東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)は、新たな中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」を策定しました。この戦略を通じて、生活ソリューションの営業収益・営業利益を2023年度から2033年度の10年間で2倍にすることを目標に掲げています。
その成長戦略を実現するキーとなるのが交通系ICカード「Suica」です。
Suicaを「生活のデバイス」へ
JR東日本は、これまで「移動のデバイス」だったSuicaの利便性を高めることで、「生活のデバイス」へと進化させていく考えです。
まずは2027年度までに乗車券予約サービスなどのインターネットサービス「えきねっと」やモバイルSuicaなどのIDを統合するほか、クラウド化による“新しい鉄道チケットシステム”を開始するといいます。
その翌年度となる2028年度には、「列車予約」や「定期券」、「モバイルオーダー」、「物品購入」など各サービスを1つにまとめた新しい「Suicaアプリ(仮称)」(以下、新Suica)をリリース。それぞれの利用シーンにあわせたサービスをアプリ1つで利用できるようにするといいます。
こうすることで、駅ビルで一定額の買い物をすると、帰りの運賃割引が行われるといったことができるようになるそうです。
アジア圏への展開も視野に
さらに、新Suicaのビッグデータを活用することで、顧客の要望やニーズをもとにして必要なサービスなどを開発・提供していこうという考え方「マーケットイン型」のビジネスを東京圏で成功させたい考えです。
たとえば、同社が持つモビリティの移動データをもとに、利用者の趣味や健康状態に合わせたサービスや情報を適切なタイミングで提供するなど、顧客1人ひとりのニーズに合わせたさまざまなサービスを展開。集めたデータから、新Suicaのさらなる進化を期待しています。
東京圏で成功した後には、アジア圏での公共交通指向型開発(※TOD)に参画し、海外展開も目指していくそうです。
※Transit Oriented Development:鉄道駅などの公共交通拠点の周辺に都市機能を集めるとともに、鉄道、バスなどの乗り換えが簡単になる交通のつなぎ目を整備し、自動車に依存しない社会を目指す都市開発のことです。
新子会社が1000億円の投資を実施予定
また、新会社として「JR東日本不動産株式会社」を7月1日(月)に設立することも明らかにしました。
新会社では、東京圏や地方で迅速な社有地開発と新たな不動産の取得・開発を通して、JR東日本が進める「駅を中心としたまちづくり」の範囲を広げることが目的だといいます。
また、不動産投資運用事業を行うグループ会社・JR東日本不動産投資顧問株式会社が組成するファンドなどに不動産を売却し、獲得した資金を成長分野へ再投資する「回転型ビジネス」にさらに力を入れていくそうです。
2027年度までに社有地の開発と不動産の取得を合わせて1,000億円規模の投資を計画しているとのこと。
JR東日本は、Suica経済圏と「駅を中心としたまちづくり」の範囲を拡大することで、「お客さま1人ひとりに応じた日常・非日常の「体験価値(ライフ・バリュー)」を創造し、すべてのヒトの心豊かな生活の実現を目指します」とコメントしています。
<参照>
中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」の策定~ Suicaを進化させ、Suicaアプリ(仮称)の創出によるSuica経済圏の拡大~ 東日本旅客鉄道株式会社
「JR東日本不動産株式会社」の設立について~ 不動産事業の領域拡大と回転型ビジネスの加速 ~ 東日本旅客鉄道株式会社
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