「文章が書けないという理由だけで、自分の夢をあきらめざるを得ない人がいる」
そう語ってくれたのは、ウェブ小論文塾代表として、日々小論文の添削・指導をおこなっている今道琢也さんです。
小論文試験は、公務員をはじめとして、マスコミや医療関係など多くの業界で実施されています。興味のある業界だったとしても、小論文という言葉を聞いただけで、試験から目をそむけたくなる人はいないでしょうか。
今回は、2018年の発売からいまも小論文対策本として人気を博しているという『落とされない小論文』の著者である今道琢也さんに、小論文試験を前向きにとらえる方法や、いますぐ実践可能な書くときのコツをお聞きしました。
前編はこちらから「小論文試験を受けたくない……前向きにとらえる方法を教えて! 『落とされない小論文』今道琢也さんに聞く【前編】」
小論文を苦手な人が多い理由は「ただ習っていないだけ」
―――小論文試験になかなか受からない人がいるのはなぜでしょうか?
今道琢也さん(以下、今道さん):自己流で書いてしまい、小論文として成り立っていないケースが考えられます。とはいえ、学校で小論文の科目があるわけでもないので、書けないのは当たり前なんですよね。
中学・高校で習う「国語」は、主に「読解力」をつけるためのものです。教科書を読んで、書かれていることの内容を理解するための勉強です。一方で、小論文では、出された課題に対して「あなたはどう思うか」を答える必要があります。
「自分の考え」を文章としてまとめる訓練は、学校教育の中ではそれほど多く行なわれていないので、小論文を書けない人がいてもおかしくはありません。
―――それでは、私たちが小論文を始める第一歩はどうしたらいいのでしょうか?
今道さん:自分の書いた小論文を、第三者に見てもらうことからはじめてみましょう。
本来はプロに教えてもらうのが効率が良いと思います。ただし、現実的に難しいのであれば、少なくとも、周りにいる第三者に見てもらうことが大切です。
たとえば、大学生であれば、教授やキャリアセンターの担当者に見てもらってください。第三者の視点で、自分では気付かない矛盾点や誤用表現などを指摘してもらえるでしょう。
ほか、家族や友達などの身近な人に読んでもらうのもいいでしょう。自分とは違う見方をしてくれるため、新しい発見につながります。
さらに、1人ではなく複数の人に見てもらえば、どんどん中身が改善されていきます。小論文を始める第1歩として、いますぐ実践できる方法といえますね。
周りと差を付けられる小論文を書くときのコツ
―――ほかに、合格に近づくための対策や心構えがあれば教えてください。
今道さん:少しでも早い段階で、小論文の対策をはじめることが大切です。小論文が苦手だからといって後回しにしていると、対策する時間が取れないまま当日を迎えてしまいます。
たとえば、東京の23区でおこなわれる公務員試験では、小論文を1,500字程度書く課題が毎年出ています。1,500字は原稿用紙4枚程度とボリュームが多いため、直前であわてて対策をはじめても太刀打ちできません。
ほかには、やはり新聞などを読んでプロの文章に触れることが大切ですね。伝わりやすい文章を書くコツが身に付くだけでなく、課題としてよく出る時事問題の知識も増えていきます。
―――試験直前の人でも役立てられるような、小論文を書くときのコツはありますか?
今道さん:はい、いますぐ実践できて、周りとも差を付けられるコツを2つだけお伝えします。
1つ目は「問題の意味をしっかり理解する」ことです。当たり前の話に思えるかもしれませんが、私が文章の添削をするなかで圧倒的に指摘が多い項目であり、もっとも大きな減点対象です。たとえば「…を踏まえて述べよ」「…に関連付けて考察せよ」など、細かな言い回しに十分に注意してください。
どれだけ文章を整え、誤字脱字をなくしても、問われていることに正しく答えていなければ評価はされません。まずは問題文をよく読み、意味を理解してから書きはじめるだけで、合格に近づく小論文が完成します。
2つ目は「具体的に書く」ことですね。読み手の頭のなかにイメージが浮かぶように書けるかどうかで、小論文の評価が大きく変わります。
たとえば、公務員試験では「防災対策をどう進めていくか」といった出題がよくあります。その場合、単に「住民の防災意識をもっと高めていくべきだ」だけだと、何をするのかほとんどイメージできません。
こういう場合は「町内会ごとに防災講習会を開催し、家具の固定をすることや、食料の備蓄が重要であることを伝えるべきだ」のように書けば、第三者が読んだときにイメージがしやすいですよね。
いま話したコツは、合格を左右する大事な項目にもかかわらず、受験者の多くが実践できていません。つまり、試験前に再度意識をしておくだけで、ライバルと差を付けられます。
―――最後に、小論文に苦手意識をもつ若者に、メッセージをお願いします。
今道さん:小論文は、少し勉強すれば上達が可能であるため、苦手意識をもつ必要はありません。試験が近い場合でも、先ほど話した2つのコツを実践すれば合格へ近づく小論文が書けるようになります。
小論文さえできれば自分の夢が叶ったかもしれないのに、苦手だからと逃げてしまうのは本当にもったいない話です。小論文試験をひとつのきっかけにして、文章力という今後の人生に役立つ大きな武器を手に入れてみてください。
インタビュイープロフィール
今道琢也
ウェブ小論文塾代表
1975年生まれ
高校時代に独学で小論文の書き方をマスターし、以後、小論文関連試験を次々に突破。大阪大学文学部(論文試験あり・当時)に現役合格。
翌春に再受験し、京都大学文学部(論文試験あり・当時)並びに慶應義塾大学文学部(小論文試験あり)に合格。
卒業後は、NHK(論文試験あり)にアナウンサーとして採用される。在職中に編成局長特賞、放送局長賞などを受賞。15年の勤務を経て独立し、ウェブ小論文塾を開講する。ていねいで的確な指導は、受講生からの圧倒的な支持を得ているという。
現在も『落とされない小論文』(ダイヤモンド社)をはじめとして、試験合格に近づくノウハウを凝縮した書籍を多数執筆している。
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