世界的に解決すべき問題とされている食品ロス。東京都では、2030年までに食品ロス量を2000年度(約76万トン)より半減させる目標を掲げています。
飲食店で廃棄されてしまう食品を少しお得な価格で「レスキュー」できるフードシェアアプリを利用したことはありますか?
インタビュー後編では、国内最大級の食品ロス削減サービス「TABETE」を運営する株式会社コークッキング取締役COO・篠田沙織さんに、「TABETE」を利用した飲食店の意外な効果や、食品ロスに対し消費者がすべきことについてお聞きしました。
インタビュー前編はこちらから。
「TABETE」を使って売り上げが増えたという声も
―――2024年の今だからこそ、飲食店側に思うことがあれば教えてください。
篠田さん:食品ロス削減を経済的にも十分にインパクトがある課題として認識していただくことではないでしょうか。「TABETE」以外の取り組みも含めてトータルで考えていただきたいです。
社会的には食品ロスに取り組むことが当たり前になってきたのですが、まだ経営課題としての優先度は低い状況だと感じています。
その理由として、食品ロスを改善しても経済的なインパクトが小さいと考えられていることがあげられます。多くのお店では廃棄率を全体の売り上げの3〜10%程度に設定しているので、そこを改善しても売り上げや利益に大きな影響はないため、優先度が低いのです。
しかし、弊社では食品ロスに取り組むことは経済性にもインパクトがあると考えています。消費者に対する食品ロスに取り組んでいるブランドイメージや、選ばれる企業になることで来店客数やブランドイメージの向上につながるからです。
「TABETE」を通して新規のお客様が来店する効果もあります。
店頭での値下げでは、もともと定価で買うはずだったお客様が値下げ商品を買ってしまうため、客単価が下がりますが、「TABETE」では、新しいお客様がお試しに来店するので、来店客数も増え、その後の通常来店にもつながるので、新規の顧客獲得のマーケティングとしても使えると思っています。
―――実際に「TABETE」を登録してから新規のお客さんが増えたといった声はあるのでしょうか。
篠田さん:「TABETE」を導入して来店客数が増えて売り上げが上がった、食品ロス活動として導入したけれど、新しいお客様に来店してもらうきっかけになったというご意見は多くいただいています。
(キャプション)「TABETE」ユーザーに聞いた購買行動の変化に関するアンケート結果
「TABETE」で来店するお客様の20%が新規顧客で、そのうち64%がその後の通常来店につながっているというアンケート結果も出ています。
「TABETE」のユーザーの7割は30代から50代の女性なのですが、食品ロスに対する関心も高く、お得感だけではなく、お店の味やサービスを気に入ってファンになってくれることが多いです。
20代のユーザーが少ない理由とは?
―――7割は30代から50代の女性とのことですが、20代の方はどれくらいいるのでしょうか。
篠田さん:エリアにもよりますが、全体で20代の方は約17%くらいです。
20代のユーザー数はまだ少ないと感じています。10代、20代の方々にも使っていただきたいのですが、決済方法がクレジットカードだけでPayPayなどのコード決済サービスなどでの支払いができないというのがハードルになっていると考えています。
今後、決済手段の拡充についても対応していくつもりです。
―――決済方法以外にも、今後10代から20代の方に「TABETE」をもっと使ってもらうための施策を何か考えていらっしゃいますか。
篠田さん:PayPayなどのコード決済サービスが使えるようになったタイミングで、ブランディングを含めた発信を行いたいと考えています。
また、今後は単身者や学生向けに、お弁当やお惣菜など1食分の商品のラインアップを増やしていこうと考えています。
「TABETE」は基本的に福袋形式で出品されるため、1人暮らしの人には量が多すぎて食べきれないという意見があります。現在、出品される食品の6割がパンで、残りはケーキやホテルビュッフェなので、2人以上の家庭での利用頻度が高いと感じています。
「消費期限が近いから安くして当たり前」という意識を変えてほしい
―――一方、私たち消費者は、食品ロスについてどのような行動をしていけばいいと思われますか。
篠田さん:まず、消費意識をどう変えるかが重要です。お得だからといって、安いものばかりを買い続けると食品ロスは変わらないと考えています。
食品ロスの根本の原因とは、「いつでも買えるのが当たり前」という意識なんです。
