HOMEビジネス glafit、四輪型の新モビリティを発表 高齢者の移動手段に“倒れない”四輪型特定小型原付でアプローチ

glafit、四輪型の新モビリティを発表 高齢者の移動手段に“倒れない”四輪型特定小型原付でアプローチ

会田香菜子

2024/06/28(最終更新日:2024/06/28)


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glafit株式会社(以下、glafit)は6月26日(水)、開発中の新技術「リーンステア制御」を搭載した四輪型特定小型原動機付自転車のプロトタイプを公開しました。同日にはメディア向けに発表会が実施され、機構や開発背景の説明のほか、デモ走行と試乗会も行われました。

高齢者の移動手段へ新しいアプローチ

2023年7月に新設された車両区分「特定小型原動機付自転車(以下、特定小型原付)」は、16歳以上なら免許不要で乗れる電動モビリティです。

電動キックボード・電動自転車などさまざまな種類が開発されており、走行モードの切り替えで車道・歩道のどちらでも走行が可能。これにより、地方の過疎地域などにおける公共交通機関の縮小や、住民の高齢化が引き起こす「買い物難民問題」をはじめとした移動問題への新たなアプローチとして期待されているそうです。

また、昨今、社会問題化している高齢者の運転による交通事故で、高齢者の免許返納制度が推進されるなか、免許返納後の移動環境問題も取りざたされています。

内閣府によると、国内の高齢者人口(65歳以上)は、2019年に3,589万人と総人口の28.4%に達しました。2036年には3人に1人が65歳以上になることが推計され、高齢化が一層進むなかで免許返納後の高齢者は移動の自由が確保できないという問題を抱えてしまうといいます。

glafitは、特定小型原付をこの問題を解決する手段として注目していますが、代表取締役の鳴海禎造氏は「二輪では不安がある、という声が高齢者やその家族から多数上がっています」と、現状を説明。特定小型原付の選択肢の幅を広げるために、四輪タイプの特定小型原付の開発に至ったそうです。

四輪型特定小型原動機付自転車のプロトタイプ。左側に立つのはgrafit代表取締役の鳴海禎造氏

特定小型原付は「車体の長さ1.9m×幅0.6m以下」「時速20kmを超える速度を出すことができないこと」「原動機として、定格出力が0.60kW以下の電動機を用いること」などの条件があります。

特に車幅0.6m以下というのは、一般的な乗用車の車幅の1/2~1/3倍となり、仮に1/2倍になったとすると同じ段差高を乗り越えたときの車体の傾きは2倍に、耐横転性は1/2倍になってしまうといいます。

その問題を解消するため、glafitは株式会社アイシン(以下、アイシン)が開発中の「リーンステア制御」を四輪特定小型原付に装備。車速やハンドル角などの情報に基づき、車体の傾斜角をアクチュエータ(エネルギーを機械の動作に変換する装置)を用いて制御する技術で、二輪車並の車幅においても高い自立安定性が実現できるそうです。

四輪特定小型原付の開発において、鳴海氏は「高齢になってきたのでクルマをやめて今日からシニアカーにしなさい、と言われても抵抗感があると思います。ほかに選択肢がないからシニアカーで移動を代用するのではなく、高齢になる前から日常的に使用し、免許返納後も『この乗り物があるから大丈夫』と思えるような第3の選択肢としてアプローチしていきたい」と、意気込みを語りました。

四輪特定小型原付のデモ走行と試乗会

デモ走行では「リーンステア制御」の性能が披露されました。段差とカーブ時の走行では、運転者の体がほぼ傾くことがない安定性を確認。速度を出したスラローム走行時も、同様に安定感のある走りを見せてくれました。

実際に乗ってみて、まずシンプルな操作性には驚きました。ボタンひとつを押し込むだけでエンジンがかかり、座席も広く着席時の安定感もばっちり。免許を持っていない人でも問題なく運転できそうな感覚でした。

ただ、加速時の力強さもあるので、特にカーブでの操作は慣れないうちはやや難しく感じそうです。とはいえ、カーブでは説明の通り車体が制御され傾くことはなく、また内側に体が入ることも防げて不安定さはほとんど感じられません。日常生活の移動手段としての新たな可能性を十分に感じられる体験でした。

なお、glafitは7月に、65歳以上の人を中心に和歌山・東京・大阪での実証実験として、試乗を通じて機能性や操作性の評価や感想、利用シーン別でのニーズ・課題把握を行うそうです。

<参照>

glafit株式会社が高齢者の移動手段へのアプローチに新たな1歩、四輪型特定小型原動機付自転車を用いた実証実験を7月から開始

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