MAツールは見込み客や顧客の行動データの集計・分析や、データに基づく顧客のセグメンテーション、顧客セグメントごとのステップメール配信などができるツールです。
本記事ではMAツールとは何か、主な機能や導入するメリット・デメリットを解説。CRM・SFAとの違いや効果を高める選定・運用のコツ、ツール選びや運用の参考になる活用事例もまとめて紹介します。
- MAツールとは何か、CRMやSFAとの違いと併せて解説
- MAツールの重要性と導入するメリット・デメリット
- MAツールの導入効果を高める選び方、活用のコツ
MA(マーケティングオートメーション)ツールとは?
MA(マーケティングオートメーション)ツールは、マーケティング作業を自動化するためのツールです。メールの送信やリードの管理などの作業を自動化でき、業務を効率化したりメールの送信忘れを防いだりできます。
簡単にいえば、手作業で行っていた作業をMAツールが代わりに行ってくれるわけです。これによりマーケティングチームは時間と労力を節約し、コンテンツの内容や見込み客を育成するための戦略など、より重要なことにリソースを割けるようになるでしょう。
CRMとの違い
MAツールと似たツールとして、CRMとSFAが挙げられます。これらのツールは機能、利用する目的や部署などが異なります。
CRM(Customer Relationship Management、顧客関係管理)は顧客との関係構築・維持を目的としたツールです。顧客情報の管理や分析、営業活動の支援などを行います。
MAツールは主に見込み顧客の獲得・育成に焦点を当て、マーケティング部門で利用されます。CRMは既存顧客との関係構築・維持に焦点を当て、営業部門やカスタマーサービス部門を中心に、全社で利用されるツールです。
機能面では、MAツールはリード管理やメール配信、顧客行動分析などの機能に特化しているのに対し、CRMは顧客情報の管理、営業活動支援、顧客満足度向上などに役立つ機能を備えています。
SFAとの違い
SFA(Sales Force Automation、営業支援システム)は営業活動の効率化を目的としたツールです。顧客・見込み客の情報はもちろん、商談や営業担当者のタスク・スケジュールなどを管理します。
主に見込み顧客の獲得・育成に焦点を当てて使われる点はMAツールもSFAツールも同じですが、これらのツールは利用される部署が異なります。MAツールはマーケティング部門で、SFAは営業部門で主に利用されるツールです。
マーケティング部門で使われるMAツールは、リード管理やメール配信、顧客行動分析などの機能に特化しています。営業部門で使われるSFAにもメール配信機能はありますが、商談や案件、タスク・スケジュールなど、営業活動の支援に特化した機能がそろっています。
なお、CRMとSFAは機能が重複する部分もあり、一体となったツールも多いです。CRMは顧客との関係構築・維持全体を管理するツールであり、SFAはCRMの一部機能である営業支援に特化したツールと考えることもできます。
MAツールの重要性が高まった背景
近年、MAツールの導入企業が急増しています。その背景には、マーケティング環境の変化が大きく影響しています。ここでは、MAツールが注目されるようになった理由を3つの観点から解説します。時代の変化に対応するためには、MAツールを活用した効率的なマーケティング活動が不可欠です。
マーケティングのオンライン化と複雑化
近年、インターネットやスマートフォンの普及により、マーケティング活動のオンライン化が進んでいます。従来のオフライン広告に加えてWebサイトやSNS、メールなど、さまざまなオンラインチャネルがマーケティングに活用されるようになりました。
消費者の購買プロセスも複雑化しています。消費者はこれら複数のチャネルを横断しながら情報を集め、商品・サービスの購入を検討したり、購入候補を比較したりします。そのため、消費者(見込み客)一人ひとりに合わせたアプローチが重要です。
こうした変化に対応するためには、見込み客の行動データを分析し、適切なタイミングで適切なコンテンツを届けることが必要です。しかし、手作業でこれらの作業を行うのは難しいでしょう。
そこで必要になるのがMAツールです。MAツールは見込み客の行動データを自動的に収集・分析し、一人ひとりに最適なアプローチを自動で行います。
消費者の価値観の変化
近年、消費者の価値観は大きく変化しました。商品やサービスに対する単純なニーズだけでなく、より個別化された体験や価値を求める傾向が強まっています。たとえば「どのようにして商品やサービスを知ったか」「接客や問い合わせ対応の品質はどうだったか」など、企業は商品・サービスの認知から購入、購入後の対応まで、一連の流れを意識しなければなりません。
また、SDGsをはじめ「企業の社会的責任」への関心も高まり、環境や社会貢献に対する意識が広がっています。これらの変化により、企業には単なる商品やサービスの提供だけでなく、顧客と信頼関係を構築し、感情的なつながりを築くことが求められています。
MAツールは特に見込み客との関係構築に強く、適切に活用することで一人ひとりにパーソナライズされたコミュニケーションを提供できるでしょう。
企業の経営方針の変化
近年、企業の経営方針は、業績拡大よりもコスト削減を重視する傾向が強まっています。その結果、営業部門にもコスト削減の圧力がかかり、限られたリソースで効率的に成果を上げることが求められています。
しかし、特に法人営業のプロセスは複雑化しています。従来のように決裁者と良好な人間関係を構築するだけでは不十分です。どの金額までなら担当者で決裁できるのかという「部分決裁」や稟議などを考えなければなりません。
また、見込み客・顧客からのニーズも複雑化しており、個別対応が必要になっています。人間の営業担当者が自力ですべての営業プロセスを管理することは難しく、効率化が求められています。
これらの課題を解決するためには、MAツールの活用が有効です。MAツールは見込み客の行動を分析し、見込み客それぞれに合うコンテンツを適切なタイミングで自動配信します。見込み客の確度をスコアリングする機能もあり、マーケティング部門から営業部門への送客もスムーズになるでしょう。
これらの機能により、マーケティング部門と営業部門の担当者の負担を軽減し、効率的な営業活動を実現します。
MAツールの主な機能
MAツールは見込み客の獲得から育成、顧客化までを効率的に行うためのツールです。ここではMAツールの主な機能を、リード獲得・コンテンツ・顧客行動の分析に関する機能の3つに分けて紹介します。
リードの獲得・管理・育成に関する機能
「リード獲得・管理・育成に関する機能」は、MAツールの核となる機能です。
機能 | 説明 |
リードジェネレーション | Webサイトやソーシャルメディアなどを通じて、見込み顧客を獲得 |
リード管理 | 獲得した見込み顧客の情報(属性、行動履歴など)を管理 |
リードナーチャリング | メール配信やコンテンツマーケティングなどを通じて、見込み顧客を育成 |
リードスコアリング | 見込み顧客の購買可能性を点数化 |
潜在顧客を発掘して見込み客リストを構築したり、見込み客の属性や行動を分析しパーソナライズされたアプローチを行ったり、見込み客を効率的に育成できます。
コンテンツの作成・配信に関する機能
「コンテンツ作成・配信に関する機能」は、見込み客や顧客に対して、適切なタイミングで適切なコンテンツを届けるための機能です。
機能 | 説明 |
コンテンツ作成支援 | 記事、メール、ランディングページなど、各種コンテンツの作成を支援 |
セグメンテーション | 顧客属性や行動に基づいて、顧客をグループ分け |
パーソナライゼーション | 個々の顧客に合わせたコンテンツ配信 |
自動配信 | 顧客の行動や属性に基づいて、自動的にコンテンツを配信 |
見込み客のニーズに合わせたコンテンツを制作したり、一人ひとりに最適なタイミングで情報を提供したりできます。これらの機能を活用することで、顧客との信頼関係を構築し、購買意欲を高めていけるでしょう。
顧客行動の集計・分析に関する機能
「顧客行動の集計・分析に関する機能」は、見込み客や顧客の行動データを集計・分析することで、顧客のニーズや購買傾向を把握するための機能です。
機能 | 説明 |
アクセス解析 | Webサイトへのアクセス状況を分析 |
行動分析 | メール開封率、クリック率などの行動を分析 |
コンバージョン分析 | どのような施策が顧客化に貢献しているかを分析 |
顧客属性分析 | 顧客の年齢、性別、地域などの属性を分析 |
これらの機能を活用することで、顧客のニーズや購買傾向を把握し、より効果的なマーケティング施策を立案・実行できます。
MAツールを導入するメリット
MAツールは見込み客や顧客との関係構築を強化し売上向上につなげたり、業務を自動化・効率化したりできるツールだと紹介しました。具体的には、以下の5つのメリットがあります。
- メリット1.業務効率化
- メリット2.リードの取りこぼし防止
- メリット3.マーケティングの精度アップ
- メリット4.LTVの向上
- メリット5.適切なタイミングでの営業部門への送客
それぞれの詳細を確認していきましょう。
メリット1.業務効率化
MAツールの導入により、マーケティング活動の多くが自動化されます。たとえば定型的なメールの配信やリードの追跡、セグメンテーションなどの作業が自動化可能です。タスクの自動化により人的ミスのリスクも低減され、業務品質も向上するでしょう。
メリット2.リードの取りこぼし防止
