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仕事中の中抜けとは?勤怠管理の方法やテレワーク時の扱い方、運用時の注意点をまとめて解説

U-NOTE編集部

2024/03/15(最終更新日:2024/03/15)


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中抜けとは業務時間内に仕事から離れ、健康診断や予防接種、私用などを済ませることです。飲食業や旅館業などの「ピークタイムとアイドルタイムの差が激しい業種」では、長めの休憩時間として中抜けを利用するケースも多いです。

本記事では中抜けの意味や扱い方をまとめて解説。テレワーク中の中抜けの扱い方や、中抜けを適切に運用するための注意点も紹介します。

本記事の内容をざっくり説明
  • 中抜けの意味や別の言い方、休憩との違い
  • 勤怠管理やテレワークにおける中抜けの扱い方
  • 中抜けに関する注意点

 

中抜けの意味とは?

中抜けとは、業務時間内に仕事を離れることです。飲食店で忙しくない時間帯にスタッフを長めの休憩に出すような「会社都合の中抜け」と、子どもの送迎やスタッフ自身の用事を済ませるための「自己都合の中抜け」があります。

中抜けの別の言い方

業務時間内に仕事から離れる中抜けは、離席や中座などとも言い換えられます。

たとえば担当者の不在中に取引先から電話がきた場合、「〇〇は私用により離席しております。〇時に戻る予定ですが、折り返しはいつ頃がよろしいでしょうか?」のように伝えると丁寧です。

休憩との違い

中抜け中は給与が発生せず、その間業務命令を出してはいけません。この性質は休憩と似ていますし、中抜けを休憩時間として扱うことも多いです。

しかし、厳密には中抜けと休憩は違います。休憩は労働時間が6時間を超える場合に最低45分、8時間を超える場合に最低1時間与えなければなりませんが、中抜けにこのような規定はありません。

飲食業や旅館業など、忙しくない時間帯が長い業種では、長めの休憩として中抜けを出すことも多いです。しかし、事務のような時間帯による忙しさの差がない業種で私用による中抜けをする場合、休憩とは別に中抜けを取ることもあります。

 

勤怠管理における中抜けの扱い方

次に、勤怠管理における中抜けの扱い方について解説します。

休憩時間として扱う

中抜けを休憩時間として扱う場合、中抜けの時間の分、始業時間の繰上げか就業時間の繰下げをします。これは最もシンプルで運用しやすく、私用による中抜けで多く取られる方法です。

この場合、従業員は中抜け中に私用を済ませたうえで、所定の労働時間を確保します。

たとえば所定労働時間が8時間、中抜け時間が2時間だとしましょう。通常よりも2時間早く始業したり2時間遅く終業したり、始業と終業を1時間ずつ繰上げ・繰下げしたりすることで、8時間の労働時間を確保します。

この方法には「シンプルで運用しやすい」「従業員は有給を使わずに済む」というメリットがありますが、始業や終業の時間がずれることで従業員の生活リズムが乱れやすくなるデメリットもあります。

時間単位の有給として扱う

中抜けを時間単位の有給として扱う場合、先述の休憩時間として扱うケースと異なり、始業や終業の時間をずらす必要はありません。この場合は中抜け時間が休暇になるため、その日は所定労働時間を働く必要がないためです。

企業は時間単位での有給取得を従業員に強制できません。そのため、この方法で中抜けをさせる場合、従業員の同意が必要です。

この方法は始業・終業の時間をずらす必要がなく、従業員にとって生活リズムを崩さずに済むメリットがあります。企業にとっても、有給消化を促進できるメリットがあります。

ただし、時間単位で有給を取得できるのは年5日の範囲内です(労働基準法第39条第4項による)。企業には「有給付与日数が10日以上の従業員に対して年5日の有給を取得させる義務」がありますが、時間単位の取得分を、取得させる義務の5日分から差し引くことはできません。

