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「仕事をしてはいけないルーム」をオフィスに設置 オカモトヤのFellneeによる“変革”【鈴木美樹子代表インタビュー】

Honoka Yamasaki

2024/07/18(最終更新日:2024/07/18)


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100年以上の歴史をもつオカモトヤは、時代の変化とともに変化し続けています。なかでも女性のQOLを上げてフェムアクションの選択肢を増やすための新規事業「Fellne(フェルネ)」の一環である、オフィス空間づくりが挙げられます。

2024年のオフィス移転のタイミングでできた「セルフメンテナンスルーム」と「アメニティバー」は、従業員がリフレッシュできる快適な職場環境を提供する施設です。

前編では、オカモトヤ代表の鈴木美樹子さんにFellneを立ち上げるまでの話をしていただきました。後編では、最近Fellneが取り組んでいる「オフィス空間づくり」について聞いていきます。

「WORK」と「NON WORK」が融合したオフィス

ー新たなオフィスについて教えてください。

私たちは2024年1月に、本社を虎ノ門ヒルズステーションタワーに移転しました。この移転を機に、私たちの本業であるオフィスづくりの一環として、Fellneのコンセプトをオフィス空間にうまく組み込みたかったのです。

新しいオフィスは「palette(パレット)」と名づけています。paletteは、会社や組織、そして社員・キャリア・年代・性別を超えて多様な人たちが混じり合い、新しいアイデアが生まれる場所という意味が込められています。

ー新しいオフィス「palette」で特に力を入れた部分はありますか。

オフィスの中央にある、オンとオフの切り替えができる「セルフメンテナンスルーム」です。これは「WORK」と「NON WORK」つまり、仕事中とそうでないときの境目をあえて曖昧にすることで、誰がいつこのエリアを利用しているかわからない状態を意図的に作り出しました。

ー現代の働き方は変化していると考えていますか。また、今の働き方が「セルフメンテナンスルーム」とどう交わっていくのでしょうか。

人生100年時代を迎え、人手不足が深刻化する中で、企業は健康で長く働くことを重視するようになりました。たとえば、上司に叱られて泣きたくなることもあるでしょうし、前日の飲みすぎや昼食後の眠気などもあるでしょう。そんなとき、このセルフメンテナンスルームで短時間でも休むことができれば、生産性が向上するかもしれません。

3種類のセルフメンテナンスルーム

ーセルフメンテナンスルームをつくるにあたり、特に気をつけた点はありますか。

Fellneは過去に「オールジェンダートイレ」を企画し、出口と入口を分けることで、誰でも気軽に使えるトイレを提案しました。これと同じように、セルフメンテナンスルームも入り口と出口を分けることで、休むことに対する後ろめたさをなくす工夫をしています。

ー出入りの仕組みについて詳しく教えてください。

取っ手が入口には外側に、出口には内側にのみ付いているため、外からは開けられない設計です。中に人が入っているかを認識するために、人感センサーを導入しています。

このセンサーはブースに人が入ると外側に設置された花のマークが点灯し、利用中であることを示します。そして、出口から人が出ると自動的に電気が消える仕組みになっています。これにより、誰がいつブースを利用したかがわからないようになっており、利用者のプライバシーが保たれるようになりました。

ーセルフメンテナンスルームは3種類展開されています。それぞれの特徴を教えてください。

1つ目の「セミクローズ」と呼ばれるタイプは、入口のドアが約140cmの高さに設置されており、大人が頭をかがめないと入れない低いドアになっています。床は少しクレーター風にへこんでおり、室内の天井は約3mと高めです。

2つ目も「セミクローズ」タイプですが、天井は木のルーバーで外の光やオフィス内の光が取り込めるデザインを採用。床の形状は山を模したマウント型を採用しました。

最後に「フルクローズ」タイプは、上部が完全に閉まっており、防音性が高いのが特徴です。ここは、泣いたり怒ったり喜んだりといった感情を表現できるスペースとなります。床は斜めになっており、机や椅子・時計などは設置しておらず、利用者が自由に使える空間を用意しています。

従業員がリラックスするためのアイテムを備えた「アメニティバー」

ーpaletteにはアメニティバーもあるそうですね。

セルフメンテナンスルームだけでは理想の環境を完全に実現できないため、アメニティバーを併設しました。このアメニティバーは、ブース内でのモードチェンジをより充実させるためのもので、大きく分けて「アシストグッズ」と「アメニティグッズ」の2種類があります。

棚に配置されているのが「アシストグッズ」で、そこにあるアイテムはみんなで共有し使用後に返却するものです。具体的には、バランスボール、青竹踏み、プラネタリウム、コーストレッチ用具などが揃っています。

一方、「アメニティグッズ」は引き出しに収納されており、汗拭きシート、リフレッシュ用キャンディー、ヘアゴム、生理用品などが含まれています。利用者はこれらのグッズを自由に取り出し、セルフメンテナンスに役立てることができます。

ーアメニティバーとセルフメンテナンスルームがつながっているんですね。

利用者はアメニティバーで好きなアイテムを手に取って、セルフメンテナンスルームでリラックスできます。このエリアでは仕事をしてはいけないルールになっており、リラックス専用の空間として提供しています。

ー特に大変だったことはありますか。

置きたいアイテムの選定や分類が課題でした。バランスボールやヘアオイルなど、さまざまなアイテムの候補が挙がり、それらをどう分類するか、どのように配置するのか悩みましたね。最終的にはアシストグッズとアメニティグッズに分けることで、みんなが使いやすい形に落ち着きました。

また、アメニティバーのアイテムを選ぶ際に大切にしていたのは「性別に関係なく使えること」です。女性だけのものに寄りすぎないように配慮し、男性も利用できるアイテムを揃えること、そして幅広い年齢層に対応できることを意識しました。

性別関係なく快適に過ごせる職場を

ー誰もが自由に利用できるオープンな空間であることが印象的です。社内でもセルフメンテナンスや女性ならではの話題はフラットに話していますか。

Fellneが立ち上がってから社内の環境は大きく変わりました。女性社員からは男性社員とのコミュニケーションも改善し、「体調が悪い」と言いやすい雰囲気になったと聞いています。この変化はFellneのおかげだと感じます。

ー今後、Fellneとして取り組んでいきたいことはありますか。

アメニティバーは企業が導入できるキットとして展開していて、6月からモニターを募集し、モニター企業に納品して効果を検証しています。これは、ほかの企業のオフィスでどのような効果があり、展開は可能なのかを確認するためです。これまでは災害用レディースキットがメインでしたが、今後はさらにアクションを広げていきたいと考えています。

また、女子大学との連携プロジェクトも進行中です。女子大生にFelleneのことを知ってもらい、「災害用レディースキット-ミニマムキット」のリニューアルを進めています。これは、ミニマムキットの導入事例が少ないという課題を解決するためで、学生たちの視点から企業での働き方や環境について意見をもらい、取り入れることを目的としています。このような取り組みを通して、Fellneはこれからも働きやすい環境づくりに励んでいきたいです。
 

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