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秘密保持契約(NDA)とは?記載すべき内容・締結するメリット、注意点を紹介

U-NOTE編集部

2024/04/08(最終更新日:2024/04/08)


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自社の秘密情報や機密情報の保護を目的に締結する「秘密保持契約」。情報が第三者に対して漏洩するのを防ぐために重要な役目を果たす契約書です。職種に関係なく、誰でも秘密保持契約を締結する可能性があります。

そんな秘密保持契約の基礎知識を解説します。契約書に記載するべき条項とポイントに加えて、締結するメリットなどもご紹介しています。

本本記事の内容をざっくり説明
  • 秘密保持契約を締結するメリットとは?
  • 秘密保持契約に関連する3つの法律をご紹介
  • 秘密保持契約を締結する際の注意点を解説

 

秘密保持契約(NDA)とは?

取引先と仕事を進める際に締結する必要のある「秘密保持契約」。営業・マーケティング・商品開発など、職種や部門に関係なく締結する機会の多い契約書です。この章では「秘密保持契約」の意味を解説。「機密保持契約」との違いもご紹介します。

秘密保持契約(NDA)とは

「秘密保持契約」とは、取引において自社の情報を秘密情報を開示する際に、無関係な第三者に対して情報を開示・漏洩・提供することを禁止する際に交わす契約書のことです。英語で「Non-Disclosure Agreement」と言うため、略して「NDA」と呼ばれることもあります。

秘密情報には、顧客データや財務データ、自社ノウハウなどさまざまな情報が該当します。取引を進める際にこれらの情報を開示する必要がある場合は、秘密保持契約を締結しておくことが必須。トラブルの発生を防いだり、問題発生後の責任の所在を明らかにしたりなど、万が一の場合に効果を発揮します。

秘密保持契約と機密保持契約の違い

「秘密保持契約」と「機密保持契約」は呼称が異なるだけで、秘密情報・機密情報を保護するという意味では大きな違いはありません。機密保持契約は英語で「Confidentiality Agreement」と言い、略して「CA」と呼ばれることもあります。

秘密保持契約として締結するのか、機密保持契約として締結するのかは企業によって異なります。

 

秘密保持契約(NDA)の締結が必要になるシーン

秘密保持契約は、通常外部には公開していない社内の秘密情報を開示するシーンで締結するのが一般的です。例えば、業務提携の話を進めたり、共同研究を検討していたり、外部のコンサルタントを導入したりする場合は、自社情報の開示が必要になるため、秘密保持契約を締結します。

開示する情報が自社にとって重要な内容であるほど、秘密保持契約は大きな意味を持ちます。締結なしでコミュニケーションを取ることがリスクになるのであれば、秘密保持契約を結んでおくと双方が安心して取引を進められます。

 

秘密保持契約(NDA)と関連する法律

秘密保持契約を締結する前に、関連する法律について理解しておきましょう。それは「個人情報保護保護法」「特許法」「不正競争防止法」の3つです。これらの法律との関係を知ることで、適切な内容・タイミングでの契約締結が可能になります。

個人情報保護法

秘密保持契約と関連する法律のひとつが「個人情報保護法」です。個人情報保護法とは、個人の権利や利益を守りつつ、氏名や住所などの個人情報を企業が有用に活用するための法律です。

開示する秘密情報に顧客データが含まれている場合、秘密保持契約は個人情報保護法の規定を考慮した内容で締結する必要があります。

参照:政府広報オンライン「「個人情報保護法」をわかりやすく解説 個人情報の取扱いルールとは?

特許法

「特許法」とは、発明の保護と利用を図ることを目的とした法律のことです。産業上利用可能かつ高度な技術で、産業の発達に寄与すると判断された発明が特許法により保護を受けられます。

開示する秘密情報の中に新規性のある技術の情報が含まれている場合、秘密保持契約を締結する前にまず特許の申請を行いましょう。特許法には、公知の情報では特許の申請が行えないという規定があります。将来、特許を取得する可能性がある情報は秘密保持契約前の取り扱い方や、技術のどこまでを開示するのか検討する必要があります。

参照:特許法

不正競争防止法

不正競争防止法」は、事業者間の公正な競争を確保するために制定された法律です。不正競争の定義のひとつに「営業秘密の侵害」という項目があります。不正競争防止法により、企業が持つ独自情報は基本的には保護されています。

しかし、不正競争防止法が適用される情報には3つの要件があるため、範囲外の情報については法律により保護されません。より広範囲の情報を保護するには、秘密保持契約の締結が必要です。

参照:経済産業省「不正競争防止法の概要

 

秘密保持契約(NDA)を締結するメリット

秘密保持契約は、自社の秘密情報を守るために締結する契約書ですが、他にもメリットがあります。2つのメリットがあることを知っておけば、必要なシーンで適切に秘密保持契約を結ぶことに繋がります。

不正競争防止法の範囲以上の秘密保持を行える

秘密保持契約を締結すれば、不正競争防止法の範囲以上の秘密保持を行えます。

不正競争防止法とは、事業者間の公正な競争を妨げる行為を取り締まる法律のことです。不正競争防止法の対象のひとつに「営業秘密の侵害」という項目があります。これにより、営業活動を行う上で企業が生み出してきたさまざまな営業秘密は法的保護を受けますが、法律の保護を受けるには、以下3つの要件を満たす必要があります。

  1. 秘密として管理されていること(秘密管理性)

  2. 事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)

  3. 公然と知られていないこと(非公知性)

つまり、上記の要件を満たしていない情報は、不正競争防止法による保護の対象になり得ません。秘密保持契約では、この秘密情報の範囲を広げることが可能です。

参照:経済産業省「不正競争防止法の概要

万が一の場合、損害賠償請求できる

秘密保持契約を締結しておけば、万が一相手方が情報を漏洩したり、契約内容以外の用途で利用したりした場合に損害賠償を請求できます。情報漏洩によって損害賠償が発生した事例は多く、賠償額はさまざまです。

秘密保持契約では損害賠償請求だけでなく、契約に違反する可能性があると認められた場合に仮処分を申し立てられる「差止請求権」も規定することができます。情報漏洩の被害を最小限に抑えられる可能性があるので、損害賠償に加えて項目に加えておきましょう。

参照:特許庁「差止請求権の在り方について

 

秘密保持契約(NDA)を締結するときの注意点

秘密保持契約を締結するときに注意したい2つの点をご紹介します。契約書の内容を決める前に確認しておきたいポイントの他、締結後の注意点も解説しています。

秘密情報範囲外の情報が漏洩する可能性がある

秘密保持契約の書類を作る際に注意しておきたいのは、秘密情報以外の情報の漏洩です。秘密保持契約書では、最初にまず秘密情報の定義や内容、範囲を明記します。双方が内容に同意し、締結が完了すれば秘密情報として定義した内容や範囲の情報は保護されますが、逆に言えば、範囲外の情報は契約書の適用外となります。

範囲外の情報が漏洩する可能性があることを念頭に、どこまでを範囲として含めるのかを慎重に考えなくてはなりません。

情報開示をする際の経緯が複雑になる

秘密保持契約では秘密情報の範囲を明記するため、開示する情報がその範囲に含まれているかどうかは社内で確認を取る必要があります。社外に情報を出すまでの経緯が多少複雑になることは締結前に留意しておきましょう。あらかじめ確認フローを定めておくのがおすすめです。

情報開示に関する決まりをルール化し、社内で共有・周知しておくと適切に情報を取り扱える可能性が高くなります。

 

秘密保持契約(NDA)の内容・条項

秘密保持契約に必要な条項や書くべき内容は、どんな秘密情報を取り扱うのかによって異なります。ここでは記載するべき基本的な条項と、その条項が必要な理由を解説します。

タイトル

タイトルは「秘密保持契約」と書くことが一般的です。企業によっては「機密保持契約」とタイトルを付ける場合もありますが、意味はどちらも同じです。

双方の同意ではなく、一方的に契約書の内容に制約させる場合には「秘密保持誓約書」というタイトルを付けます。

契約の目的

契約の目的とは、条項より先に記載されている前文のことです。契約書を締結する両者を「甲」「乙」と定義する他、何に関する秘密保持契約なのかを明記するのが一般的です。

秘密情報の定義や内容、除外事由

この項目ではどんな情報を秘密情報として扱うのか、その定義と内容を記載します。一般的な秘密保持契約では、開示者が受領者に対して開示する全ての情報を秘密情報と定義することがほとんどです。その際は、口頭や電子ファイル、文書など開示する際の媒体の如何を問わないことも明記しておきましょう。

除外事由についても定める必要があります。除外事由とは、秘密情報に該当しない例外のことです。例えば、開示された情報が公知だった場合や受領者がすでにその情報を保有していた場合などが挙げられます。

秘密保持義務

秘密保持義務の項目は、秘密保持契約の中核をなす部分です。秘密情報の取り扱いに関するルールを記載します。受領者は基本的に、開示された秘密情報を第三者に伝えることはできませんが、企業によっては弁護士や関連会社などへの開示は可能にしてほしいと要望される可能性もあります。

そうした場合に備えて、開示できる範囲を指定しておく他、開示する際の手続きについても明記しておきましょう。

目的外使用の禁止

この項目では、項目名の通り目的外の使用を禁ずるという内容を記載します。「目的以外での使用を禁ずる」と曖昧な表現をしてしまうと、受領者側で拡大解釈されかねません。秘密情報の漏洩や目的外での使用などのトラブルが発生する可能性があるので、利用可能な範囲は明確に記載しましょう。

例えば、協業の話を進めるにあたって秘密情報の開示が必要なのであれば、秘密保持契約には「受領者は、開示者が開示・提示した情報を◯◯に関する協業のみで使用する」という意味の文章を記載します。

知的財産権の帰属

知的財産権の帰属とは、知的創作活動によって生み出された成果物が誰に帰属するのかを明示する条項です。

知的財産権とは、知的創作活動によって生み出された成果物を創作者が財産として保有するための制度のことです。知的財産権には「知的創造物についての権利」と「営業上の標識についての権利」の2種類があり、発明した技術や物品デザインなどの権利については「知的創造物についての権利」に含まれています。

知的財産権の帰属は、他社と協業し共同開発を進める際には定めておくと安心です。必ずしも定めなければならない条項ではないので、秘密保持契約を締結する目的と照らし合わせて条項の有無を決めましょう。

参照:特許庁「知的財産権について

秘密情報の返還・破棄

秘密情報の取り扱いに関する条項のひとつです。受領者は、契約終了や開示者から指示や請求があった場合に、秘密情報の返還・破棄の義務があります。この条項が定められているため、受領者は秘密情報を自身の判断で破棄することができません。

電子媒体によって秘密情報を開示している場合は、返還・破棄が完了したかを確認することが難しいため、書面での報告を義務付けておくと安心です。

損害賠償

条項に違反した場合に備えて、損害賠償の内容も記載します。民法416条により損害賠償の範囲は、条項に違反したことによって生じた障害の賠償と規定されています。

損害には「通常損害」と「特別損害」の2種類があります。不履行の場合は通常損害に当たるため、条項に違反した場合に賠償義務があることを明記すれば問題ありません。

一方、特別な事情により損害があり、かつその損害が予見すべき内容であった場合は特別損害に該当します。より重要な秘密情報を開示する場合には、通常損害・特別損害どちらについても明記しておくことが望ましいです。

参照:民法

契約の有効期間と存続条項

秘密保持契約は、契約の有効期間を定めるのが一般的です。期間については、秘密情報の種類や価値、秘密保持契約締結の目的に応じて定めるのが基本です。例えば、技術情報の場合は2〜3年ほどを契約の有効期間とするケースが多くあります。

存続条項は、秘密保持契約の有効期間が終了した後も一部条項の効力を存続させることを記載する項目です。存続条項の有効期間は、秘密情報の内容によります。1〜2年程度が一般的ですが、秘密情報に個人の情報が含まれている場合は期間を設定しない方が安心です。

紛争解決

秘密保持契約をめぐって万が一、紛争が起きた場合に備えて記載しておきたい条項です。紛争を解決するには、公正中立な第三者が当事者間に入り、話し合いを行って解決を図るのが一般的です。この項目では、その公正中立な第三者として、第一審専属管轄裁判所を記載します。

参照:政府広報オンライン「法的トラブル解決には、「ADR(裁判外紛争解決手続)」

 

秘密保持契約(NDA)を結ぶ際に知っておきたいポイント

秘密保持契約を結ぶ際に知っておきたいポイントを4つご紹介します。締結までの作業をスムーズに行うための注意点や、保護したい情報を保護するために大切なことなどを解説しています。締結前に必ず目を通しておきましょう。

秘密保持契約(NDA)を締結するタイミング

秘密保持契約は、情報の開示を行う前に締結するのが望ましいとされています。締結前に秘密情報のやり取りをしてしまうと情報漏洩の可能性や、自社情報を利用されてしまう可能性があり、非常にリスクが高いと言えます。

万が一、契約締結前に打ち合わせが進み、自社情報を開示してしまっている場合には、契約書に締結前の開示情報も秘密情報として取り扱う旨を記載しましょう。

当事者が調印する

秘密保持契約の調印は、必ず当事者同士が行いましょう。調印とは、文書を理解・同意したことを示す際の署名や押印のことです。重要度の高い契約を締結する際には、調印という言葉が使われます。

秘密保持契約の当事者は、企業同士でやり取りする場合はその企業の代表です。個人と企業で契約を締結する際は、企業側は企業の代表者が、個人側はやり取りをしている個人が当事者となり調印を行います。

電子契約でも秘密保持契約(NDA)は締結できる

秘密保持契約は、電子契約でも締結することが可能です。紙の書類は締結までに時間がかかる上、郵送するコストや手間もかかります。電子契約を利用すればオンライン上で秘密保持契約に関する作業が完結するため、郵送の手間がかからず、締結が完了するまでの時間も短縮できます。

中には、締結済みの秘密保持契約書を検索する機能を備えたサービスもあります。締結までの工数や手間を削減できるだけでなく、保管・整理・閲覧もスムーズに行えるのは、電子契約の特徴です。秘密保持契約の年間対応件数が多い場合や、契約書をクラウドで管理したい場合などは、電子契約での締結を検討してみてください。

収入印紙は必要ない

秘密保持契約は、収入印紙の貼り付けが不要な文書です。日本では印紙税法により、課税文書には印紙税が課されると定められています。印紙税に該当する文書は令和5年4月時点で20種類ありますが、秘密保持契約はそのいずれにも該当しないため、収入印紙は不要です。

参照:国税庁「印紙税額

 

秘密保持契約(NDA)の違反があった場合の対処法

秘密保持契約の違反があり、それによって自社に損害が発生した場合、損害賠償の条項に基づいて損害賠償の請求を行いましょう。損害賠償の金額は、実際の損害を元に請求側が算定します。金額に対して明確な根拠を求められる点は留意しておきましょう。

秘密保持契約において、違約金の条項を設けている場合には違約金の請求も可能です。

 

秘密保持契約(NDA)の必要性・条項を理解しよう

本記事のまとめ
  • 秘密保持契約は情報開示前に締結することが重要
  • 秘密保持契約は電子契約も可能
  • 契約書に記載した範囲外の情報の取り扱いについても理解しておこう

秘密保持契約は、締結するタイミングも非常に重要です。基本的には情報を開示する前に、必ず秘密保持契約を結びます。また、締結する目的にあわせて条項を追加したり、扱う秘密情報に合わせて内容を変更したりして、契約書としての有効性があることを確認したうえで契約を結ぶことも大切です。

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