上司や同僚との人間関係の「嫌」を、プライベートまで持ち帰っている人はいませんか?
大好きな人と一緒にいても、お風呂でリラックスをしていても、ふとその人のことを思い出してしまうだけで、一気に気持ちが落ち込んでしまいますよね。
「社会に出たばかりの若者こそ、人間関係を良くするために“ほメガネ”をかけるべきです」
そう語るのは、「ほめ育」開発者である原邦雄さん。「ほめて育てること」を意味するほめ育は、子どもだけでなく、大人にこそ響く教育メソッドです。
ほめ育のなかでも、人間関係に悩む人に役立つツールであるという「ほメガネ」とはなんなのか?……いますぐ人生に役立つ「ほメガネ」のかけ方を原さんにお聞きしました。
前編「「上司こそほめる対象」人間関係に悩む若者がかけるべき“ほメガネ”とは?「ほめ育」開発者・原邦雄さんに聞く【前編】」
「ほめ育」のきっかけとなった衝撃的な質問
――原さんが、ほめることに気付いたきっかけを教えてください。
私がほめる大切さに気付かされたのは、ラーメン屋の店長として働いていたときです。
当時は売り上げのことばかりを考え、思い通りに動いてくれない部下たちを毎日のように怒っていました。お店が繁盛するためには、ダメなところを指摘することが1番だと、本気で思っていたんですよね。
ただ、部下の1人から受けたとある質問で、私の人生は変わります。どうしてみんな満足に働いてくれないんだと思っていたときに、ふと「今月のMVPは誰ですか?」と聞かれたんです。
当時の私にとっては、本当に衝撃的な質問でした。部下の良いところなんて、これまでひとつも見ていなかったことに気付かされたからです。
それからは、月に1度「ほめる会議」を始めました。お客様にビールをおすすめしたとか、トイレ掃除をしたとか、部下の前向きな行動をどんどんほめていったのです。
すると、みんな会議で出た良い行動の真似から始まり「ほめられるためにはどうしたら良いか?」を考えて実行するようになったんです。そんな部下たちを見て、私も上辺だけでなく、心からほめられるようになっていきました。
結果、部下の欠点ばかりを探していたあの頃に比べて、店舗の売り上げは160%アップ。この体験は、私が「ほメガネ」をかけ続けるきっかけとなりました。
「ほメガネ」をかけていれば、人生の理不尽からも正しく逃げられる
―――いくらほめることを大切にしても、仕事をする環境自体が理不尽で辛いです。
いくら「ほメガネ」をかけていても、いわゆるブラック企業で理不尽な目にあっていて、どうしても改善できないときはありますよね。
私も30代前半のときに、毎日休みなく働いた結果、会社へ行けなくなったことがありました。ある日、深夜2時に帰宅した瞬間、プツンという音とともに身体が動かなくなったんですよね。
それから一切会社へは顔を出さず、半年間ずっと読書や釣りなどをして過ごしていました。時間経過とともにほかの会社で働けるようになったのですが、人を「ほめる」とは別のところで、生きていく厳しさを実感しました。
理不尽が目の前に立ちはだかっているとき、私は辞める選択をしても良いと思っています。
とはいえ、すぐにあきらめずに、まずは「ほメガネ」をかけてよく会社を観察してみてください。
前向きに働けない原因がどこにあるのかを探すときにも、「ほメガネ」が役立つことがわかると思います。
―――「ほメガネ」をかけても、人間関係が改善しないときがあります。
たとえば、上司があなたの成長を邪魔しようとする態度を取ったり、ハラスメントをしてきたりするときは、その人自身に原因があると考えられます。
「ほメガネ」は、理不尽と戦うための武器ではなく、お互いの心の内をさらけだして、歩み寄るためにかけるものです。何をしても状況が変わらないのであれば、その場から逃げてしまう選択をしても良いのではないでしょうか。
ただひとつ大切なことは、どのような状況でも、プラスになるような辞め方をすることです。
自らの責任で選んだ会社で起きたことだと思い、次の行動へ移さなければなりません。
上司に文句を言ったり、会社の悪口を言いながら辞めたりしても、今後のあなたの人生にプラスにはならないのです。理不尽な状況下でも、「ありがとう」といって去りましょう。
人生の選択権は、あなた自身にあります。人の文句をいう習慣がついてしまったら、なによりもあなたの人生がもったいない。
すべての出来事を「自分の成長に変換できないか?」を考えてみてください。辛い状況でも前を向き続けたあなたは、理不尽な目に合わせてきた人たちに、人生まるごと勝利しています。
「ほメガネ」は、若者の可能性を無限大に広げるツール
――「ほめる」を題材にした児童書の『ほメガネの村』が、舞台化されることについての思いを教えてください。
より多くの人が「ほメガネ」をかけるきっかけとなってほしい思いで、大人こそ楽しめるミュージカルを作りました。
『ほメガネの村』は、子ども向けに作られた本にもかかわらず「実は大人のための本ではないか?」という意見が多く届いています。実はその点について間違いはなく、子どもよりもむしろ大人にこそ響くのが『ほメガネの村』の良さなのです。
従業員に対して「ほめ育」の研修をおこなっているとき「ほめ育の関連本を上司や社長に読ませたいけど、どうしたらいいでしょうか?」とよく聞かれていました。
従業員がほめ育の本を上司や社長に渡しても、どこか責められているような気がして、まず読まないですよね。そのため、「児童書であればメッセージも伝わりやすいのでは?」と思ったのが、『ほメガネの村』という児童書を作ったきっかけです。
『ほメガネの村』には、社長や従業員、学校の先生など、さまざまなキャラクターが登場します。それぞれのキャラクターに対し「自分はこのタイプだな」と大人が素直に思えるのは、上から目線でない絵本ならではの特権です。
そのようななかで、子どもだけでなく大人こそ楽しめるミュージカルを作れば、より多くの人に「人の良いところを見る」良さが届けられると思いました。結果的に、人間関係に悩む若者が「ほメガネ」をかける第1歩となるような舞台にもなったと感じています。
――最後に、これから「ほメガネ」をかけていきたい若者に向けてメッセージをお願いします。
いまは、好きを仕事にできる時代になりました。これからの若者には、自分の好きを追求し続けられるような人生を送ってほしいと思っています。
そして、チャレンジの過程においては、人とのコミュニケーションが欠かせません。いまのうちに、「ほメガネ」で人の良いところを見つけられる習慣を身に付けておくことが大切です。
周囲との関係が良好に保てれば、心にも余裕ができて、自分の好きを追求する時間も作れます。ぜひ、これからの人生を前向きに生きるためのツールとして「ほメガネ」をかけてみてくださいね。
インタビュイープロフィール
原邦雄
一般財団法人ほめ育財団 代表理事
1973年、兵庫県芦屋市生まれ。2児の父。
脳科学と心理学をミックスさせた日本発の教育メソッド「ほめ育」を開発し、600社以上の企業や、幼児教育をはじめとした教育機関にも導入されている。
重い病気と戦っているカンボジアの子どもと接し、「1度もほめられずに命が終わる子どもがいる」現実を知り、世界中にほめる大切さを広めることを決意。世界18カ国、のべ100万人に「ほめ育」を伝えているという。
「魔法のメガネ」をきっかけに、村人に感謝の心が連鎖していく、幸せがテーマの大人気児童書『ほメガネの村』が、現代版ミュージカルとして公演予定。
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