MAツールにより見込み客へのアプローチが自動化されれば、リードの取りこぼしを防げます。MAツールはリードの情報を自動的に取り込み、情報を追跡・管理します。リードの行動や関心をトラッキングし、そのデータを活用して適切なタイミングでアプローチが可能です。
このようなリードの管理・育成機能により、貴重なリードを見逃すことなく、効果的に育成して育成していけます。
メリット3.マーケティングの精度アップ
見込み客の行動やマーケティング施策への反応などのデータを集計・分析できるMAツールは、マーケティング活動の精度を大幅に向上させるツールです。
見込み客・顧客のニーズや購買傾向、確度などをデータに基づき可視化し、それぞれに合うアプローチのタイミングや効果的なコンテンツを導き出せます。従来のように勘や経験に頼るのではなく、データに基づくマーケティングが可能になります。
マーケティング業務の精度を高めるだけでなく、属人化の防止にも役立つツールです。
メリット4.LTVの向上
MAツールを導入すると、顧客の興味や行動を把握して、その人に合った情報やサービスを提供できるようになるため、自社と接する時間も長くなり、満足度の向上にも繋がります。
顧客が満足していると自社の商品やサービスを何度も利用してくれるようになり、解約率も下がるでしょう。その結果、収益やLTVの向上も期待できます。
メリット5.適切なタイミングでの営業部門への送客
MAツールには見込み客の確度をスコアリングする機能、見込み客をスコアごとに抽出する機能があります。なかには、見込み客の確度が高まったタイミングで通知を出したり、SFAと連携して営業部門に送客したりできるツールもあります。
また、自社独自のスコアリングをしたり、顧客のステージを分けることも可能です。
これにより、マーケティング部門から営業部門への送客のタイミングをより効果的に管理できます。たとえば見込み客が特定のWebページに訪れたり、価格情報をリクエストしたりした場合など、商品・サービスに対する関心が高まっているタイミングで営業担当者にその情報を送れるようになります。
MAツールを導入するデメリットや注意点
MAツールはたしかに便利なツールですが、導入・運用や従業員教育にかかるコスト、効果が出るまでにかかる時間など、デメリットや注意点もあります。
ここではMAツールの導入で失敗しないために、事前に知っておくべき注意点を3つ紹介します。
注意点1.導入・運用にコストがかかる
多くの場合、MAツールの運用には月額数万円から数十万円の利用料金がかかります。導入費用として数十万円から数百万円程度の初期投資が必要となるケースも少なくありません。
導入・運用コストは、MAツールの機能や規模、導入する企業の規模によって大きく異なります。多額の費用がかかるため、ツールが合わなかったからといって、気軽に乗り換えることもできません。自社のニーズに合うツールを選ぶことが重要です。
注意点2.従業員の教育にコストがかかる
MAツールを導入しても、従業員が使いこなせなければ、大きな効果は得られません。従業員がMAツールを使いこなせるよう、操作方法や運用ルールに関する教育を行う必要があります
従業員の教育には時間はもちろん、研修時に費用がかかることもあります。最初は専門家と一緒に構築しながら研修してもらうなど事前に計画を立て、効果的な教育方法を選択することが重要です。
デメリット3.効果が出るまで時間がかかる
MAツールは、導入後すぐに効果が出る魔法のツールではありません。データ分析に基づいて効果的な施策を実行し、施策や運用ルールを見直していくことで、少しずつ効果が大きくなっていきます。
効果が出るまでの期間は、企業の状況やMAツールの使い方によって異なります。 短期的な成果を期待するのではなく、中長期的な視点で導入を検討すること、計画を立てることが重要です。
MAツールの比較ポイント
市場には数多くのMAツールが存在し、それぞれ機能や料金、対応チャネルなどが異なります。最適なツールを選ぶためには、自社のニーズと各ツールの特徴をしっかり把握し、比較・検討しなければなりません。
MAツール選びの失敗を防ぐための、6つの比較ポイントを紹介します。
- ポイント1.機能
- ポイント2.料金の金額・形態
- ポイント3.対応した施策・チャネル
- ポイント4.連携できるツール
- ポイント5.サポート体制
- ポイント6.セキュリティ
ポイント1.機能
MAツールを比較する際、最も重要なのが「機能」です。自社に必要な機能が備わっているツールであることはもちろん、自社にとって不要な機能が少ないツールを選びましょう。必要以上の機能が含まれている場合、操作やメニュー画面が複雑で使いづらくなる、料金が高くなるなどの恐れがあります。
機能が多いほど良いわけではありません。自社のニーズに合う、機能の過不足がないツールを選びましょう。
ポイント2.料金の金額・形態
MAツールを選ぶときは、料金の金額だけでなく「形態」にも注目しましょう。
MAツールの料金形態は、主に月額制と買い切り制の2種類です。月額制は初期費用が不要もしくは割安で、月額料金を支払うことで利用できます。ユーザー数や機能数によって料金プランが変わることが多いです。
買い切り制は初期費用こそ高額なものの、一度購入してしまえば利用料を支払うことなくずっと利用できます。ただし、バージョンアップや保守などのサポートを受けられないこともあります。
料金プランはユーザー数や機能数、サポート内容などによって異なります。 ユーザー数や必要な機能、トラブルや疑問が生じたときに自社だけで対応できるかなど、さまざまな要素を俯瞰し自社のニーズと予算に合ったプランを選びましょう。
ポイント3.対応した施策・チャネル
MAツールはメールやSNS、自社HPなど、さまざまなマーケティング施策とチャネルに対応しています。導入候補のMAツールが、自社で使っているチャネルや実施したい施策に対応しているかどうかを確認しましょう。
たとえばBtoB企業の場合、ステップメールの配信やリード管理、見込み客や施策の分析などの機能が充実しているツールがおすすめです。ECサイトの場合、Web行動分析やCRM連携などの機能が特に重要になります。
ポイント4.連携できるツール
自社で使っているツール、これから導入するツールとMAツールを連携させられるのかも確認しましょう。
現代のマーケティング活動では、CRM/SFAやメール、SNSなど、複数のツールやプラットフォームを組み合わせて活用するのが一般的です。そのため、MAツールがほかのマーケティングツールやシステムとスムーズに連携できるかどうかを確認することが重要です。連携がスムーズであれば、異なるツール間でデータや情報を共有し、マーケティング戦略を効果的に展開できます。
特にMAツールとSFAの連携は重要で、MAツールからSFAに、タイムラグなく情報や通知を送れなければなりません。タイムラグがあると営業部門への送客が遅れ、アプローチのタイミングも遅れます。わずか数分の遅れにより、決裁者がつかまらなくなったり見込み客の関心が下がってしまったりということも珍しくありません。
ポイント5.サポート体制
MAツールのスムーズな導入・運用には、ベンダーによるサポートが重要です。運用体制の構築やツールの設定などの導入サポートはもちろん、導入後に問題やわからないことが生じた際に、ベンダーがスピーディに対応してくれるかを確認しましょう。
サポートの内容はもちろん、問い合わせの手段(メール・電話・チャットなど)や窓口の対応時間などを確認することで、安心して利用できるツールを選べます。公式サイトだけでなく、SNSや口コミサイトもチェックし、客観的な評判を確認することが大切です。
ポイント6.セキュリティ
MAツールは企業の機密情報や顧客データなど、重要な情報を扱うツールです。セキュリティ対策が十分であるか、ベンダーは信頼できる企業なのかを確認する必要があります。
MAツールがどのようにデータを保護し、プライバシーを守っているのか、具体的なセキュリティ対策やセキュリティ関連の認証を確認しましょう。また、データのバックアップや復元手順、セキュリティポリシーなども重要です。自社のセキュリティ基準に適合し、信頼性の高いMAツールを選ぶことで、情報漏えいやセキュリティ侵害のリスクを最小限に抑えられます。
MAツールを導入・活用する流れ
MAツールの導入効果を最大化するには、自社に合うツールを選ぶこと、自社に合う方法で運用することが大切です。MAツールの導入効果を高めるための方法を、9つのステップに分けて解説します。
- STEP1.自社の課題と導入目的を明確にする
- STEP2.必要な機能を洗い出す
- STEP3.導入候補の選定と比較・検討
- STEP4.ベンダーへの問い合わせ・トライアル
- STEP5.運用体制の構築
- STEP6.MAツールの導入と設定
- STEP7.シナリオ設計とコンテンツ作成
- STEP8.テスト配信・運用
- STEP9.データの分析・改善
STEP1.自社の課題と導入目的を明確にする
まずは何のためにMAツールを導入するのか、自社の課題と目的を明確にしましょう。マーケティングや営業活動の課題を特定すること、ツールを使ってどのような効果を得たいか目的を明確にすることが大切です。導入目的にはリードの管理や育成の効率化、マーケティング戦略の精度向上などが考えられます。
この段階で具体的なKPIを定めておくこともよいでしょう。
STEP2.必要な機能を洗い出す
導入目的を明確にしたら、そのために必要な機能を洗い出しましょう。
たとえば見込み客からの問い合わせや特定ページへの訪問などの「営業部門に送客するトリガー」が生じても、マーケティング部門と営業部門の連携が弱く、営業担当者のアプローチが遅れてしまっていたとします。この場合、SFAとシームレスに連携できるツール、通知機能が充実したツールがおすすめです。
導入目的や解決したい課題をベースに必要な機能を洗い出すことで、適切なMAツールを選び、効果的なマーケティング活動を展開する準備が整います。
STEP3.導入候補の選定と比較・検討
自社にとって必要な機能を洗い出したら、その機能のあるMAツールを導入候補としてピックアップしましょう。その後、導入候補の比較・検討を行います。
まずは複数のMAツールについて概要を調べ、それぞれの特徴や機能、料金プランなどを比較します。導入目的や必要な機能に基づいて、候補をふるいにかけ数を減らしていきましょう。
STEP4.ベンダーへの問い合わせ・トライアル
導入候補のMAツールについて、気になることがあればベンダーに問い合わせ、さらに詳しい情報を手に入れましょう。この際、導入計画やサポート体制などについての疑問や不安を解消するために、ベンダーとのコミュニケーションを意識します。問い合わせへの対応から、ベンダーの信頼度や自社との相性が見えてくるでしょう。
トライアルやデモを提供しているMAツールは多いので、これらを活用し、実際の操作感や機能の使いやすさも確認します。ベンダーへの問い合わせとトライアルを通じて、導入候補のMAツールについてより深く理解し、候補を絞り込んでいきましょう。
STEP5.運用体制の構築
MAツールの導入効果を高めるには、運用体制の構築が重要です。MAツールを扱うチームや役割を明確に定義し、運用の責任者を任命しましょう。ツールの利用方法やプロセスをマニュアル化し、従業員のトレーニングも行います。
運用体制の定期的な見直しも大切です。定期的なミーティングや報告体制など、MAツールの効果を高めるための仕組みも確立しましょう。
運用体制の構築に関する相談に乗ってくれるベンダー、導入後も定期的な支援ミーティングを提供してくれるベンダーがおすすめです。
STEP6.MAツールの導入と設定
導入するMAツールを決めたら、いよいよツールの契約です。ベンダーとの契約手続きが完了し、必要に応じてシステムを各種デバイスにインストールしましょう。MAツールの基本設定やカスタマイズ、データの移行なども必要です。これらの作業をサポートしてくれるベンダーもあります。
STEP7.シナリオ設計とコンテンツ作成
MAツールの導入・設定ができたら、次のステップはシナリオ設計とコンテンツ作成です。マーケティングキャンペーンや自動化プロセスのためのシナリオを設計し、MAツール内に組み込みます。メルマガやSNSの投稿など、MAツールを使って配信するコンテンツも作成しなければなりません。
STEP8.テスト配信・運用
シナリオ設計とコンテンツ作成が完了したら、テスト配信の後、本格的な運用をはじめます。作成したシナリオに基づきコンテンツが配信されるか、ツールの正常な動作を確認します。送信されたコンテンツやメッセージの表示や効果を評価し、必要に応じて修正や改善しましょう。
テスト配信が終われば、いよいよ運用開始です。
STEP9.データの分析・改善
マーケティング活動の効果を高めるためには、定期的なデータの分析と改善が欠かせません。MAツールが収集したデータを分析し、キャンペーンやプロセス、各コンテンツの効果を評価します。見込み客・顧客の行動や反応を分析し、マーケティング戦略の改善点を見つけましょう。
データの分析・改善は継続的なプロセスであり、続けること、こまめに行うことが重要です。これによりマーケティング戦略を少しずつ最適化していけるでしょう。
MAツールの効果を高めるシナリオ設計のポイント
MAツールは、顧客一人ひとりに最適なアプローチを行えますが、効果的なシナリオがなければ、その真価を発揮することはできません。
MAツールのシナリオとは、顧客の行動や属性に基づいて、自動的にメールやコンテンツを配信するための設定です。
ここでは、MAツールの効果を高めるシナリオ設計のポイントを4つ紹介します。
- ポイント1.ターゲットの選定とセグメンテーション
- ポイント2.アプローチのタイミングと頻度を決める
- ポイント3.セグメントごとの配信コンテンツを決める
- ポイント4.セグメントやスコアごとのアプローチ方法を決める
ポイント1.ターゲットの選定とセグメンテーション
MAツールの効果を最大化するためには、ターゲットの選定とセグメンテーションが重要です。
まずはどのような人にアプローチするのか、ターゲットを明確にしましょう。年齢や性別などターゲットの属性を決め、具体的なニーズや抱えている悩みなどを描いていきます。このような具体的なターゲット像のことをペルソナといいます。
ターゲットをさらに細分化することで、より精度の高いアプローチが可能になるでしょう。商談の進行具合、業界、興味・関心のあるジャンル、購買履歴など、さまざまな軸でターゲットや見込み客のグループ分けができます。これをセグメンテーションといいます。
