テクノロジーの発達や時代の移り変わりとともに、日本でも、自由な働き方が少しずつ浸透してきました。とはいえ、“会社経営をしながら企業のメンバーとして勤務”する働き方があると聞いても、なかなかイメージが湧かないのではないでしょうか?
今回、話を聞いたのは、学生起業をした身でありながら、大学卒業とともに株式会社ガイアックスで働き始め、社長業を兼ねたまさに自由な働き方を体現している上井 登志之さんです。会社を経営しながら企業で働くメリットや、若くして経営者になる第1歩を踏み出す方法をインタビューしました。
前編「会社経営をしながら企業で働くなんて、できるの? 株式会社ガイアックスのメンバーに真相をインタビュー【前編】」はこちらから
インタビュイープロフィール
上井登志之(うわい・としゆき)
東京農工大学農学部 獣医学科卒業
2020年 都内ペット関連事業会社に入社。計3病院の動物病院の立ち上げに携わる
2021年 株式会社wevetを創業 代表取締役に就任
2023年 株式会社ガイアックスと業務委託(※)契約
※業務委託
企業と正社員や契約社員のような雇用契約を結ぶのではなく、プロジェクトごとに業務を請ける働き方
現在はweb3事業本部・DAOコンサルティングディレクターを務め、企業や自治体の新規DAO結成時のコンサルティングのディレクションおよびプロジェクトマネジメントをおこなう。
社内起業と自分で起業をする違い
―――上井さんが働いている株式会社ガイアックスは、どのような会社なのでしょうか
ガイアックスは、社内で起業できる仕組みが整っており、経営者意識の高いメンバーが多くいる企業です。高い自由度のなかで、スピード感をもって仕事を楽しみたい人に向いている組織だと思います。
また、失敗を祝福する風潮があるところも面白いポイントです。チャレンジに失敗しても評価には響かず、むしろなぜ成功できなかったのかを全体に共有し、組織活性化に貢献できてしまう環境があります。
もちろん当事者としては、社内の評価を気にして仕事をしているわけではなく、お客様・ユーザーさんのお役に立て、ビジネスとして成立させることだけを第一に見ているので、上手くいかないことの苦しさは半端なものではありません。
―――社内で起業できる仕組みとは、どのようなことなのでしょうか?
社内で認められれば、メンバー自ら新しい事業を立ち上げられる仕組みです。会社の事業として予算がつくだけでなく、ガイアックスの正規プロジェクトとして、報酬をもらいながら起業へチャレンジできます。事業予算の一部に報酬があるので、新規事業を継続させるためには報酬は二の次ですが。
社内で定期的なコーチングや事業レビューを受けられるため、事業の成功確率が高まるところもメリットといえますね。
―――それでは、自分で起業するよりも社内起業をした方が良いのでしょうか?
人によっては、自分で起業をした方が成功しやすいケースもあります。たとえば、私のように資金投資がほぼゼロのビジネスの場合、リスクもないので社内起業である必要がありません。
社内起業は、資本やメンバーを集めるのが容易で、大きな仕事を始めやすいのが魅力です。ただし、予算が大きくなりがちなので、同時に責任も増えていくことは覚えておく必要があると思います。
どちらも良い部分があるので、自分のやりたいことに合っている起業方法を選ぶのは有効な手段かもしれません。
ゴールへの近道はいますぐ走り出すこと
―――業務委託であるにも関わらずいきなり会社で責任のあるポジションで活躍したり、起業をしたりできるのはなぜなのでしょうか?
とにかく走り出して、インプットとアウトプットを繰り返しながらビジネスレベルを引き上げています。
ガイアックスでは、コンサルティングディレクターという責任のある立場からスタートしました。しかし、業務手順やマネジメントの方向性はおろか、そもそもどのような事業なのかすらわからない状態だったんです。
そのような場合でも、新しく知識を得たものを、人に教えることで実践的な知識として落とし込んでいきました。立ち止まって考えを巡らせるよりも、とにかく行動を開始した方が、成長のスピードが早いことを日々実感しています。
―――新しい事業の構想を練るときのコツがあれば教えてください。
どのような事業を始めるか迷う場合は、ニーズがそもそも高く、かつ競合がいなそうなビジネスを探してみてください。スモールスタートでも顧客がある程度獲得できるので、事業を軌道にのせやすくなると思います。
ほか、時代の移り変わりに関係なく、昔ながらのことをずっとやっているような領域を発見できれば、新しいビジネスを展開させるチャンスです。
そしてなによりも“数を出せば1個は当たる”という精神で取り組むと、行動をしやすくなるのではと思います。
天邪鬼になって起業への第1歩を踏み出そう
―――「起業したことによる責任」とは、どのように折り合いをつけているのでしょうか?
現実的なところでいうと、ビジネスモデルによって責任の感じ方は変わると思っています。
私は資金調達を一切せず、得た収益を事業に回していくようなスタイルで起業をしているので、正直プレッシャーをあまり感じていません。ただ、最近事業が拡大して、ようやく責任の正体がわかってきた段階です。
責任を感じやすい起業方法は、投資家からの投資があるような、スタートアップのようなビジネスだと思います。投資家に対しての責任がのしかかるため、毎日が刺激的になるかもしれません。
もし起業をするプレッシャーに負けないか不安なときは、まずは少数精鋭の企業に入社し、経営者レベルの取り組みを実践してみるのも1つの手段です。責任をもって働くことの視座が高くなるため、自らの経営に生かす力が手に入ります。
―――最後に、起業へ興味があるけど1歩を踏み出せない若者に、アドバイスをお願いします。
環境のせいにせず、むしろいまある状況をプラスへと変換してみてください。
私は獣医学科に所属していたので、周りは獣医師を目指す人ばかりでした。しかし、「この環境で起業をしたら面白いかも」と天邪鬼のようなことを思った瞬間、自分で会社を経営するエンジンがかかりました。
結果的に、獣医学の知見をもとにして、ほかにはないサービスの提供に成功しました。なかなか行動できない人は、“周りと違うことをするからこその面白さ”の観点で自分を見つめ直してみると、新しい1歩を踏み出したくなるかもしれません。
新規事業のアイディア出しからグロースまで、起業前のフェーズから徹底した支援を提供し、事業を連続的に生み出す「スタートアップスタジオ」。
ソーシャルメディアとシェアリングエコノミー領域、web3・DAOを用いた事業を展開中。事業開発やエンジニアリング、バックオフィスに資金調達など、あらゆる角度からのサポートにより、数多くの若手起業家を輩出した実績があるという。
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