HOMEインタビュー 英会話の楽しさが不得意科目を学ぶ動機になったーー「IIBC AWARD OF EXCELLENCE」受賞者室井梨那さんインタビュー【前編】

英会話の楽しさが不得意科目を学ぶ動機になったーー「IIBC AWARD OF EXCELLENCE」受賞者室井梨那さんインタビュー【前編】

服部真由子

2024/05/05(最終更新日:2024/05/07)


このエントリーをはてなブックマークに追加

TOEIC Listening & Reading Testで800点以上(リスニング375点以上/リーディング425点以上)、TOEIC Speaking & Writing Testsでスピーキング160点以上、ライティング170点以上を取得した受験者を表彰するIIBC AWARD OF EXCELLENCEという制度があることを知っていますか?

日本でTOEIC Programを実施・運営するIIBC(一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会)から、表彰状と記念品が受賞者に贈られるといい、希望すると、スキルや学習成果をSNSやメールなどで共有・表示できるデジタル証明「オープンバッジ」が発行されます。

大学時代に留学生と出会ったことで、英語や海外のカルチャーに関心を抱き、英語学習を本格的に始めたという室井梨那さん。IIBC AWARD OF EXCELLENCEの表彰を受けるまでに、そのスキルを高めました。

U-NOTEでは、英語学習者であり、TOEIC Program受験者のおひとりである室井さんと、TOEIC Programを運営するIIBC役員の永井聡一郎さんにそれぞれお話をうかがいました。

その模様を、4日連続でインタビューとして紹介します。

【5月3日(金)公開】
受験者も誤解している!?ーーTOEIC Programを実施するIIBC役員が語る‟本当のTOEIC”とは?
【5月4日(土)公開】
本当に日本は国際化してる?ーー日本でTOEIC Programを実施するIIBC役員が語る‟英語公用化の現在地”

【5月6日(月)18:00公開】
「できない原因」を見つけて弱点を克服しようーー「IIBC AWARD OF EXCELLENCE」受賞者・室井梨那さんインタビュー【後編】

学生時代のTOEIC L&Rスコアは……?

ご友人と留学先で過ごす室井さん(右から3人目)

ーーまずは、室井さんとTOEIC Programについてうかがいます。学生時代から受験されていたんでしょうか?

室井:はい、高校時代はTOEIC Bridge Listening & Reading Tests(初・中級者向けのTOEIC Program)を学校のカリキュラムで、大学生になってからは、TOEIC Listening & Reading Tests(以下、TOEIC L&R)を受けています。

ーー学生時代から英語は得意科目ですか?

室井:高校時代は、英語が苦手でした。単語テストも苦手で、成績でのクラス分けもあまり良くなかったし、補習クラスにも出席するような生徒でした。

ところが、大学に入ってから英語を好きになっていきました。大学生のときTOEIC L&Rは、スコア400~500点レベル。確か……500点には届いたのかな?

ーーコミュニケーションツールとしての英語の楽しさを知ったということですか?

室井:まさにその通りです。英会話がすごく楽しくて、好きになったところから、英語全般に興味が向いていきました。学校の教科書で学ぶ英語からは、その魅力が伝わらなかったんでしょうね。

ーー苦手科目だった英語なのに、優秀なスコア取得者として表彰されるまでに至るまでに、さまざまな努力があったことを想像します。

室井:正直にお答えすると、今回は一切特別なテスト対策はしていないんです。実は、本当に「今、自分の英語力がどのぐらいあるのか」を知りたくて、受けました。だから、なんらかの対策をすると、実際の英語力というより、TOEIC Programでスコアをとる力みたいになっちゃう感覚があったんです。

かつて試したTOEIC Tests対策は?

TOEIC L&R公開テスト試験会場の様子

ーー純粋にご自身の英語スキルを確かめようとされたんですね。

室井:はい。でも学生時代は本当にアレコレやりました。効果があったのは、リーディング対策でした。英語で会話ができるようになりたくてやっていたほかの勉強と追随させるようにしたら、私はスコアが伸びました。

ーーどんな方法ですか?

室井:リーディングは、スラッシュリーディング(長文を目で追い、情報や意味のかたまりごとにスラッシュ</>で区切り、訳しながら読んでいくこと。読解速度があがる学習法として知られています)を自分なりにアレンジして英文を前から読む、という方法が効きました。

蛍光ペンを使って、品詞ごとに色分けしたり、修飾関係を整理したりしていくうちに理解力が高まったようです。英語を前から読む力を養ったら、リスニングも頭に入ってきやすくなったという実感があります。

室井さんが実際に学習に使っていたテキスト

発音やイントネーションは、大学での言語学の授業がきっかけになりました。「Better」は良く使う単語だけれども、日本人には発音しにくい。「舌を丸めるように発音してみて」と教わったら、ネイティブのように発音できたことがとても楽しかったんです。私は、アメリカへの憧れがすごかったから(笑)。 

シャドーイング(音声を聞きながら復唱する訓練方法)を繰り返し、ネイティブスピーカーの発音を真似をしていきました。

学びの動機が大切

「めぐる星天英会話カフェ」のコーディネーターとして活躍する室井さん

ーー現在の室井さんのスタート地点ともいえる大学時代と、英語が苦手だった高校時代の違いはどんなことですか?