コンテンツを配信する際には、各セグメンテーションごとに配信することができます。より適切な情報を配信できるように、セグメンテーションを検討しましょう。
ポイント2.アプローチのタイミングと頻度を決める
MAツールの効果を高めるためには、アプローチのタイミングと頻度を適切に設定することが重要です。見込み客や顧客に過剰なメッセージを送信すると、迷惑に感じられる可能性があります。その一方で、十分な頻度でコミュニケーションを行わないと、関心が失われてしまうかもしれません。
アプローチのタイミングと頻度を決めるためには、顧客の行動履歴やデータを分析し、彼らの行動パターンを理解することが重要です。見込み客・顧客それぞれの興味やニーズに合わせてコンテンツを配信し、関心を引き付けたタイミングで購入ページのリンクや限定オファーなどを提供すると効果的です。
そのうえで、コンテンツやオファーへの反応をモニタリングし、タイミングと頻度を調整していきましょう。
ポイント3.セグメントごとの配信コンテンツを決める
MAツールの効果を最大化するためには、セグメントごとに適切なコンテンツを配信することが重要です。ニーズや解決したい悩み、どんなことに興味・関心を持つのかは人それぞれ異なります。一律のメッセージを送るのではなく、見込み客や顧客が関心を持つであろうコンテンツを提供することが重要です。
そのために必要なのがセグメンテーションです。「この属性を持つ人はこのようなメールの開封率が高い」「この行動を取った人にこのオファーを送ると成約率が高い」というように、データを分析し、セグメントごとに効果的な配信コンテンツを特定します。
MAツールを活用することで、このようなセグメンテーションも、セグメントごとに異なる配信スケジュールを設定することも簡単にできます。
ポイント4.セグメントやスコアごとのアプローチ方法を決める
最後に重要なのは、それぞれのセグメントやスコアに応じた具体的なアプローチ方法です。
スコアとは、見込み客や顧客の行動に基づき算出される「確度」のことです。メルマガ開封や特定のWebページへのアクセスなど、さまざまな行動から契約までの確度を数値化(スコアリング)します。
スコアの高い顧客には申込ページへのリンクを送る、限定オファーを提示するなら、より積極的にアプローチするといいでしょう。スコアの低い顧客にはコラムや有益コンテンツを配信し、見込み客として育成していきます。
セグメントごとにアプローチ方法を変えることも大切です。
若いユーザーにはSNSやチャットボットなどのオンラインチャネルを、年齢層の高いユーザーには電話や郵送などのオフラインチャネルも活用する。男性ユーザーには論理的な訴求を、女性ユーザーには感情的な訴求を意識したアプローチを行うなどが考えられます。
MAツールの活用事例
実施にMAツールはどのように使われているのか、活用事例を確認してみましょう。自社で導入したらどのように使うのかイメージしながらご一読ください。
不動産検討の今を見逃さないMA活用|殖産ベスト
東京の不動産会社・殖産ベスト株式会社は、営業の情報共有や進捗管理を売上につなげるためにMAツールを活用。徹底した無駄の排除で営業活動を効率化し、不動産検討者にベストなタイミングでアプローチすることで、不動産営業1名あたり平均4,000万円の売上、会社の売上30%増を達成しています。
同社はMAツールとCRM/SFAのシームレスな連携にこだわり、導入ツールを選定したといいます。「当時は、条件を絞ってメールを送ることもできなければ、マーケティング施策を実行する際に他のツールを介さないといけなかった。導入していたCRMはMAを提供していなく、CRMを変えたかったし、MAを整えたかった。」という課題を解決するために、同じベンダーが提供するCRM/SFAとMAツールを導入しました。
ツールの営業担当者にExcel業務のストレスが大きいことを伝えると、「そのExcelすべてなくなりますよ」と言われ、その場で採用を決定。その話を代表に伝えたところ、2秒でOKが出たといいます。
初めてのMA活用でリードと問い合わせ件数を1.5倍に増加|水野染工場
旗や幕、お祭り衣装、暖簾などの印染製品の製造・販売をする株式会社水野染工場は、オンラインのマーケティング施策が不十分なことに不安を感じ、MAツールの導入を検討していました。
会社HPの立ち上げやGoogleの各種サービスを使った訪問ユーザーのデータ取得はしていたものの、見込み客の把握に不安があったといいます。メルマガをはじめとする積極的なマーケティング施策を実施できていなかったのも、当時の課題でした。
MAツールの導入前は2万件だったリード数は、ツールの導入により1.5倍の3万件を超えたといいます。当時はメルマガへの反応が薄かったものの、ツールを使って分析と改善をくり返すことで、担当者の実感で1.5倍ほど問い合わせ数が増えました。
