株式会社AQ Group(以下、AQ Group)は、埼玉県さいたま市に、8階建ての純木造の本社ビルを建設しました。こちらの本社ビルは、「普及型純木造ビル」のプロトタイプとして、普及できる構法と価格帯への、実証実験ビルでもあるといいます。
エントランスは組子格子耐力壁から、光が差し込む吹き抜けで、開放感があります。高耐力組子格子耐力壁となっており、組子による意匠性も兼ね備えつつ、住宅用耐力壁の14倍の強度があります。
普及に向けた構法と価格帯
これまで純木造中規模建築物の普及の課題として、「耐震性能」「耐火性能」「コスト高」「施工体制」といった点がありました。
今回AQ Groupは、技術力と構想力でこれらの課題点をクリアし、中小ゼネコンや工務店でも建設できる「純木造中規模建築物」の実証実験を完了。日本の社寺建築のように、環境に適した中規模木造のスタンダードになることを期待しているといいます。
AQ Group本社ビルの建築費は坪145万円で、大手ゼネコンによる先導的な木造ビルに比べると1/2の費用とのこと。鉄骨鉄筋コンクリート造の約3/4と大幅に建築費を抑えられたそうです。
炭素貯蔵量が期待できる純木造建築
日本政府は、2015年のパリ協定での合意により、温室効果ガスの排出量を2030年までに2013年度比で26%削減すると発表しています。また、SDGsの観点で「地球温暖化防止」や「持続可能な森林管理」が求められています。
純木造8階建て新社屋の炭素貯蔵量は1,444t-CO2で、一般木造住宅に換算すると95棟分。CO2排出量削減に至っては鉄筋コンクリート造と比較すると43%削減しているそうです。
炭素貯蔵量とは、木材利用が地球温暖化防止に寄与していることを対外的に示す指標の1つ。木は建材や家具になっても、燃やさない限り大気中から吸収したCO2は放出されることはありません。そのため木材は「炭素の缶詰・貯蔵庫」などとよばれることがあります。木でできたものを使うことは、手元に炭素を貯蔵しているのと同じことになるそうです。
外務省|日本の排出削減目標
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page1w_000121.html
純木造中規模建築普及に向けたさらなる試み
今回の本社建設では、日本で最多の木造建築職人による施工を実施。地域の工務店や中小ゼネコンに向けて、AG Groupで培った中規模木造建築に関するノウハウの提供を行いました。
今後は建築業界全体のさらなる連携を経た合理化とコストダウンを見据えているそうです。
<参照>
日本初※、純木造8階建てAQ Group本社 今までの木造ビル建設の1/2の費用、坪145万円で実証実験ビルが完成
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