エグゼクティブサーチとはその名のとおり、エグゼクティブクラスの人材を採用するための手法です。経営層や新規事業のリーダー、事業承継における後継者など、高度な人材を採用するために活用されています。
本記事ではエグゼクティブサーチの手法やメリット・デメリット、プロセスについて詳しく解説。一般的な採用手法との違いや効果的な採用のためのポイントも紹介します。
- エグゼクティブサーチ・エグゼクティブサーチファームとは何か
- 一般的な採用手法・人材紹介サービスとの違い
- エグゼクティブサーチの流れ
エグゼクティブサーチとは
エグゼクティブサーチとは、優れたリーダーシップや専門知識を持つ高度な人材を採用する際に利用される採用手法です。主に経営層や幹部クラスの人材を採用したい際に利用されます。
エグゼクティブサーチにおいて重要なのは、企業に最適な人材を見つけ出すことです。そのため、エグゼクティブサーチでは休職中・在職中にかかわらず優秀な候補者を探し、積極的にアプローチします。
通常の人材紹介に比べて費用がかかるものの、高い専門性とネットワークにより、自社にとって価値の高い採用ができるでしょう。
エグゼクティブサーチの目的
エグゼクティブサーチを利用する主な目的は、経営層にふさわしい人材を採用し、自社の組織力を強化することです。新規事業や事業承継などの際に活用されることもあります。
通常、このようなエグゼクティブクラスの人材を見つけるのは難しいです。優秀な人材は引く手数多であり、すでに他社で重役に就いていることも多いからです。
求職中・在職中にかかわらず優秀な人材を探すエグゼクティブサーチを利用することで、市場にいない優れた人材を見つけ出し、自社だけでアプローチするよりも確実に採用できるでしょう。
エグゼクティブサーチが広まった背景
エグゼクティブサーチはもともと外資系企業で多く利用されていた採用手法ですが、最近は一般的な企業にも浸透してきました。
エグゼクティブサーチが広まった背景には、グローバル化や競争の激化などの環境の変化があります。企業が成長や変革を遂げるためには、優れたリーダーシップや専門知識を持つ人材が必要です。
特に事業承継によるトップの交代、新規事業の立ち上げにともなう採用では、エグゼクティブサーチが有効でしょう。優れたリーダーやその道の専門家として現役で活躍している人材を、そのまま自社に引き抜けるからです。
競争の激化や環境の変化に加え、後継者問題が社会的に深刻となったこと、新規事業を立ち上げる企業が増えたことによりエグゼクティブサーチは広く普及しました。
また、インターネットやソーシャルメディアの発展により優秀な候補者の情報を収集しやすくなったことも、エグゼクティブサーチが普及した大きな要因といえます。
エグゼクティブサーチファームとは
エグゼクティブサーチファームとは、エグゼクティブサーチを専門とする人材紹介会社です。単にリーダーシップがある人材、高度なスキルと知識を持つ人材を紹介するのではなく、クライアントの要件に合う人材を探し出し紹介します。
一般的な人材紹介会社との違い
エグゼクティブサーチファームと一般的な人材紹介会社の違いは、「採用の対象」と「サービスの専門性」にあります。
エグゼクティブサーチファームは高いリーダーシップや専門知識を持つ人材の採用に特化しています。このような人材は在職中であることが多く、人材市場ではほとんど見つけられません。在職中の人材の採用に強いエグゼクティブサーチファームを利用しなければ、採用どころか候補者探しすら難しいでしょう。
ただし、採用の難易度が高い分費用は割高で、候補者探しから採用・入社までにかかる時間も長いです。
その一方で、一般的な人材紹介会社は幅広いポジションや業界の人材を紹介できます。エグゼクティブな人材の採用は難しいかもしれませんが、大規模採用に強く、コストと時間をかけずに自社にマッチする人材を集められます。
エグゼクティブサーチファームの料金体系
エグゼクティブサーチファームの料金体系は、大きく成果報酬型とリテーナーサーチ(前払い)型に分けられます。
成功報酬型
成功報酬型のエグゼクティブサーチファームでは、採用が成功した際に報酬を支払います。つまり、候補者が採用され、正式に入社するまでは料金が発生しません。
