HOMEビジネス 宇宙での木材活用認定は世界初! 住友林業・京大による木造人工衛星が宇宙空間へ

宇宙での木材活用認定は世界初! 住友林業・京大による木造人工衛星が宇宙空間へ

服部真由子

2024/05/29(最終更新日:2024/05/29)


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木造人工衛星(LignoSat)フライトモデル(打ち上げ実機)/京都大学

国立大学法人京都大学と、ハウスメーカー大手の住友林業株式会社が、2020年4月から開発に取り組んできたという「木造人工衛星(LignoSat)」が完成。さまざまな安全審査を通過し、世界で初めて宇宙での木材活用が公式に認められたといいます。

この木材人工衛星は、6月4日(火)にJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)へ引き渡されます。その後、米国フロリダ州のケネディ宇宙センターで9月に打ち上げられるスペースX社のロケットに搭載、国際宇宙ステーション(ISS)へ移送される予定です。

「宇宙木材プロジェクト」とは?

この人工衛星は、京都大学と住友林業による共同研究「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」の一環として開発されました。

再生可能な資源である木材を宇宙利用する可能性を明らかにしようという取り組みで、将来的に宇宙空間で木材を活用を目指すという研究です。

プロジェクト名称である「LignoStella(リグノステラ)」は、Ligno(木)と Stella(星)から、木材人工衛星に名付けられた「LignoSat(リグノサット)」は、同様にLigno(木)と 人工衛星(Satellite)からなる造語として、それぞれ命名されたといいます。

京都大学では、2016年に宇宙飛行士の土井隆雄さんが京大宇宙総合学研究ユニット特定教授に就任。「宇宙における木材資源の実用性に関する基礎的研究」として真空中での木材の力学的性質や低重力・低圧力下での樹木の生育に関する基礎研究を行っているそうです。

木材であるメリットは?

人工衛星を木製にするメリットとはなんでしょうか。

ケネディ宇宙センター

役目を終えた小型の人工衛星は大気圏に再突入させ、燃焼させることが国際ルールとなっているそうです。このルールは、宇宙空間で古い人工衛星などが「宇宙ゴミ(スペースデブリ)」とならないように定められています。

従来の人工衛星(金属製)と異なり、木材は大気圏再突入で燃え尽きてしまいます。また、金属製の人工衛星は燃焼時に微粒子を発生し、地球の気候や通信に悪影響を及ぼす可能性があるといい、木造衛星はその可能性を低減できるそうです。

完成に至るまでに行われたさまざまな実験において、宇宙飛行士の健康や安全、精密機器や光学部品などに木造人工衛星が悪い影響を及ぼさないことが確かめられているといいます。

宇宙での運用は2024年11月を予定

地球から観測・撮影したISS

日本の産学共同開発の結晶であるLignoSat1号機は、1辺が100mm角という小型衛星です。木材を組みあげる日本の伝統的な技法だという「留形隠し蟻組接ぎ(とめがたかくしありくみつぎ)」を採用、ネジや接着剤を使用していないそうです。また、構体に利用された木材は、住友林業紋別社有林(北海道紋別市)で伐採したホオノキ材だといいます。

ISSへ移送されたのち、11月にはISSの日本実験棟「きぼう」から宇宙空間に放出。その後は木造構体のひずみ、内部温度分布、地磁気、ソフトエラーなどの測定したデータを配信する予定です。

<参照>
住友林業株式会社|住友林業、京都大学と宇宙木材プロジェクトをスタート

世界初の木造人工衛星(LignoSat)完成、JAXAへ引き渡し宇宙での運用へ 木の可能性を追及し木材利用の拡大を目指す
 

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