「自分のやりたいことがわからない」と、就職・転職活動で悩んだことがある人もいると思います。そんな人には、「自分に求められていることとは何か?」「誰かの役に立つ」というワードがヒントになります。
『幸せな仕事はどこにある 本当の「やりたいこと」が見つかるハカセのマーケティング講義』を6月に発売し、国内外の企業でマーケター・新規事業担当として活躍する井上大輔さんに、やりたいことを見つけるためには何をしたらよいのかについてお聞きしました。
やりたいことを見つけるためには?
―――若手ビジネスパーソンがやりたいことを見つけるためには、何をしたらいいのでしょうか。
井上さん:やりたいことがわからない、ということは、実はあまりないのだと思っています。いい生活をしたい、気ままに生きたい、など、単にやりたいことでいいのなら、考えるのにそれほど苦労はしないはずです。悩みの本質は、得意なことがわからない、ということなのではないでしょうか。
そして、得意なことがわからないときは、人に聞いてヒントをもらうのが有効です。人からヒントをもらい、その中から自分で考えて決める、でもいいのではないでしょうか。
―――具体的に、井上さんは誰にどんなことを聞いたのでしょうか。
井上さん:誰か特定の人に聞いたというより、本を書いたり、SNSで発信したり、講演で話をしたりするなかで、受け手の反応に注目しました。
反応を見ながら、「相手が自分から聞きたいことは何か」を把握していったのです。面白い話をして、その反応が良ければ、自分は面白い話をするのが得意なのでは、というヒントになります。逆に自分では面白いと思っていた話の反応が悪く、難しいことを簡単にまとめた話の反応が良ければ、自分は情報整理や言語化が得意なのだな、となります。ちなみに、私はまさに後者でした。
利用でも依存でもなく、求められることが個性になる
―――そうすると、自分の個性が生かせないのでは?と思いました。「個性を磨く」にはどうしたらいいのでしょうか。
井上さん:個性を磨くためにも、自分がどんなことを期待されているか、何で必要とされているかを知ることが大切だと考えます。
例えば多くの人が、自分から「うまい相槌の打ち方」の話が聞きたいと言うなら、「相槌の打ち方がうまい」というのが1つの輝く個性なのだと思います。自分の個性は、ほかの人という鏡に映してみないとわからないことも多いのではないでしょうか。
私は小学生の頃、周りの人から「お父さんに似ている」と言われて、初めて自分が父に似ていること自覚しました。そのように、個性は人から教えてもらうことで認識できることも多いのです。
また、人に「必要とされること」と「利用されること」「依存されること」は違います。
「利用される」が「たまたま近くにいたから、と頼まれること」、「依存される」が「他に頼る人がいないから頼られること」だとしたら、「必要とされること」は「他にもお願いできる人がいるなかで、他ならぬ自分にお願いしたいと思われること」です。
そのような意味で「必要とされる」何かが自分にあれば、それはその人の個性に他なりませんし、伸ばしていく部分になると思います。
どうやったら「相手に思い出してもらえるのか」を考える
―――そうして個性が見つかっても、それをアピールするのが苦手だという人も多いと思います。若手ビジネスパーソンが自分をアピールするときのポイントについて教えていただきたいです。
井上さん:相手の立場に立つ、ことではないでしょうか。アピールとは、相手の課題を解決するために、自分の存在が必要だと相手に知ってもらうこと、だと発想を切り替えるのです。
アピールが苦手な人、というのは、基本的には「いい人」「誠実な人」なのだと思います。相手や周りの人を思いやるがゆえに、自分がでしゃばってはいけない、必要以上に自分をよく見せてはいけない、と考えるのです。
誰かの悩みを解決しようと開発した商品が、その悩みを持つ人に知られていなかったら、結局開発者はその人の悩みを解決できません。その人の悩みを解決するには、商品を開発するだけではなく、それを相手に知ってもらわなければならないのです。
このように相手の立場に立ってアピールすることの意味を考えると、苦手意識も少なくなるのではないでしょうか。
「幸せな仕事」はどこにある?
―――井上さんの新刊『幸せな仕事はどこにある』の中では、「幸せな仕事」の見つけ方が語られています。これまでの話を踏まえてそれを一言でいうと?
井上さん:「自分の良いところ」と「誰かの困りごと」が交わる点を見つけることだと思います。
「自分の良いところ」は、自分では見つからない場合は、人に聞いてみることでヒントが見つかります。思い切って「人任せ」にしてしまっても良いのです。そうして見えてきた個性と、誰かの困りごとがうまく交わる点を見つけることができれば、それが自分のパーパスになります。
マーケティングでいうパーパスとは、ブランドや会社の「存在理由」です。これを自分のキャリアに当てはめて考えると、自分が働く理由、ということになります。自分はなぜ働くのか。それをはっきりと理解し、日々意識させてくれる仕事が見つかれば、それは自分にとって幸せな仕事だと言えるのではないでしょうか。
後編では、成長したい人ほど成長しないジレンマや、成長する人の共通点についてお聞きしました。
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インタビュイープロフィール
井上 大輔(いのうえ・だいすけ)
ソフトバンク株式会社 コンシューマ事業推進統括 プロダクト本部 新規事業開発統括部 統括部長。ニュージーランド航空、ユニリーバ、アウディジャパンでマネージャーを歴任。ヤフー株式会社 マーケティングソリューションズ統括本部 マーケティング本部長、ソフトバンク株式会社 コンシューマ事業統括 コミュニケーション本部 メディア統括部長を経て現職。WASEDA NEO「早稲田マーケティングカレッジ」並びに「『人生の可能性』を広げるビジネスパーソンのための本づくり講座」講師。
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