参考:初めてのMAとメルマガ施策でリードとお問い合わせ件数が1.5倍に!パートナー企業と進めたMA活用の裏側 - マーケティングオートメーションツール SATORI
MAを活用したデータマーケティングで開封率・クリック率200%アップ|クレディセゾン
クレジットカード大手の株式会社クレディセゾンは、大手だからこその膨大な量の施策の実施とデータにより、データの準備に工数がかかり精緻なPDCAサイクルが回せていないことを課題に感じていました。
月間約400施策、計1億通以上のメールを配信する同社では、顧客によっては情報価値が低いメールが配信されてしまっていたといいます。メールの内容が顧客のニーズに合わないことで、CV率が下がるだけでなく、自社や自社のサービスに対する不信感につながっているのではないかという懸念もありました。
そんな同社は「セキュリティ」「大量配信時のパフォーマンス」「サポート体制」を軸に、自社の業務に耐えうるMAツールを選定。クレジットカード会社という信用第一の業界であること、扱うデータ量が膨大であることから、セキュリティやサポート体制が充実していることが特に決め手になったといいます。
参考:【導入事例:株式会社クレディセゾン】業界最大手クレディセゾンが実現した開封率・クリック率200%アップの裏側 | b→dash|業界シェアNo.1 データマーケティングツール
おすすめのMAツール9選
最後に、これからMAツールを導入したいという方に向けて、おすすめのMAツールを紹介します。
前述したように、自社に必要な機能が揃っているのかを確認し、適切なMAツールを選定してください。
Account Cloud Account Engagement(旧 Pardot)
Marketing Cloud Account Engagement(旧 Pardot)は、世界有数のCRM/SFAのベンダー・セールスフォースが提供するMAツールです。CRM/SFAやMAツールはもちろん、セールスやアナリティクスなど、セールスフォースはさまざまな製品を提供しています。
セールスフォース製品の魅力は、何と言っても同社の製品同士がシームレスに連携できることです。たとえばマーケティング部門から営業部門への情報共有にかかっていた「15分のタイムラグ」を、CRM/SFAとMAツールをセールスフォース製品に乗り換えることで解消した企業は、アポイント獲得数を2倍に伸ばしています。
>>Account Engagement(旧 Pardot)の公式ページを見る
>>Account Engagement(旧 Pardot)の最新情報を見る
HubSpot
マーケティング、営業、カスタマーサービスの業務を繋ぐ機能が充実した、HubSpot。各顧客のセグメントやステージを簡単に設定でき、顧客にあわせた情報を提供できます。
リード獲得後に自動でメールを送信したり、独自のリストを簡単に作成できたりと、MAツールとして必要な機能はすべて揃っているだけではなく、日本語でのカスタマーサポートも充実しています。
無料からでも活用できるので、まずはMAツールを活用してみたいという方にもおすすめです。
Marketo Engage
Marketo EngageはPhotoshopやIllustratorなどで有名なAdobeが提供するMAツールです。自動処理やリード開発などの機能を集約した大規模なマーケティングオートメーションプラットフォームで、顧客とのつながりを強化し、リピーターを増やせます。
AIによる予測オーディエンスやセグメントの構築、顧客行動をトリガーにしたコンテンツによる顧客行動のパーソナライズなどに強みがあります。チャネルをまたいで見込み客を獲得したい企業、AIを活用して見込み客のアカウントリストを作成・管理したい企業などにおすすめです。
SATORI
SATORIは国産のMAツールです。日本企業が提供するMAツールであるため日本企業にとって使いやすく、サポート体制も充実しているため、MAツールの導入が初めての企業でも安心して利用できるでしょう。
問い合わせをはじめとする「顧客からのアプローチ」で入手した個人情報に基づきアプローチを行うのが一般的なMAツールですが、SATORIは問い合わせ前の匿名客への働きかけもできます。自社Webサイトを軸にマーケティング活動を進めていきたい企業におすすめのツールです。
b→dash
b→dashは膨大なデータをノーコードで扱える、データマーケティングクラウドシステムです。データの集計・分析と活用ができる「BIツール」としての側面と、データに基づきマーケティングを支援する「MAツール」としての側面を併せ持つツールです。
マーケティングオートメーションに関する機能には、ステップメールの配信やプッシュ通知、LINEやSMSと連携したアプローチ・レコメンドなどがあります。導入サポートが充実していること、見やすい画面と直感的な操作で膨大なデータを処理できることから、専門知識のある人材がいない企業にもおすすめできます。
