『なぜ働いていると本が読めなくなるのか(集英社新書)』。大ヒットとなった書籍の著者・三宅香帆さんに、インタビューの前編では、働いていると本が読めなくなる原因と問題を聞きました。
全3回にわたってお届けする本インタビュー記事、第2回となる中編では、「そもそも本は読まなくてはいけないのか」「働いていて本が読めなくなった人はどうしたら良いのか」を聞きました。
前編「働いていて本が読めないのは、あなたのせいじゃない 『花束みたいな恋をした』の麦くんたちに伝えたいこと:『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』著者・三宅香帆さんインタビュー【前編】」
本って読まなくてはいけないの?
―――タイトルは『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』ですが、触れる時間が減っていて問題なのは本だけに限った話ではないんですよね。
本に限った話ではなくて、文化とか趣味全般ですね。たとえば、映画とかスポーツを見るとか家族との時間を持つとか、何でもいいんですけど、仕事以外の文脈をもっと自分のなかに作ることが大事だと思っていて。
働いていると、経済的な合理性とか競争以外のものが犠牲になりがちという問題に対してどうしていくかということですね。
―――本を読まないことはまずいことだと思いますか?
本を読みたくない人が本を読まないのは全然悪いことだとは思わないです。そういう人も全然いると思います。私はブロッコリーが苦手なので一切食べないんですけど、悪いと言われても……というのと同じで。
―――人から直接話を聞くとか、イベントに参加するとか、さまざまな文脈に触れる方法はたくさんありますね。
そうですね。私が本を勧めているのは、図書館とか書店とか、Kindleなどの電子書籍もありますし、意外と読書は時間とお金に制約されづらい趣味だなと思っているからですね。
あと、1人で楽しみやすいし、種類が多くて、さまざまな時代から選べますし、自分に合ったものが見つかりやすいメディアだなと。なので、文字を読むのが苦痛でないという1点さえあれば、自分にしっくりくる文脈が見つかりやすいメディアだなと思っています。
日本は読書教育がかなり盛んで、文字を読むのが苦痛じゃない人が多いですし、自分自身も好きなこともあって勧めています。ただ、かならずしも本じゃなくても良いとは思っていますね。
働いていて読めなくなってしまった人へのアドバイス
―――本を読みたいけど、働いていて読めなくなってしまった人に対してアドバイスはありますか?
本のなかにも書いてある通り、書店に行って、自分が普段行かない棚も回って自分の気になる本を1冊選んでみることをおすすめしています。
小説や漫画の棚とかにみなさんは行くかもしれませんが、意外と実用書とか、あるいは人文書とかの棚に、「自分の知りたい分野ってここに詰まってたんだ」と知ることができる体験があったりするんです。特に大きな書店さんだと、体験できる確率も上がりますね。
―――(前編で)働いていて本が読めないのは社会のせいだという話をされましたが、個人でできる対策はありますか?
やっぱり文脈を増やすことかなと思っています。仕事にどっぷり浸かってると、仕事に関係する本しか読みたくなくなってくるんじゃないでしょうか。
仕事以外の趣味を作ってみたり、仕事以外の友達と一緒に飲んでみたり、あるいは近所の人と交流してみるとか。仕事でかかわる人たち以外と話してみると、そこから興味のある分野が広がって、読みたい本も見つかったりするんじゃないかなと思います。
最後の第3回では、ChatGPTなど生成AIが発展していく時代の「働き方改革」、長時間労働が母娘の関係にも及ぼしている問題について語ってもらいます。
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