その上で、「消費期限が近いから安くて当たり前」という考え方でいると、結果的に売り手にしわ寄せがきているのに気づかず、どんどん売り手側の首を絞める結果になります。
まず、なぜ食品ロスが発生してしまうのかについて考えることから始めてほしいです。
そして、食品ロスが発生して、「レスキュー」をするときにも、値引きの背景を知った上で、どうしたら作り手にちゃんと利益が残るのか、持続可能な価格で取引ができるのかというところまで考えた上で、取引をするのが重要だと私たちは考えています。
なので、「消費期限が近いから安くて当たり前。もっと安くして少しでもロスを減らした方がお互い幸せだ」という考え方はちょっと違うと考えています。
消費者の方も、自分たちが大切にしたいと思っている作り手、お店の方々がちゃんと経営を続けられるような買い方を考えてほしいです。そうしないと、コロナ禍のように、自分の好きなお店やサービスがなくなってしまうということが続くと思うので。
―――確かにコロナ禍のとき、閉店のニュースを知って惜しんだお客さんが殺到するというニュースをよく見ましたが、それではもう遅いんですよね。
篠田さん:そうなんです。普段からお店のためになる消費の仕方を考えることが大事なんです。そういう視点でいれば、「消費期限が近いんだから、無料同然で売ってほしい」という主張にはならないはずなので。
なので「TABETE」には、どういう理由で今回は廃棄になってしまいそうなのか、「出品理由」を必ず書いていただいています。例えば「新商品で需要が読みづらかった」「イベントが突然中止になってしまった」など、いろんな理由があります。
その理由も知った上で、「助けに行かなくちゃ」という意識で「レスキュー」していただくことが重要だと思っています。
この物価高の中、消費者にとって値引きが必要だということは理解しています。ただ、過剰な値引きを要求するのではなく、「お店に対して貢献できた」という喜びを感じられるようなサービス設計を(株式会社)コークッキングでは大事にしています。
クリスマスだけでなく、猛暑日も「レスキュー依頼」が多くなる
―――「TABETE」でうまく「レスキュー」するコツを教えてください。
篠田さん:「TABETE」にログインし、自分の行動圏内のお店のお気に入り登録をしておくと、「レスキュー依頼」がプッシュ通知で届くので、立ち寄りやすくなります。
季節でいうと、1番はクリスマスです。クリスマスケーキの出品数が1番多いので、12月25日、26日あたりにぜひご協力いただけるとうれしいです。また、まさに今のような猛暑日だと、パンやケーキが売れにくくなり出品が増えるので、この時期もご協力いただけるといいと思います。
―――「TABETE」が、今後社会の中でどのような存在になれば良いと考えていますか。
篠田さん:将来的には、全てのお店で食品ロス対策として「TABETE」を使ってもらって短時間で食品ロスを減らすことができるインフラのような存在になれたらいいなと考えています。
同時に、食品ロスがなくなったら「TABETE」は必要なくなるので、 「TABETE」がなくなる方向性でも考えていければと思っています。ただ今は、消費の仕方が変わるような社会装置になれるように、今後「TABETE」をもっと改善していければと考えています。
TABETE - 食品ロスを削減するフードシェアリングサービス
https://tabete.me/
【関連記事】
日ごろからサステナブルな行動を意識している? 日用品や生活をめぐって1,500人に調査を実施
SDGsの実現に向け、企業だけでなく個人のサステナブルな取り組みも求められています。 ユニ・チャーム株式会社は、20~60代の男女1,500人を対象に「日用品のサステナブルに関する意識調査...
イオンが4,000店舗に電子レシートを導入 ふだんの買物から“ペーパーレス”を実現!
イオン株式会社(以下、イオン)は6月21日(金)から、「電子レシート(レシートレス機能)」を拡大し、イオングループ19社の約4,000店舗にて提供を開始します。 電子レシートとは? ...
アップサイクル飼料から‟産まれた”鶏卵「Reエッグ」 食品リサイクルループをワタミが構築
一部の外食店舗で食品廃棄物を、採卵鶏の飼料へとアップサイクルする食品リサイクルループをワタミ株式会社が構築。その鶏卵を「Reエッグ」と名付け一部店舗の既存メニューの商材とするといいます。 ...
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう