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ポリコレの意味とは?具体例や、課題・推進のための方法など基礎知識を解説

U-NOTE編集部

2024/04/09(最終更新日:2024/04/09)


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特定のグループへの差別や偏見を助長する表現を避け、社会的・政治的に中立かつ公正な表現を使用する「ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)」。近年、企業が活動を行う上で押さえておきたい重要な事項です。

本記事では、そんな「ポリコレ」について基礎知識を解説。ポリコレの重要度が高まっている背景や、ポリコレの具体例もご紹介しています。

本記事の内容をざっくり説明
  • ポリコレの重要性が高まっている理由とは?
  • ポリコレの具体例をご紹介
  • ポリコレを推進する際の課題とその解決方法は?

 

ポリコレの意味

「ポリティカル・コレクトネス(political correctness)」の略語である「ポリコレ」。直訳で「政治的正しさ」や「政治的妥当性」を意味する言葉です。ポリコレは、差別的な表現を避け、社会的・政治的に中立かつ公正な表現を使用することを指します

例えば、医療の分野で「保健婦助産婦看護婦法」の一部改正により、資格名称が変更されたことはポリコレの代表例として知られています。その改正では、女性は看護婦、男性は看護士と呼ばれていたのが「看護師」に、女性は保健婦、男性は保健士と呼ばれていたのが「保健師」に名称が統一されました。

性別や人種など属性によって呼称を分けることが偏見に繋がることを懸念して、中立的な表現に改める動きを総称して、ポリコレと呼ばれています。

参照元:厚生労働省「保健師助産師看護師法等の主な改正経緯

 

ポリコレが始まったのはいつから?

ポリコレという言葉は、1960年代に新左翼が使うようになったのが始まりと言われています。その後、1990年代のアメリカで社会的・政治的に批判対象を批判する意味で使われるようになりました。

今では、政治的正しさや政治的妥当性を説明するようなシーンに留まらず、ジェンダーや民族、人種など特定のグループへの偏見や差別を助長することを防ぐ目的で、世界各国で使われています。

参照元:計画議論適正化のための ポリティカル・コレクトネス(PC)意識

 

ポリコレの重要性が高まっている理由

近年、ポリコレに注目が集まっているのはなぜなのでしょうか。ポリコレの重要性が高まっている理由を解説します。

多様性を尊重する社会への変容

近年、世界的に多様性を尊重する意識が高まっています。異なるバックグラウンドを持つ人々が集まる多様性のある社会では、イノベーションや新しい発想が生まれやすいとされています。

ポリコレは、人種・性別・国籍・宗教・年齢など、多様な価値観や思考を有する人材を差別・排除する動きを防止することに繋がるため、注目されています。

雇用の拡大(ダイバーシティ経営)

雇用の拡大が推進されていることも、ポリコレの重要性が高まっている理由のひとつです。

雇用の拡大、つまりダイバーシティ経営とは、性別や年齢など属性の多様性だけでなく、キャリアや経験など働き方の多様性も含めて、個々の持つ能力を発揮できる環境を作り、自社の競争力強化に繋げる経営のことです。日本では経済産業省が推進しており、多くの企業がダイバーシティ経営を取り入れています。

ポリコレのひとつに、求人広告での表現があります。年齢や性別などによって条件や取り扱いに違いを作らないよう意識することで、雇用の拡大が期待できます。

関連記事:ダイバーシティの意味とは?インクルージョンとの違いや種類などを紹介

企業価値の向上

市場の成熟により、企業の競合優位性に大きな差が見られなくなってきています。そうした中で企業が今後も長く事業を続けていくためには、企業そのものの価値の向上が必要です。特に近年は、一般消費者が企業の言動を注意深く観察しており、ちょっとした失言はSNSを通じてすぐに拡散されてしまいます。

ポリコレにより、一貫して中立かつ公正な表現や活動を行っている企業は、それだけで一般消費者から信頼性の高い企業として認識され、企業価値を向上できます。

 

ポリコレの具体例

実際どのような動きがポリコレに該当するのでしょうか。人種や性別、職業や服装など10種類のカテゴリーにおけるポリコレの具体例をご紹介します。

人種

ポリコレの代表例のひとつが人種における表現の変更です。

ポリコレにおける人種差別を避けるため、「肌色」という表現ではなく「ペールオレンジ」や「うすだいだい」という表現を使用しているメーカーが増えてきています。肌の色は人種によって異なり、肌色という名称が固定観念を植え付ける可能性があるためです。

参照元:東京新聞Web「ファミマが「はだいろ」表記の下着を自主回収 社員らから「不適切な表現」

性別

ポリコレの影響により、特定の性別を連想させる呼称が変更されています。

例えば、男性を連想させる「カメラマン」「チェアマン」「ビジネスマン」などの言葉は、それぞれ「フォトグラファー」「チェアパーソン」「ビジネスパーソン」と特定の性別を示さない呼び方に変更されています。

女性を連想させる「看護婦」「保母」なども、現代ではそれぞれ「看護士」「保育士」という名称が使われるようになりました。

宗教

ポリコレにより、多様な宗教への理解を深め、信念を尊重する姿勢を持つことが重要視されています。宗教の選択は本来自由なものです。特に日本では憲法によって「信教の自由」が保障されており、各個人がさまざまな宗教を選択しています。

一口に宗教と言っても、日本だけでも仏教・神道・キリスト教など多くの宗教文化が存在します。多くの人は、自身が信仰している以外の宗教に関しては知識が乏しく、理解も不足しているものです。それ故に、特定の宗教を信仰する方々を傷つけてしまうケースは少なくありませんでした。

参照元:外務省「E.思想、良心及び宗教の自由(第14条)

職業

ポリコレという考え方が広く認知されることで大きく変化したのが職業の名称です。代表的なところでは、看護婦・看護士を「看護師」として資格名称を統一したり、スチュワーデス・スチュワードという呼称が廃止され、「客室乗務員」「フライトアテンダント」「キャビンアテンダント」に改められたりなどの動きがあります。

性別関係なく従事できる職業である他、業務内容にも差がないためあえて性別によって名称を変更する必要はないのではないかという議論から、特定の職業の表現が見直されています。

参照元:JAL「制服の歴史-JAL客室乗務員

服装

服装の規定は性別による影響が大きく、女性はスカート、男性はズボンを穿くという考えが一般的でした。ポリコレの考えが広く普及したことにより、服装の規定も差別にあたるのではないかとして注目を浴びています。

代表的なのは学生服です。女子生徒はスカート、男子生徒はズボンと規定する学校が多い中で、一部の学校と地域で学生服の性差をなくす取り組みが実施されています。性的指向への配慮にも関係があるとして、性別による着用規定は不要であるとの考えが広まってきています。

参照元:衆議院「学校における標準服(制服)着用に関する質問主意書

敬称

名前を呼ぶ際の敬称も、ポリコレの影響により変化が見られています。日本では従来、男性を「◯◯君」、女性を「◯◯さん」と呼ぶのが一般的でしたが、近年は多くの企業や学校で「◯◯さん」と統一して呼ぶ動きが広まってきています。

英語における敬称にも変化が見られています。男性は「Mr.(ミスター)」で統一されていましたが、女性は未婚の場合は「Miss.(ミス)」、既婚の場合は「Mrs.(ミセス)」と結婚の有無によって敬称の使い分けがありました。現在では女性の敬称を婚姻状況で分けるのは差別的だと考えられており、「Mis.(ミズ)」で統一されています。

性的指向・性自認

ポリコレの考え方が広まったことで、多様な性的指向や性自認の人を尊重する動きも見られています。性的指向とは、恋愛や性愛に関する説明をする際に使われる言葉のことです。恋愛や性愛の対象は、異性・同性の他にバイセクシュアルやパンセクシュアルなども存在します。一方、性自認とは、自分の性別をどのように認識しているのかを表現する際に使われる言葉です。

最近ではアンケート回答時の「性別」の欄に、男性・女性・その他という選択肢が用意されていることも多く、性的マイノリティへの配慮がいたるところで見られています。

従来は、異性愛以外の指向性は非難や侮辱、差別の対象となっていました。現在は性的マイノリティのあり方を表現する言葉として「LGBTQ」という概念が広まったことで、特定の性的指向を受け入れる社会へと変化してきています。

参照元:東京レインボープライド2024「LGBTQとは

科学

科学の一分野である遺伝学でも、ポリコレの影響によって用語の改訂が行われています。代表的なのは「優性遺伝」「劣性遺伝」という表現です。優性遺伝は「顕性遺伝」に、劣性遺伝は「潜性遺伝」に用語の変更が行われています。