List Finder
List Finderは「BtoB機能にちょうどいいMA」がコンセプトのツールです。BtoB企業にとって本当に必要な機能を絞り込んだシンプルなMAツールで、余計な機能がないため画面が見やすく、操作や設定の方法もわかりやすいです。
アクセス解析により。自社サイトの閲覧時間やアクセス頻度などがわかるため、見込み客ごとの確度や興味関心がはっきりわかります。初期費用は無料、月額費用も無料のフリープランからスタートできるので、使用感や機能を確かめてから本格導入を決められます。
SHANON MARKETING PLATFORM
SHANON MARKETING PLATFORMは、マーケティングに関するさまざまなツールを提供するシャノンのMAツールです。リード管理やシナリオ、スコアリングなどのMAツールの機能を網羅し、マーケティングに特化した生成AIやCMSなど、関連ツールとの連携も充実しています。
たとえばマーケティング専用に設計された生成AIは、高品質のコンテンツを簡単に作成できます。ターゲットの課題出しも生成AIにより作成できるため、ターゲットの課題をより深く理解した、ニーズを捉えたコンテンツを作成できるでしょう。2つのツールを併用することで、「コンテンツ作成」と「作成したコンテンツの効果的な配信」の両方の業務の効率と品質を高められます。
>>SHANON MARKETING PLATFORMの公式ページを見る
>>SHANON MARKETING PLATFORMの最新情報を見る
GENIEE MA
GENIEE MAは直感的に設定・分析ができるMAツールです。シンプルな機能と画面の使いやすいツールで、サポート体制も充実。定着率は99%にも上ります。
シンプルでありながら、メール、Webプッシュ通知、LINE、ポップアップ、SMS、アプリプッシュなど、幅広いチャネルに対応しています。これらのチャネルから顧客それぞれに最適なチャネルを選び、複数チャネルからアプローチすることで、パーソナライズされた顧客体験を提供できます。
Synergy!
Synergy!は伝えたいメッセージを顧客にきちんと届けるためのツールです。CRMに分類されるツールですが、メールの自動配信や配信結果を一目で把握できるレポート機能、LINEやWebサイトでのメッセージ配信など、MAツールとしての機能も備えています。
データベースとフォームの作成・管理の基本機能をベースに、メールやLINEへの配信、アンケートなどの機能を自由に追加できます。「マーケティング業務を効率化したいけど、高度なMAツールを導入するほどではない」という企業にもおすすめの、コストを抑えて導入できるツールです。
MOTENASU
MOTENASUは特にBtoC向けのECサイトにおすすめのMAツールです。訪問者の情報をもとにシステムが適切なページを自動判別して表示を管理したり、顧客のデバイスや滞在数、マウス動態などのさまざまな要素から顧客アクションを分析したり、WebやECサイトのマーケティングに役立つ機能を網羅しています。
オンラインとオフラインの融合にも強く、オンライン告知からリアル店舗への誘導施策、ツールで収集したデータに基づき紙のDMを自動で送付することもできます。EC事業だけでなく、オムニチャネル展開を考えている企業にもおすすめのツールです。
自社の業態や目的に合うMAツールを選ぼう
- 現代のマーケティング活動にはMAツールが不可欠
- MAツールは自社の目的や課題を軸に選定する
- MAツールの効果を高めるためにPDCAサイクルを回し続けよう
MAツールはステップメールの配信や見込み客の行動データの集計・分析などの業務を自動化できるツールです。これらの機能を活用することで、見込み客・顧客それぞれの興味関心や傾向に合わせたコンテンツを、適切なタイミングと頻度で配信できます。
MAツールの選定で重要なのが「自社の目的と解決したい課題」です。MAツールはマーケティング関連のツールのなかでも機能数が多く、ツールごとの特徴もさまざまです。本記事で紹介した活用事例を参考に、目的と課題の明確化、導入候補の選定をまずは進めるといいでしょう。
MAツールには現代のマーケティング活動に欠かせない機能がそろっていますが、導入しただけで効果が出る魔法のツールではありません。見込み客・顧客の行動データ、配信コンテンツへの反応や施策の効果などに関するデータを集計・分析し、少しずつ改善を重ねていくことで、導入効果を着実に高めていけます。
そのためにも、分析機能が充実したMAツール、サポート体制が整ったベンダーを選びましょう。本記事を参考に自社に最適なMAツールを検討してみてはいかがでしょうか。
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