HOMEインタビュー 退職代行が増えることで結果的に退職者が減る? 「退職代行モームリ」谷本慎二さんに聞いた今後の展望【インタビュー後編】

退職代行が増えることで結果的に退職者が減る? 「退職代行モームリ」谷本慎二さんに聞いた今後の展望【インタビュー後編】

大槻由実子

2024/07/24(最終更新日:2024/07/24)


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「退職代行」という画期的なサービスとキャッチーなネーミングで一躍話題になった「退職代行モームリ」から、7月に初の書籍『退職代行業者が今すぐ伝えたい!Z世代が辞めたい会社』が出版されました。

同サービスを運営する株式会社アルバトロスの代表取締役・谷本慎二さんは、本書は「会社の辞め方」を教える内容ではないと語っています。

インタビュー後編では谷本さんに、「退職代行モームリ」に関する海外メディアの取材についてや、退職代行が目指すところについてお聞きしました。

日本は会社側が強く、労働者が弱い

―――多くのメディア取材の中で、海外からの取材も受けていらっしゃるとのことですが、海外の取材を受けて、日本と違うと感じる点はありますか。

谷本さん:ほとんどの国から聞かれるのは「どうして従業員自身で退職を伝えられないのか」「すぐに退職できないのか」ということです。

―――それに対し、どう説明していますか。

谷本さん:海外は会社・労働者が対等なのに対し、日本では、完全に会社側が強く、労働者が弱い。だから、日本では、会社が辞めるなと言ったら労働者は辞められないと伝えています。
あと、日本人の気質として、思っていることをそのまま口に出さないのが美徳とされているからだとも話します。

例えばアメリカだと、生涯の平均転職率は10〜12回くらいなんです。一方、日本だと2〜3回です。

海外だと転職は自分のキャリアアップの手段であり、どんどん転職して、最終的に良い会社・仕事を見つければいいじゃないかという考え方ですが、日本だと、同じ会社で長く働くことが良いと考えられていて、いまだに転職=逃げ、悪という声も多いですね。

―――今の20代だと、転職=逃げ、悪という価値観はかなり薄れていると思うのですが、そうでもないのでしょうか。

谷本さん:日本でも、転職は悪くないという意見が増えてきましたが、まだ根付いていないと思います。なぜなら、退職代行を利用される方の多くが「会社に申し訳ない」とか「会社を辞めるのが怖い」と言うんです。「次の会社でがんばります」という方はいません。

なので、私たちが声を大にして言うことによって、転職は悪いことではないという風潮がもっと浸透していけばいいと思ってます。

退職代行とは、長期的に退職率を減らしていくもの

―――離職率を減らすために、日本の各企業・従業員がそれぞれどうしていけばいいと思いますか。

谷本さん:企業に関しては、自社で改善していただくのが一番ありがたいのですが、これだけ働き方とか労務関係の問題が世間で取り沙汰されていても、まだ改善に至っていない企業が多いので、私たちのサービスが会社に対する抑止力になればと思っています。

私たちが退職代行の連絡をすることで、会社としてこのままではいけないと危機感を持っていただきたいです。

退職者はすぐに減らないかもしれませんが、労務関係や人間関係を改善することで、長期的に見たら退職率が減ってくると思います。そのための退職代行サービスだと思っています。

―――新規事業の「セルフ退職ムリサポ!」はどんなサービスなのでしょうか。

谷本さん:退職したいけれど退職代行を使いたくない方に対し、自分で退職するためのコンサルティングを行うサービスです。

今後、退職代行サービスの利用者が増えていくと、ゆくゆくは会社側が危機感を覚えて、労務関係などの問題を改善していくと思います。そうすると、退職代行の依頼が激減していく。

ただ、退職に関する悩みというのはなくならないと思うので、次世代のサービスとして、このサービスを始めました。

―――このような新規事業を考えるときのポイントやコツは?

谷本さん:どこかの会社のキャッチフレーズでもありますが「あったらいいな」を形にすることです。

「ムリサポ!」についても、YouTubeを見ながら、こういうサービスがあったらいいのではないかと思いついて、次の日からサービス開始に向かって動きました。

「モームリ」に集まる退職理由は1万5,000件以上

―――「セルフ退職ムリサポ!」のほかに、新しいサービス展開の予定はありますか。

谷本さん:実はすでに始めようと進めているものがあります。「モームリ」では、大量の退職理由がストックされていて、今、1万5,000件以上あるんです。

今後はそのデータを元に、企業向けには、離職率低下のためのコンサルティングや、ノウハウを伝えるサービスを展開しようと思っています。

労働者向けには、企業の退職者に関するデータを開示し、コンサルティングを行うサービスをやろうとしています。例えば、内定をもらった5社のうち、退職者が多い会社はありますか、という相談に対し、弊社が持っている退職者のデータを開示し、こういう退職理由があったので、この会社はこういうところが弱いですよ、とお伝えするようなコンサルです。

私たちは企業側の気持ちもわかるし、労働者の気持ちもわかる、中立な立ち位置なので、今後はそのポジションをもっと活用したいと思っています。

―――「モームリ」に集まる各会社のリアルな退職理由を知りたい人はかなり多そうですね。社員や元社員が会社の口コミを書けるサイトはありますが、それよりも客観性が高いと感じました。

谷本さん:退職代行サービスでお金を払ってまで退職を選んだ人のデータばかりなので、嘘偽りはないですし、それを私たちが第三者的立場で伝えることで信憑性もあると思っています。

良い会社の選び方のコツはネット検索

―――良い会社、退職しなくてもいい会社を選ぶコツがあれば教えていただきたいです。

谷本さん:基本的には、人事担当者など会社が公に言っていることは信用しないことです。良いことしか言わないので。
でも、労働者もそうなんですよ。面接では良いことしか言わないので、お互い様なんです。

私たちがよくやっているのは、会社のウェブページや、Googleマップなどのお客さんの口コミを見ることです。

きちんとしてる会社はしっかりと作り込んだページを作っています。

Googleマップの口コミを見て「愛想の悪い店員さんがいっぱいいます」「院長先生が怒鳴っています」などと書かれている場合は、職場の雰囲気が悪いことがほとんどです。お客さんへの対応と、社内での対応はイコールなことが多いです。

ネットにはヒントになる情報があふれているので、まずはその会社のことを検索してみてほしいです。

それでも、実際に入社してみないとわからないことは多いです。

入社後に想像と違っていたという場合、これが数年後に自分にとってためになるのか、プラスになるのかを考えてみて、辞めるなら辞めてもいいと思いますが、ある程度どこでも同じような業態であれば、がんばって残ってみるのも大事だと思います。

例えば、業種で言うと建築系や美容系、医療系などは業種的に、労務環境で悩まれている方が多い傾向があります。業種的な風潮があることに関しては、どの会社に行ってもほぼ同じなので、どうしても無理というなら業種を変える必要がありますね。

―――最後に、若手ビジネスパーソンへのメッセージをお願いします。

谷本さん:理想は、1つの会社で長く続けられることに越したことはないですし、私たちもそうなるべきだとは思うのですが、現状だと労務関係など良くない会社もあるので、それで心身を壊してしまうくらいなら、退職代行という最後の砦があるというのを覚えておいてください。

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インタビュイープロフィール

谷本慎二(たにもと・しんじ)

神戸学院大学卒業後、東証一部上場企業に入社し、接客サービス業に従事する。翌年に店長昇格後、入社5年でエリアマネージャー昇格。首都圏を中心に新店舗の立ち上げ責任者を6店舗経験。勤続約10年を経て退社。半年間の自己啓発・準備期間の後、株式会社アルバトロスを設立。事業として退職代行モームリを運営。


 

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