元々、優性だから優れている、劣性だから劣っているという意味は含まれていませんが、使われている単語から優劣を連想させてしまうため、中立的な表現に変更されました。

参照元:日本遺伝学会「遺伝学用語改訂について

医学

ポリコレという考え方の普及によって、医学における疾病の名称も見直しが行われています。今では当たり前に使われている「認知症」はかつて痴呆や痴呆症と呼ばれていました。痴呆に対する偏見や誤解を防ぐため、2004年に厚生労働省が改定を行い、現在では認知症という用語が使用されています。

他にも、1999年に「伝染病」という名称が「感染症」という言葉に置き換えられたり、2023年に「糖尿病」という呼称を「ダイアベティス」変更することが提案されたりと、特定の用語から想起されるイメージによって偏見や差別を助長することを避けるため、さまざまな疾病の名称の見直しが行われています。

参照元:厚生労働省「「痴呆」に替わる用語に関する検討会報告書

参照元:m3.com「糖尿病を「ダイアベティス」に、新たな呼称案を提案

求人広告

求人広告を掲載する際も、ポリコレの観点で表現に配慮することが求められています。その際、チェックしておきたいのが「男女雇用機会均等法」です。第5条には、採用において性別を理由とした差別の禁止について記載があります。

この法律では、性別によって対象を限定したり、いずれかの性別を優先したりなど、男女で異なる取り扱いをすることを禁ずるということが説明されています。男女雇用機会均等法を意識することで、ポリコレに反する表現を避けられます。

参照元:厚生労働省「男女雇用機会均等法の あらまし」P8

 

ポリコレを推進する際の課題と解決方法

企業としてポリコレを推進する際、2つの点が課題として挙げられます。1つは、慣習的・無意識的に使用されていた言葉が使えなくなること、もう1つは囚われすぎて発言がしにくくなることです。それらの課題を解決するための解決方法をご紹介します。

慣習的・無意識に使用されていた言葉が使えなくなる

ポリコレを推進する際、慣習的・無意識に使用されていた言葉が使えなくなる点はひとつの課題です。例えば、「肌色」という表現の見直しは参考になる事例です。企業として何らかの情報を発信する際は、こうした慣習的・無意識に使われている言葉を一つひとつ見直す必要があるため、ある程度表現が制限されてしまいます。

ポリコレを推進しつつ表現の幅を狭めないためには、言い換えの表現を自身の中にストックしておくのがおすすめです。

囚われすぎて発言がしにくくなる

ポリコレを意識しすぎると発言がしにくくなってしまいます。一つひとつの表現に対して敏感になるのは良いことですが、一方でポリコレに配慮しすぎて言葉選びに疲弊してしまうケースも少なくありません。

ポリコレに囚われすぎないようにするには、表現のガイドラインを作成するのがおすすめです。性差別や人種差別を助長する内容になっていないかを複数人の目を通して確認することも、ポリコレに囚われすぎないための解決方法のひとつです。

 

ポリコレを推進するために実施したい対策

ポリコレを推進するためには、まずはポリコレに関する正しい知識の習得が必要です。ビジネスパーソン個人では、ポリコレに関連する書籍での勉強がポリコレに反する言動を避けるための第一歩となります。ネット炎上のリスクについて学べるセミナーを受講することもおすすめです。

企業としては、ポリコレに関する講習会の実施が挙げられます。座学ではなくワークショップ形式にすることで、従業員が自分事としてポリコレについての理解や関心を深められます。

 

ポリコレの重要性を理解し、行動・言動をアップデートしよう

本記事のまとめ
  • ポリコレとは特定のグループへの差別や偏見の助長を避けるため、中立かつ公正な表現を行う活動のこと
  • ポリコレに囚われすぎないようガイドラインを定めよう
  • ポリコレに反する言動を避けるには正しい知識の習得と理解が必要

多様性を認め、受け入れることが推進されている現代では、企業がポリコレに反する活動や情報発信をしてしまうことは企業イメージを下げるリスクに繋がりかねません。まずはポリコレの重要性を正しく理解することが必要です。正しい知識に基づき、行動と言動を現代にあわせてアップデートしていきましょう。

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