしたり、データの取得時間によってリアルタイムの事象には対応できなかったりすることがあるもので、メディアからつまみ食いした情報をもとに業務で使おうとすると失敗することもあるため、まずは「体系的な知識を身につけることが非常に重要」とアドバイスしました。
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