このシステムはクライアント側のリスクを最小限に抑えつつ、優秀な候補者の採用を保証する仕組みといえます。一般的に、成功報酬の金額は高く設定されますが、採用が成立しなければ費用はかかりません。費用対効果が高く、「コストをかけたのに成果が得られなかった」という心配はありません。
リテーナーサーチ型
リテーナーサーチ型のエグゼクティブサーチファームでは、料金の一部または全額を前払いで支払います。採用の成否にかかわらずに料金が発生するタイプです。採用が成功した場合、成功報酬の支払が発生することもあります。
この料金は、候補者のリサーチやアプローチ、内定から入社までのフォローなどにかかる費用をカバーします。費用こそかかるものの、自社にマッチする人材を根気強く探してもらえるでしょう。
エグゼクティブサーチファームを利用するメリット
エグゼクティブサーチファームを利用することで、自社だけでは見つけられない・採用できない人材を、労力や時間を抑えて採用できるでしょう。その理由を、エグゼクティブサーチファームを利用する4つのメリットと併せて紹介します。
- 難易度の高い「在職中の人材」の採用に強い
- 独自の人脈があり、転職市場にいない人材を見つけられる
- リサーチ力が高く、採用後のミスマッチが起こりづらい
- 内定後のフォローまで任せられる
難易度の高い「在職中の人材」の採用に強い
エグゼクティブサーチを利用する1つ目のメリットは、「在職中の人材の採用に強い」ことです。
優れたリーダーシップや専門知識を持つ人材は在職中であり、現職で高い地位や給与などの成功を収めていることが多いです。仕事の条件も職場の居心地も良いため、積極的に転職を考えていない人がほとんどでしょう。
エグゼクティブサーチファームは豊富な経験と独自のネットワークを活用して、在職中の優秀な候補者を探しだし、効果的にアプローチできます。
独自の人脈があり、転職市場にいない人材を見つけられる
エグゼクティブサーチを利用する2つ目のメリットは、「独自の人脈があり、転職市場にいない人材を見つけられる」ことです。
エグゼクティブサーチファームは長年にわたり、さまざまな人材と信頼関係やネットワークを構築してきました。業界や特定の専門分野において優れたパフォーマンスを発揮している候補者とのつながりを持っているのです。
そのため、一般的な求人サイトや採用イベントでは見つけられない、非公開の優秀な候補者を探し出せます。
リサーチ力が高く、採用後のミスマッチが起こりづらい
エグゼクティブサーチを利用する3つ目のメリットは、「リサーチ力が高く、採用後のミスマッチが起こりづらい」ことです。
高度なリサーチ力と分析力を持つエグゼクティブサーチファームは、採用プロセスのなかで候補者を綿密に評価します。候補者がクライアント企業の要件や期待にマッチするかどうか、独自のノウハウに基づき判断するのです。
これにより、採用後のミスマッチが起こりにくくなります。候補者の経歴や能力だけでなく、価値観や文化的な相性も考慮し、本当に自社で活躍できる人材を見つけ出せるでしょう。
内定後のフォローまで任せられる
エグゼクティブサーチを利用する4つ目のメリットは、「内定後のフォローまで任せられる」ことです。
エグゼクティブサーチファームは、内定後のフォローアップも含め、採用プロセス全般をサポートします。候補者との交渉や内定後の手続きはもちろん、前職の引継ぎや入社の準備、入社後の人材に対するフォローまでサポートしてくれるのです。
エグゼクティブクラスの人材は仕事も顧客も多く、前職の引継ぎに時間がかかるでしょう。だからこそ「内定まで」「採用だけ」ではなく、採用プロセス全般のサポートが必要です。
エグゼクティブサーチファームを利用するデメリットや注意点
エグゼクティブサーチは一般的な採用手法と比べて、コストも手間もかかる方法です。ファームを利用したからといって、すぐに理想的な人材が見つかるとは限りません。エグゼクティブサーチファームを利用するデメリットや注意点を3つ紹介します。
費用が割高
エグゼクティブサーチを利用する1つ目の注意点は、「費用が割高」なことです。
エグゼクティブサーチファームは独自のネットワークやノウハウを活用し、クライアント企業にマッチする人材を探し出します。依頼から採用までに1年以上かかることも珍しくありません。
サービスの専門性が高く、時間も労力もかかるため、一般的な人材紹介サービスよりも大きな費用がかかります。中小企業や予算が限られている企業にとっては、費用の負担が大きくなりがちです。
エグゼクティブサーチを使って採用を実施した際のメリットや、リターンなどを考えたうえで利用を検討するようにしてください。
利用しても採用まで時間がかかることもある
エグゼクティブサーチを利用する2つ目の注意点は、「利用しても採用まで時間がかかることもある」ことです。
引く手数多の優れた人材、在職中の高度な人材を探し出し、採用するには時間がかかります。候補者との交渉はもちろん、前職の企業での引継ぎや手続きにも時間がかかり、採用までに1年以上かかることもあります。
エグゼクティブサーチでは採用までにかかる時間と労力、コストが大きいです。余裕を持った計画と慎重な判断が必要です。
ファームごとに得意・不得意がある
エグゼクティブサーチを利用する3つ目の注意点は、「ファームごとに得意・不得意がある」ことです。
エグゼクティブサーチファームには、それぞれ得意・不得意があります。特定の業界や職種、ポジションに特化したファームもあれば、幅広い分野に対応するファームもあります。
エグゼクティブサーチでは自社にマッチする人材を慎重に選ぶことが大切ですが、人材を探してくれるファームもまた、慎重に選ばなければなりません。
自社のニーズや採用するポジションに適したファームを選ぶこと、そのために、実績や評判などから各ファームの適性を調べることが重要です。
エグゼクティブサーチの流れ
エグゼクティブサーチの流れは大きく次の9ステップに分けられます。それぞれ何をするのか、どのようなことに気をつければいいのかを紹介します。
- 採用する人材像を明確にする
- 採用手法を検討する
- 自社に合うエグゼクティブサーチファームを探す
- ファーム担当者との打ち合わせ
- ファームによるリサーチとリスト提出
- ファームによる候補者へのアプローチ
- ファーム・候補者・自社での3者面談
- 内定と入社までのフォロー
- 入社後のフォロー
採用する人材像を明確にする
エグゼクティブサーチの最初のステップは、「採用する人材像を明確にする」ことです。
採用するポジションに求められるスキルや経験、資質などを具体的に定義し、理想の候補者像を明確にしましょう。これにより、エグゼクティブサーチファームに自社の要望を正確に伝え、適切な候補者を探してもらえます。
最適な候補者を見つけ出すための基盤づくり、エグゼクティブサーチファームとの共通認識づくりともいえるステップです。
採用手法を検討する
エグゼクティブサーチの2つ目のステップは、「採用手法を検討する」ことです。
そもそもエグゼクティブサーチを利用するかどうか、利用する場合はファームのタイプ(成果報酬型か、リテーナーサーチ型か)を考えます。
自社でエグゼクティブ候補を探したときにかかるコストや、エグゼクティブの採用をした際に得られるメリットなどを検討すると、採用にかけられる予算が明確になるでしょう。
リテーナーサーチ型の方がコストはかかりますが、自社にマッチする人材を確実に、根気強く探してもらえるでしょう。
自社に合うエグゼクティブサーチファームを探す
エグゼクティブサーチの3つ目のステップは、「自社に合うエグゼクティブサーチファームを探す」ことです。
先述のとおり、エグゼクティブサーチファームには得意・不得意があります。業界やポジションに関するファームごとの専門性や実績、サービス提供のスタイル、料金体系などを調べましょう。
適切なファームを選ぶことで、採用の費用対効果を高められます。経営層の採用ともなれば、どのような人材を採用したかが、その後の業績や成長にも大きく関わってくるでしょう。
エグゼクティブサーチファームは自社の将来を左右するパートナーといえます。なるべく多くのファームについて情報を集め、問い合わせや打ち合わせを通じ、自社の要件に最も適したパートナーを選びましょう。
ファーム担当者との打ち合わせ
エグゼクティブサーチの4つ目のステップは、「ファーム担当者との打ち合わせ」です。
この打ち合わせでは、自社の採用ニーズや候補者の要件について詳細に伝えます。ファームの担当者はクライアント企業が求める人材像やポジションの特性を把握し、それに基づいて採用戦略を立案します。
初回から綿密なコミュニケーションを取ることで、採用のミスマッチを防ぎ、サービスの費用対効果を高められるでしょう。
ファームによるリサーチとリスト提出
エグゼクティブサーチの5つ目のステップは、「ファームによるリサーチとリスト提出」です。
エグゼクティブサーチファームは自社のネットワークやデータベースを活用して、人材をリサーチします。人材の経歴や能力、適合度などから候補者を絞り込み、クライアント企業にリストとして提出します。
リストが提出されたら内容を確認し、面談や評価の準備を進めましょう。
ファームによる候補者へのアプローチ
エグゼクティブサーチの6つ目のステップは、「ファームによる候補者へのアプローチ」です。
エグゼクティブサーチファームは提出した候補者リストに基づき、候補者へアプローチします。候補者とのコンタクトを取り、ポジションの詳細や企業の魅力などを伝えます。
ファームはアプローチへの反応を踏まえ、候補者の興味関心や適合度を確認、確度の高い候補者をさらに詳しく調査します。
ファーム・候補者・自社での3者面談
エグゼクティブサーチの7つ目のステップは、「ファーム・候補者・自社での3者面談」です。
この面談では候補者のスキルや経験、企業の文化や価値観などについて確認し、詳細な条件をすり合わせていきます。候補者の意向や希望を理解し、採用の可能性を探ることが大切です。
内定と入社までのフォロー
エグゼクティブサーチの8つ目のステップは、「内定と入社までのフォロー」です。
候補者が内定を受け入れた場合、エグゼクティブサーチファームは内定から入社までのフォローを行います。候補者との連絡を保ち、自社への入社準備や前職の引継ぎなどをサポートします。
これにより候補者の満足度・納得度が高くなり、「内定から入社までがスムーズになる」「モチベーションを維持したまま入社してもらえる」などの効果が期待できるでしょう。
入社後のフォロー
エグゼクティブサーチの9つ目のステップは、「入社後のフォロー」です。
エグゼクティブサーチファームによっては、入社後のフォローも提供してくれます。入社後の調整、人材と企業との間のコミュニケーションのサポートなどを提供し、採用後に活躍できる環境を整えましょう。
エグゼクティブサーチは効果的だが費用も高い!自社に合う採用手法・ファームを考えよう
- エグゼクティブサーチは幹部クラスの人材採用に有効
- 費用や時間がかかるなどメリットも多く、慎重な判断が必要
- ほかの手法や従業員の人脈も確認し、自社に合う採用手法を選ぶことが大切
エグゼクティブサーチは、優れたリーダーシップや専門知識を持つ人材を採用するための手法です。経営層や幹部クラスの採用に用いられることが多く、事業承継から新規事業の立ち上げまでさまざまな場面で活用されています。
しかし、費用が高いことや採用までに時間がかかること、ファームごとに得意・不得意があることなど、いくつかのデメリットもあります。情報を集め、自社の要件に合うファームを見つけることが大切です。
もちろん、エグゼクティブサーチ以外にも採用手法はあります。SNSが発展した現代では、SNSで採用を実施したり、自社の従業員が思わぬ人脈を持っていることもあるでしょう。
そもそもエグゼクティブサーチを利用するのか、他に有効な方法はないのか、採用までにどのくらいの期間と費用がかかるのか、慎重に検討を重ねましょう。
本記事を参考に、エグゼクティブサーチの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
【関連記事】
ポリコレの意味とは?具体例や、課題・推進のための方法など基礎知識を解説
特定のグループへの差別や偏見を助長する表現を避け、社会的・政治的に中立かつ公正な表現を使用する「ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)」。近年、企業が活動を行う上で押さえておきたい重要な事項です...
福利厚生の種類一覧|おすすめやメリットなどを解説
通勤手当や住宅補助など、給与・賞与以外の面で従業員を支援する制度のことを「福利厚生」と呼びます。採用活動においては、待遇面だけでなく福利厚生の充実度も応募者を増やす大切な要素のひとつです。 ...
くるみん認定企業とは?厚生労働省の認定マークについて解説
子供がおくるみに包まれた「くるみんマーク」を取得している企業を「くるみん認定企業」と呼びます。くるみんマークは、従業員が育児と仕事を両立させやすい環境を整備している企業の証。子育てと仕事を両立さ...
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう