HOMEビジネス 食品ロス解消のヒントは「レスキュー」の意識! フードシェアアプリ「TABETE」COO・篠田沙織さんが語るフードシェアアプリの今後の課題【インタビュー前編】

食品ロス解消のヒントは「レスキュー」の意識! フードシェアアプリ「TABETE」COO・篠田沙織さんが語るフードシェアアプリの今後の課題【インタビュー前編】

大槻由実子

2024/08/13(最終更新日:2024/09/16)


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世界的に解決すべき問題とされている食品ロス。東京都では、2030年までに食品ロス量を2000年度(約76万トン)より半減させる目標を掲げています。飲食店で廃棄されてしまう食品を少しお得な価格で「レスキュー」できるフードシェアアプリを利用したことはありますか?

今回、U-NOTEでは、国内最大級の食品ロス削減サービス「TABETE」を運営する株式会社コークッキング取締役COO・篠田沙織さんに、「TABETE」がリリースされたきっかけや、リリース当初と今の飲食店やユーザーの意識の変化などについてお聞きしました。

社会の流れとタイミングが合った「TABETE」

―――「TABETE」ができたきっかけを教えてください。

篠田さん:弊社では2018年4月に「TABETE」をリリースする前から、食に関するワークショップ事業をやっていましたが、当時から食品ロスは解決しないといけない社会課題だと感じていました。

以前、余った規格外の野菜や調味料を各家庭から持ち寄ってスープにして無料で配るボランティアをイメージした「ディスコスープ」というイベントを定期的に開催していました。ですが、イベントという一時的なものであり、かつボランティアという無償の取り組みだけでは、参加者も運営側も持続しにくいと感じていました。

そんな時、デンマークで2015年に誕生したフードシェアリングサービス「Too Good To Go」から着想を得て「TABETE」をスタートさせることになりました。

―――2019年に食品ロスの削減推進法が施行されましたが、「TABETE」のリリースのタイミングは法改正などを見越して作られたのでしょうか?

篠田さん:ちょうど社会の流れとのタイミングが合ったのだと思います。もともと食品ロスという問題に課題感を持ったメンバーが集まって始めた事業だったことと、2015年の「Too Good To Go」のリリースが大きかったと感じます。

―――「TABETE」のこれまでの食品ロス解消の実績について教えてください。

篠田さん:2023年7月末時点で、累計約115万食のレスキューを達成しています。登録ユーザー数は約98万人、登録店舗数は2,870店舗です。

―――寄付活動もされているとのことですが、その詳細について教えてください。

篠田さん:金額は開示していないのですが、「TABETE」の売り上げの一部を板橋区で子ども食堂を運営しているNPO法人に寄付しています。

今年は能登半島地震関連の募金活動を行っている団体に寄付したり、災害時にピンポイントで寄付を行うこともしています。

「必要悪」から社会の課題へ。食品ロスへの意識の変化

―――サービス開始時に比べて、「TABETE」に出品する飲食店側とユーザー側、それぞれに意識の変化を感じることはありますか。

篠田さん:飲食店側については、かなり意識が変わってきています。2018年当時は食品ロスが課題であるという認識がほぼなく、むしろ「必要悪」だと受け入れられていました。

ほとんどのお店で廃棄率が設定され、その分の金額は通常の販売価格に上乗せされているので、経営上問題はないし、食品ロスが出ていることを世の中に発信するのはマイナスのイメージになるのだからこんなアプリは使われるわけがない、と言われたこともありました。

しかし最近は、(政府が目指す、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする)カーボンニュートラルや、原材料価格の高騰によって、これまでのように「大量に作って大量に売る」のではなく、食品ロスに取り組むのが経済的・社会的にもメリットがあり、ブランドイメージの向上につながるという認識が広まりました。

ユーザー側については、2018年当時から積極的にボランティアやフードバンクの活動をするほどではないけれど、食品ロスに対する課題意識を持っていて何かしたい、と思っている方が多いです。

買い物を通して食品ロスに貢献できる「TABETE」はちょうどいいというお声をいただいてきました。

そういう方たちが口コミや自然流入で集まってくるので、実は広告宣伝費をほとんどかけていないんです。

ただ、最近は他社でも似たようなサービスが増えたため、食品ロス削減が当たり前という意識も高まっている一方、お得目的・家計への負荷の軽減のために利用する方も増えている印象があります。

入り口はそれでも良いのですが、利用を通じてユーザーの社会課題に対する認識が強くなるようなサービス設計が必要だと感じています。

「お得に買える」だけでは食品ロスは解決しない

―――ユーザー側には、お得に安く買えるというところばかりにフォーカスが当たっているのかなと思いました。

篠田さん:メディアで「お得で安く買える」という露出のされ方が多かったり、物価高で、そういったニーズがあるのも事実です。

ただ、それだけでは食品ロスの根本解決にはならないので、(株式会社)コークッキングでは、ユーザーが使えば使うほど食品ロス削減に対する意識が高まるような、ユーザー体験を意識したサービスのプロダクト開発をしています。

具体的には、「買う」「購入」という言葉ではなく、「レスキュー」という言葉を使って、「レスキュー隊」に入隊するという世界観を作っています。

ユーザー登録で「レスキュー隊」に入隊し、食品を「レスキュー」するたびに、自分の活動によって削減された食品ロスとCO2の量が見える「経験値」が溜まりランクアップするという仕組みになっています。

自分が削減した食品・CO2量が見えることで、削減しているという実感を持っていただけるゲーミフィケーション(ゲームの要素を取り込むことで、ユーザーのモチベーション向上やロイヤリティー強化につなげるための仕組み)の要素を組み込んでいるのですが、今後も、使い続けるうちに「もっと削減したい」「ほかの社会課題にも取り組みたい」と思っていただけるようなサービス設計にしていきたいと考えています。

「買う」ではなく「レスキュー」という意識

―――「レスキュー」という表現がすごくいいなと思います。単に食品を買うのではなく、誰かを「救けている」、自分が社会貢献しているんだという意識が高まりますよね。

篠田さん:実際、ユーザーの94%が食品ロスに関心があると回答していただいています。また、「TABETE」を使用する前後で、食品ロスと社会課題全般に関する関心度合いの変化をアンケート調査したことがありますが、使用後に関心度合いが上がっていることが数字で示されています。

「TABETE」ユーザーに聞いた食品ロスへの関心についてのアンケート結果

今の「TABETE」が持つ2つの課題とは?

―――今の「TABETE」の課題について教えてください。

篠田さん:2つあり、1つは登録ユーザーに対して登録店舗数が圧倒的に足りていない問題です。

登録ユーザーが100万人近くいるのに対し、登録店舗は約2,800件です。

ユーザー登録は全国どこでも可能なのですが、登録店舗が都市部に集中しているので、近くにお店がないと使えない状況が発生しています。

なので、いかに多くのお店に「TABETE」を登録していただけるかが肝です。以前は、全国に展開する大手企業を中心に営業活動をしていましたが、現在はエリアごとに一気に加盟店を増やしたり、自治体との連携も行ったりということで、そのエリアのユーザーが飽きずに使い続けられるようにシフトしています。

もう1つは、営業時間終了後の食品の取り扱いができていないという問題です。

「TABETE」ではお店の営業中に商品を取りに来ていただいているので、どうしても営業終了後の受け渡しができません。

本来は営業後に完全に廃棄になるものを出品していただくのが望ましいので、無人で受け渡しするため、ロッカーなどを活用した方法を実証実験のような形で始めています。

―――確かに、営業時間外に受け渡しができると、仕事帰りの方にも需要がありますよね。

篠田さん:今だとどうしてもお店の営業時間の終了間際に集中してしまうので、夕方5時から7時ぐらいまでが受け取りのピークになっているのですが、ロッカーなど無人での受け取りができるようになると、夜8時以降など仕事終わりに受け取りたい方も利用できるので、試行錯誤しているところです。

インタビュー後編では、「TABETE」を利用した飲食店の意外な効果や、食品ロスに対し消費者がすべきことについてお聞きしました。

TABETE - 食品ロスを削減するフードシェアリングサービス
https://tabete.me/
 

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