また、時間単位での有給取得は労使協定の締結と就業規則への記載が必要です。

中抜けを挟み1日2回の勤務として扱う

中抜けを挟んで1日2回の勤務として扱う方法もあります。たとえば旅館業では忙しい朝の時間帯が終わった後に一度退勤し、夕方の再び忙しくなり始める時間から再び出勤する、という勤務形態が多いです。

この方法では中抜けを休憩時間として扱わないため、各勤務の労働時間と休憩時間に気を付けましょう。たとえば朝に6時間以上働くなら、朝の勤務時間のうちに45分以上の休憩を取らなければなりません。

健康診断や予防接種などの中抜けの扱い方

健康診断や予防接種など、会社が従業員に受けさせる検診があります。これを従業員の勤務時間中に中抜けさせ、済ませる企業は多いです。

この中抜けを賃金が発生しない時間とするか、賃金が発生する時間とするかは企業に委ねられています。検診は業務ではないため賃金を支払う義務はありません。厚生労働省は、この中抜けをどのように扱うかは労使協定で定めるべきとされています。

ただ、厚生労働省は「円滑な受信を考えれば、受信に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい」とも発信しています。また、法定の有害業務に従事する労働者に対して行われる「特殊健康診断」は業務の遂行に直接関係する健診であるため、中抜けであっても賃金を支払わなければなりません。

参考:健康診断を受けている間の賃金はどうなるのでしょうか?|厚生労働省

 

テレワーク中の中抜けの扱い方

最近はテレワークを取り入れる企業が増え、テレワーク中の中抜けをどう扱えばいいのか悩むことが多くなりました。テレワーク中の中抜けの注意点や取り扱いについて解説します。

テレワークで中抜けが多くなる理由

テレワークはオフィス勤務に比べて中抜けが多くなる傾向にあります。通勤中や休憩中に用事を済ませづらくなること、自宅で仕事をする場合は家事や育児、介護などと仕事を両立しなければならないことが理由です。

テレワークは従業員の通勤の負担を軽くしますが、通勤がなくなるからこそ、通勤中や休憩中に用事を済ませるのが難しくなります。

たとえばオフィスの近くや通勤経路に役場やクリニックがあれば、通勤中や休憩中の用事を済ませられます。しかし、自宅がこれらの施設から離れている場合、休憩中に出かけても時間内に戻ってこられないかもしれません。

自宅で仕事をするとなると、どうしても家事や育児、介護などが気にかかります。どうしても対応せざるをえない用事ができたり、「テレワークで通勤がないんだから、仕事の合間に家事くらい済ませてよ」と、パートナーに言われるケースもあるでしょう。

基本的な扱い方はオフィス勤務と同じ

テレワーク中でも、中抜けの基本的な扱い方はオフィス勤務と同じです。

中抜けを休憩時間として扱うなら、勤務時間が所定労働時間に足りるよう、始業や就業の時間を調整しなければなりません。時間単位の有給として扱う場合、1日2回の勤務とする場合も、オフィス勤務での中抜けと同じように扱います。

無断の中抜けは服務規律違反(サボり)になりかねない

オフィス勤務でもテレワークでも、無断の中抜けは服務規律違反になりかねません。平たく言うと、無断で中抜けして長時間戻らなかった場合、会社から「サボっている」とみなされてしまうでしょう。

服務規律違反とみなされると、減給や停職、降格などの懲戒処分を受ける恐れがあります。さすがにお手洗いやちょっとお茶を淹れる程度なら毎回報告しなくても問題ないでしょうが、家事や育児でしばらく離席するなら、報告・相談した方がいいでしょう。

 

中抜けに関する注意点

中抜けに関する注意点を4つ紹介します。正しい勤怠管理ができるよう、会社側はもちろん、従業員側でもこれらの注意点を把握しておきましょう。

中抜け中に業務をしてはいけない

中抜けを休憩時間として扱うとしても、有給や1日2回の勤務として扱うとしても、中抜け中は従業員が業務から解放されていなければなりません。そのため、中抜け中に業務をするように命令したり、みずから率先して業務をしたりしてはいけません。

何らかの業務をしている時間は労働時間となり、給与が発生するのです。

業務はしないが「待機命令」がある場合

中抜け中に業務はしないものの、待機命令がある場合も、その時間は労働時間として扱われます。たとえば「中抜け中に取引先から電話がかかってきたら、電話に出てね」のようなケースです。

実際には業務をしないが、業務命令や電話があったらすぐに対応できるように待機している時間を「手待ち時間」といいます。中抜けを休憩として扱う場合、手待ち時間は休憩時間として認められません。時間単位の有給や1日2回の出勤として扱う場合、中抜け中は勤務時間外となり、従業員に待機をさせてはいけません。

会社都合の移動時間は中抜けに含まれない

会社都合の移動時間や、移動中に業務をさせる場合、移動時間は中抜けに含まれません。たとえば営業担当者が商談先に電車で移動したり、私用で中抜けした従業員に対して「移動中にこの仕事を進めておいて」と指示したりした場合、その移動時間は労働時間に含まれます。

中抜けのルールを決め、就業規則に明記する

中抜け中の時間をどのように扱うのか、さまざまなケースを想定し、ケースごとの対応ルールを明確にしておきましょう。ルールが決まっていないと、給与計算や労働時間の管理が煩雑になったり、「人によって対応が違う」と従業員から反発が出たりするかもしれません。

ルールを決めたら、それを就業規則に明記することも大切です。ルールを決め、それをすべての従業員が確認できるようにすることで、公平な労働環境をつくれます。

なお、中抜けを休憩時間として扱う場合、始業時間の繰上げや終業時間の繰下げが必要になります。この場合、労使協定の締結は不要ですが、就業規則への明記が必要です。

労使協定の締結が必要なケース

中抜けを時間単位の有給として扱う場合、まずは時間単位の有給取得を認める旨の、労使協定の締結が必要です。労使協定では、次の項目を定めなければなりません。

【時間単位有給の対象者の範囲】

事業の正常な運営を妨げる場合に限り、時間単位有給の対象者の範囲を定められます。「育児や家事を行う従業員」のように、取得目的により対象範囲を定めることは認められていません。

【時間単位有給の日数】

年5日の範囲内で日数を定めます。

【時間単位有給1日分の時間数】

1日分の有給が、何時間分の時間単位有給に相当するのかを定めます。1時間に満たない端数は時間単位に切り上げます。

【1時間以外の単位で与える場合の時間数】

2時間単位のように、1日の所定労働時間を上回らない時間を単位として定められます。ただし、1.5時間(1時間30分)のような単位ではなく、1時間、2時間のような整数の時間を定めなければなりません。

参考:時間単位の年次有給休暇制度を導入しましょう!|厚生労働省

 

中抜けをめぐるトラブル防止には、勤怠管理システムがおすすめ

本記事のまとめ
  • 中抜けとは業務時間内に仕事から抜けること
  • 中抜け中は労働時間に含まれず、業務をしてはいけない
  • 中抜けに関するルールを決め、適切な管理・運用をすることが大切

中抜けは業務時間内に仕事から抜け、用事を済ませることです。この用事には健康診断や予防接種などの会社都合のもの、子どもの送迎や役場での手続きなどの私用があります。

中抜け中の時間は休憩や時間単位の有給として扱ったり、1日2回の出勤として一度退勤させたり、さまざまな扱い方があります。中抜け時間をどのように扱うとしても、この時間は従業員が業務から完全に解放されていなければならず、業務や待機をさせてはいけません。

中抜け時間をどのように扱うのか、ケースごとにルールを定め、就業規則に明記しましょう。勤怠管理システムの活用も効果的です。従業員ごとの労働時間を自動で集計・管理できるシステムを活用することで、中抜けをめぐるトラブルを防ぎやすくなるでしょう。

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