HOMEインタビュー なぜ、泥臭いこともしなきゃいけないのか AI×セキュリティーで世界を目指すChillStack代表・伊東道明さんが“目的意識”を大切にする理由:インタビュー第3回

なぜ、泥臭いこともしなきゃいけないのか AI×セキュリティーで世界を目指すChillStack代表・伊東道明さんが“目的意識”を大切にする理由:インタビュー第3回

菓子翔太

2024/02/07(最終更新日:2024/02/07)


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AIを活用した不正検知サービスやサイバーセキュリティーサービスを開発・提供している株式会社ChillStack。

三井物産セキュアディレクションとともに、AI時代のセキュリティー知識やノウハウを提供するeラーニング、ハンズオントレーニング(実践を交えた研修)事業も行っています。

現在28歳で、国際セキュリティーコンテストでの優勝経験もある同社の代表・伊東道明さんがChillStackを立ち上げてから今まで大切にしてきた考えを聞きました(全3回中3回)。

第1回「AIを使ったサイバー犯罪がはびこる!? 個人や企業にできる対策とは ChillStack代表・伊東道明さんインタビュー(1)

第2回「AIの回答精度が100%になる日は来ない? 生成AI時代、我々はどう生きればよいのか ChillStack代表・伊東道明さんインタビュー(2)

「自分の技術で社会課題の解決を」

―――なぜChillStackを設立されたのでしょうか?

もともと学生のころから、AIに関するセキュリティーの領域で研究を行っていて、論文などで研究成果を評価していただいたことがあります。
その経験をもとに、いろいろな企業から「これを作ってほしい」とお声掛けいただいたことなども背景にあって、セキュリティー分野で技術を提供できるような会社をつくろうと創業させていただきました。

―――なかなか起業する決断ができない人もいるなかで、どうして踏み切れたのかなと。

何かにチャレンジしたいという気持ちがとても強い性格であったことと、セキュリティー分野でAIを活用した製品が当時はあまりなかったこともあります。
あとは、どこかに入社すると、業界全体への貢献がし辛くなると思ったんですよね。。1つの企業に入社して技術提供をしても、1社のサービス改善を行っただけであまり面白いとは思わなかったんです。

いろいろな方が評価してくださった自分の技術を使って、社会的なインパクトが大きい課題解決を広く手がけられそうな会社をつくりたいと思いました。

―――どうやって仲間を集めていったんですか?

同じハッカソンで優勝した研究室の同期メンバーなどに声をかけて一緒に立ち上げました。

下から積み上げるだけだと……

―――これまでで1番難しかったことは何ですか。

順位づけするのは難しいんですが、1つ上げるとすると、基本的に全てをやらなきゃいけないことです。それだけやっていればいいということは、ほとんどなくて。

技術開発だけしていても、お客様に提供できません。課題の解像度を高め、どんな技術をどう使用することで解決するのかを考え、お客様に価値を届け、改善サイクルを回し、成長できる組織を作るなど、やることが無限にあります。それをきちんとやることが難しいし、大変ですね。

楽しいことばかりではありません。特に若い人はスタートアップって「メラメラして面白いところだ」と期待してきますが、泥臭いのは大企業と同じなんですよね。

大企業でよくある日報を書かなきゃいけないとか、会議がたくさんあるとか、そういう泥臭いことを乗り越えなきゃいけないのは、どこも一緒だと思います。

―――“基本的には全てをやる”とのことですが、見落としがないように、どういうところに気をつけていらっしゃいますか。

自分が代表だからかもしれませんが、とにかく“1番広い視野で物事を捉えること”が大事かなと思っています。

会社としての目標を考えたときに、今の立ち位置を踏まえて組織や製品をどうすれば良いのか、自分が何をしなきゃいけないのか。なるべく広い視野で目標から今やるべきことをしぼっていく。目的意識や本質を理解することをすごく大切にしています。

下から「これやらなきゃいけない」「あれやらなきゃいけない」と積み上げていくと、(ゴールにたどり着くために)忘れていることが絶対にあるんです。目的から考えれば、達成するために必要なことが確認できます。

もちろん下から積み上げていくこともやらなきゃいけないんですが、下からのみになりがちなので、頭のなかで両軸を行ったりきたりしながら進めていくことが大切かなと。

―――今やっていることに精いっぱいになるのではなく、きちんとゴールから逆算していくことが大事?

おっしゃる通りです。

―――U-NOTEの主な読者層となる20代前半に向けて、アドバイスやメッセージがあれば、お聞きしても良いでしょうか。

今も言いましたが、僕が1番大事だと思うのは“目的意識”です。

若い人が「飲み会に行く意味が分からない」と答えるニュースを目にしますが、たとえば大企業に入って昇進したい場合、有効な手段が“人間関係をつくるために飲み会に行くこと”という結論が論理的に出るのであれば行けばよいのではと。

「自分はこういう人だから、(手段に対して)これはやれない・やらない」と決めつけるのは、あまり良くないことかなと思います。

今取り組んでいる全てのことに対して、(目的を達成するために必要な作業だと)自分の腑に落とすことがすごく大事だと考えて僕は20代を過ごしてきました。

社会でも嫌なことばかりあると思うんですが、もう少し解像度を上げて、「なぜ、この嫌なことをしなきゃいけないのか」(と、理由)を見つければ良いのかなと思います。

「ChillStackの技術は世界に通用する」

―――今後の目標を教えてください。

(ChillStackの)ビジョンは、きちんと良いものを作って社会の課題を解決することです。

今は日本にフォーカスして進めていますが、技術力は世界でもトップレベルだと自負しているので、もちろんゆくゆくは世界に展開していきたいと思っています。

ChillStackが掲げるミッション&ビジョン

ただ、グローバル展開で1番ネックなのは技術というよりもビジネス面です。世界各国でそれぞれの文化・考え方・社会課題が異なるので、どう進めていくかが、これからのチャレンジだと思いますね。

世界でChillstackといえばAIセキュリティーの会社で、AIセキュリティーといえばChillstackと思ってもらえるような会社にしたいです。
(了)

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