室井:学ぶモチベーションの違いでしょうか。私は、いわゆる「受験英語」の成績が本当に悪かったんです。ところが、留学生を通じて「アメリカ文化」と出会ったことや、英会話の楽しさが明確な学ぶ動機になったことで、教科書的な勉強も少しずつ理解できるようになりました。

英語でコミュニケーションをとる楽しさがベースにあり、その楽しさが原動力というかガソリンになっていた感じです。知識のインプットとしてYouTubeも役に立ちました。

ーーどんな動画をご覧になっていたか、参考に教えていただけますか?

室井:いわゆる「ジャパニーズアメリカン」、日本人だけどアメリカで生まれ育った両方のカルチャーを知る人のチャンネルは、言語だけじゃなく文化的な理解を深められるので好きでした。

逆に全く日本の文化とは関係ない、自分と同世代のユーチューバーのチャンネル。ライフログみたいな、普通の日常を観られる動画も観ていました。そこでは、共感したり、違いを感じたりして、自分にはない価値観を知りました。さらに実際に単語やフレーズを使ってどのように表現しているかを面白く学べました。

ありのままの自分を表現できる手段

ーー英語をまさにツールとして、さまざまなことへの知見を深められたんですね。

室井:私は学習を続けるなかで「英語がありのままの自分を表現できる手段」だという気付きがありました。

たとえば内向的、コンサバティブ(保守的)、他人の目を気にするといったステレオタイプな日本人のイメージを、私自身は少し窮屈だと感じます。英語でのコミュニケーションやソサエティー(社会)に自分の本当の気持ちに結びつけて発言できる場所を見つけられました。

アメリカ文化に触れたときに、リベラルで、個人の考え方や表現を大切にしていると感じたし、自分の性格にあってるなと思ったんです。

もちろん今でも日本語の方が英語より圧倒的に自分を表現できますが、英語的な表現や、何かを口にしたときのリアクション……「どんどん言っていいんだよ」とでもいうような雰囲気が快適です。

留学先での室井さん

ーー話す言葉が、思考や個性にも影響するということですね。

室井:言語がパーソナリティーに結び付くという実感はあります。私は、1年間アメリカに留学して、コロナ禍に帰国して日本で就職したんです。

同時期に入社したメンバーによると、帰国したばかりで、服装や振る舞い、メールの文面からして「超アメリカンな人」だったそうです(笑)。最近は「日本人ぽくなった」らしく、意識していなくても生活環境や、その文化から影響を受けていることを実感します。

あまり意識していなかったんですが、アメリカにいるときは、自己肯定感が高かったことに気がついたんです。たとえば、外見や服装を「かわいい」「かわいくない」と誰かと比較する。日本では、そういうトピックが良いことも悪いことも話題になることがよくありますよね。

だから、自分が「ダサいんじゃないか?」「これでいいのだろうか」と不安になることがあるんです。アメリカにいる間は、何の疑問もなく「どんなルックスでもいい」と暮らしていました。そんな雰囲気が生きやすいなと思っています。

実力を証明するための目標

ーー室井さんがTOEIC L&Rだけでなく、TOEIC Speaking & Writing Tests(以下、TOEIC S&W)も受験されたきっかけを教えてください。

室井:仕事では、英語を使って、海外からの問い合わせ窓口となることや、英会話カフェ事業などを担当しています。バイリンガルとして、パフォーマンスで「これくらい喋れます」と示すことはできますが、資格や検定のようにわかりやすく実力を証明するものがなかったんです。

ちょうど2022年頃はコロナ禍も落ち着きだしたころ。時間が取れたこともあり、TOEIC Testsを受けて、実力を測ってみようと考えました。

英語の4技能、「リスニング」「リーディング」「スピーキング」「ライティング」のなかで、わたしが得意なものは「スピーキング」。次はおそらく「ライティング」で、「リスニング」「リーディング」はむしろ不得意。TOEIC L&Rのスコアが800点に届いたとしても「これだけ喋れます」とアピールしたときに、説得力に欠けると思いました。

TOEIC S&Wも受験して、IIBC AWARD OF EXCELLENCEを受賞できれば、わたしの「得意」が大きな武器になると考えました。実際に表彰していただいて、きちんとステップアップできたことを実感しています。

(前編・了)

IIBC AWARD OF EXCELLENCEを受賞した室井さんを「英語学習の成功者」だと感じた読者が多いかもしれません。しかし、自由に英語を使えるスキルを身につけた室井さんでも、ジレンマを感じることや、挫折してしまいそうなときがあるといいます。

続く後編では、TOEIC Testsでのスコアへの想いや、コーディネーターをつとめる「めぐる星天英会話カフェ」についてお話をうかがいました。後編の公開は5月6日(月)18:00です。

【関連記事】


hatenaはてブ


この記事の関連キーワード