HOMEビジネス 「上司こそほめる対象」人間関係に悩む若者がかけるべき“ほメガネ”とは?「ほめ育」開発者・原邦雄さんに聞く【前編】

「上司こそほめる対象」人間関係に悩む若者がかけるべき“ほメガネ”とは?「ほめ育」開発者・原邦雄さんに聞く【前編】

川上良樹

2024/07/25(最終更新日:2024/09/20)


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上司や同僚との人間関係の「嫌」を、プライベートまで持ち帰っている人はいませんか?

大好きな人と一緒にいても、お風呂でリラックスをしていても、ふとその人のことを思い出してしまうだけで、一気に気持ちが落ち込んでしまいますよね。

「社会に出たばかりの若者こそ、人間関係を良くするために“ほメガネ”をかけるべきです」

そう語るのは、「ほめ育」開発者である原邦雄さん。「ほめて育てること」を意味するほめ育は、子どもだけでなく、大人にこそ響く教育メソッドです。

ほめ育のなかでも、人間関係に悩む人に役立つツールであるという「ほメガネ」とはなんなのか?……いますぐ人生に役立つ「ほメガネ」のかけ方を原さんにお聞きしました。

人間関係が良くなる「ほメガネ」の正体

―――原さんが欠かさずにかけているという「ほメガネ」とはなんでしょうか?

ほメガネとは「人の悪いところではなく、ほめるべき良いところが見えてくる魔法の眼鏡」のことで、ほめ育が題材の児童書『ほメガネの村』で作られた言葉です。

※『ほメガネの村』は、周囲を憎んでばかりいた村人たちが、「ほメガネ」をかけた少年との触れ合いをきっかけに、本来のやさしさを取り戻していく物語

「ほメガネ」は、誰でもいますぐかけられることが特徴です。「人の良いところを見る」ことを習慣化すると、自分だけでなく周囲も変えていける力が身に付きます。

――社会に出たばかりの若者が「ほメガネ」をかけたいときは、どのようにすれば良いのでしょうか?

「ほメガネ」のかけ方は簡単で、常に周りの人の良いところに目を向ける意識をし、それを習慣付けることです。

嫌いな同僚や上司に対し、悪口を言いたくなるような瞬間こそ、自分にかけた「ほメガネ」を触ってみてください。

「この人のこだわりは尊敬する部分もあるな」「いつも怖いけど、毎日1番早く会社に来て掃除しているよな」など、いままでとは違う視点でその人のことを見れる気がしませんか?

良いところを見つけたら、実際に相手へ言葉にして「ほめて」みましょう。相手の成長にもつながりますし、自分の心もどんどん前向きになっていく実感を得られます。

「ほメガネ」があれば上司をほめることもできてしまう

――同僚や取引先になら良いところを伝えやすいのですが、上司を「ほめる」イメージがあまり湧きません。

関係がうまくいかないと思っている上司に対しては、仕事に関する“報告”でも「ほメガネ」が力を発揮できます。

たとえば、「あなたのアドバイスのおかげでこう改善されました」と、具体的に報告をしてみてください。部下のサポートが仕事の上司にとっては、前向きな報告自体が1番のほめ言葉になるのです。

いつの間にか、上司の言葉がすべてマイナスに聞こえてしまっているのであれば、ぜひ「ほメガネ」をかけてみてください。どんなに間柄が悪くとも、上司の力があったからこそうまくいったことを思い出し、報告をしてみることから始められるようになります。

「ほメガネ」をかけた報告に慣れてきたら、上司に伝えるタイミングにも注力していきましょう。

たとえば、上司からサポートをもらった大事な案件が終わったら、得意先の建物から出てすぐのタイミングで報告をしてみてください。より濃度の高い感謝の気持ちが相手に伝わり、関係性もどんどん良くなっていくはずですよ。

―――「ほメガネ」をかけ続けていると、ビジネス上でほかにどのような良いことがありますか?

人だけでなく、物やサービスの良い部分にまで目を配れるようになり、仕事がどんどんしやすくなります。

経営コンサルティングの仕事をしていたときは、商品やサービスがもつオリジナルの魅力を見出し、差別化を図ったうえで売り上げアップにつなげていました。

もちろん、クライアント1人ひとりの良いところも言葉にしていたので、関わったすべての人がモチベーションの高い状態を保てていましたね。

私は現在「ほめ育コンサルタント」として経営者に対してセミナーをおこない、社員が売り上げアップにつながる行動をしたときのほめ方などを伝えています。

200社以上の業績アップに貢献ができており、「人の良いところ」を見つける大切さを日々実感しています。

自分をほめることからはじめてみよう

――「ほメガネ」をかけても、相手の良いところを伝えるのが難しいです。

「ほメガネ」をかけることになかなか慣れないのであれば、まずは自分をほめることからはじめてみましょう。

たったひとつだけで構いません。1日の行動を振り返り、どんな小さなことでも自分をほめてあげてください。他人に聞かれることもないので、「ほメガネ」をかける練習にも役立ちます。

毎日の自分をほめられるようになったら、次は周囲から受けた思いやりの行動を思い返し、心の中で“3つ感謝”することを意識してみてください。「ほメガネ」をかけているあなたなら、自然と人への感謝の気持ちが芽生えるはずです。

「ほメガネ」を常にかけられるようになれば、マイナスに思っていた人間関係が、プラスに思えていきます。「この人がいるなら会社を辞めてしまいたい」と思うほど苦手な人とも仲良くなって、いままで悩んでいたことがもったいないと感じられるようになるかもしれませんよ。

―――ほめるだけでなく、「叱る」ことに対してはどのように思われるでしょうか?

良いところだけでなく、悪い部分に関しては「叱る」ことも、関係性を良くしていくうえでは大切です。「ほメガネ」をかけて、相手を普段からほめられている状態であれば、叱ることにも大きな意味が出てきます。

私は、周りがまったく見えていない同期を叱ったこともあれば、モチベーションが停滞している上司に「いつになったら本気出すんですか?」と強い言葉をかけたこともあります。

ただ、私は同期の良いところも普段からたくさん言葉にしていたし、上司の尊敬する部分も多く知っていました。だからこそ、ダメだと思ったことを素直に言えたんですよね。

普段から良いところを発見してほめている私からの指摘は、相手の心にもしっかりと届きます。叱ったことで、同期や上司との関係性も崩れることはありませんでした。

「ほメガネ」を普段からかけていれば、相手を正しく叱ることもできるようになると考えられますね。

後編では、「ほメガネ」をかけたうえで、それでも発生する若者の深い悩みについてのアドバイスをお聞きしました。

インタビュイープロフィール

原邦雄
一般財団法人ほめ育財団 代表理事

1973年、兵庫県芦屋市生まれ。2児の父。
脳科学と心理学をミックスさせた日本発の教育メソッド「ほめ育」を開発し、600社以上の企業や、幼児教育をはじめとした教育機関にも導入されている。

重い病気と戦っているカンボジアの子どもと接し、「1度もほめられずに命が終わる子どもがいる」現実を知り、世界中にほめる大切さを広めることを決意。世界18カ国、のべ100万人に「ほめ育」を伝えているという。

「魔法のメガネ」をきっかけに、村人に感謝の心が連鎖していく、幸せがテーマの大人気児童書『ほメガネの村』が、現代版ミュージカルとして公演予定。

現代版ミュージカル 舞台『ほメガネの村』

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